韓国のゴルフテクノロジー企業のAGLは7月、Googleと連携しReserve with Googleに対応したTIGER GDSで世界中のゴルフコースのリアルタイム予約サービスを開始した。昨年9月に同社に入社した山田明伸さん(58)は、この予約システムが日本のゴルフ場を救うシステムであることを強調した。 日本のゴルフ業界が抱える問題は、2000以上あるゴルフコースの存続だ。 日本支社長に就任した山田さんは「コロナ禍で一時はゴルフは屋外でする安全で健全なスポーツだっていう風潮が広まり(来場者が)増えたんすよ。それも長年ゴルフ場業界が成功できなかった若年層とかレディースの来場が一気に増えた。だから2020年、21年は結構どこのゴルフ場も運営会社も潤っていたと思います」と説明した。 しかし、コロナが収束し「規制が緩和、撤廃されてゴルフ場離れっていうのが少し見えはじめた。選択肢が増え、我慢していた国内旅行、海外旅行に出かけるとか、飲食にかけるお金であるとか、多分そういう理由が多かったと思うんです」と分析した。 山田さんは大学卒業後、プロゴルファーを目指した。一時、中嶋常幸の門下生になったこともある。しかし、プロへの道は厳しかった。夢をあきらめ30歳でゴルフ場に就職。キャディーマスター室にはじまりフロント業務を経て運営、管理そして支配人にまでなった。それだけにゴルフに対する情熱がある。 「ゴルフ場業界では2025年問題とか2030年問題っていうのが、かなり前から言われている。日本の人口も減ってきている中でイコールゴルファー人口も減っていく。今までゴルフ場業界を支えてきてくれた、いわゆる団塊の世代のシニア層が軒並み高年齢に達してしまう。回数が減るとかメンバーをやめるとか。それを若年層では補うことができない」 続けていう。 「ゴルフ場って、バブル時代に作られたコースが多くて。軒並み30年とか40年たって空調関係とか配管であるとか投資をかけなければいけないタイミングにもなってきている。いろんなエリアのゴルフ場がソーラーパネル化していたり、閉鎖っていうのが出てきている。自分は悲しいんですよ」 長年にわたってゴルフ場の運営、管理に携わってきた山田さんにとってゴルフ場の未来に危機感を募らせていた。その危機を救うのが、インバウンドだ。 「前の会社でインバウンドを上手に取り込んでいくっていう会社の方針が出され、その担当を自分が任命されてAGLとやりとりをしてたってのが出会いです」 30年近くゴルフ場と携わってきた経験を買われAGLに転職した。 入社前は提携ゴルフ場は数コースだったが、今では200コースと提携している。「来春ぐらいまでには500コースぐらいいけるかな」とこれまでの人脈を生かして提携先ゴルフ場を増やしていく。 ゴルフ場にとっても外国人客と事前決済予約ができるというのは大きなメリットだ。「自社で予約していると突然のキャンセルでもキャンセル料がとれないという問題もあった」と、TIGER GDSの素晴らしいシステムのPRも忘れなかった。 「ゴルフ場業界でたくさんのことを勉強させてもらって、ここまで来られた。ちょっと大げさな話になっちゃいますけど、かなりグローバルなでかいことをやられている会社なので、会社とともに日本のゴルフ場業界を貢献したい」 全国を東奔西走する山田さんは、ゴルフ場の予約だけでなく宿泊施設の確保や観光をセットにするプランも考えている。そのためにはゴルフ場だけでなく旅行会社や各自治体との提携も大きな仕事となる。 「AGLの社長にも最初に伝えた言葉ですが、自分がプロデュースする時間と空間で世界中の人々を幸せにしたいっていう夢がある。一度しかない人生でやりたいことを実現できる会社でもある。達成というか、努力することで日本のゴルフ場業界に貢献ができる。そして自分がプロデュースする時間と空間は、海外のゴルファーの人たちに、日本のどこかのゴルフ場でプレーをしていただく時間と空間の提供でき、プラスアルファは日本の文化とかにもたくさん触れ、満足して帰っていただくっていうのが多分自分はやりたいんだと思ってます」 あと2年で還暦を迎える山田さんは、プロゴルファーを目指した若かりしころのように希望に満ちている。