首都圏で住宅を狙った強盗事件が相次ぐなか、強盗の実行役を集める“リクルート役”が初めて逮捕されました。この男も金に困って、自身も闇バイトに応募したといいます。リクルート役の逮捕は、強盗グループの全容解明につながるのでしょうか。 【画像】「闇バイトに申し込んだ…」“闇バイト強盗”首謀者の特定は…“リクルーター”初逮捕 ■連休中も…強盗事件23件に 自称会社員・金子優汰容疑者(28)は3日、千葉県四街道市の住宅に侵入し、住人にけがをさせたうえで、現金1万3000円を奪った疑いが持たれています。「借金が増え、生活が困窮し、現金が欲しかった」と供述しています。しかし、マンションの大家によりますと、入居してからこれまで一度も家賃を滞納したことはなかったということです。 自称・山内裕太容疑者(29)は2日、東京都葛飾区の住宅に押し入り、70代男性の顔を殴ったうえ、粘着テープで縛り、現金などを奪った疑いが持たれています。 8月以降、相次いでいる闇バイトを使った連続強盗事件。この週末にも発生し、同一犯やその可能性がある事件の件数は23件にまで増えました。そして、犯行も凶悪化の様相を見せ続けています。 捜査関係者によりますと、金子容疑者が逮捕された3日の事件では、犯行中、指示役に電話をつなぎ、被害者の男性をこう脅していたといいます。 “指示役” 「現金のありかを言わないと、家族がどうなるか分からない」 また、山内容疑者が逮捕された葛飾区の事件では、住宅に約10時間とどまり、金品を物色していたといいます。他にも複数人が住宅に押し入ったとみられていますが、山内容疑者以外は逃走中です。 一連の強盗事件で、警察がこれまでに逮捕したのは39人に上ります。 ■“子育て熱心な母”金の回収役か 捜査は実行役以外にも及んでいます。2日に逮捕された木本未穂容疑者(30)は、金の回収役とみられています。捜査関係者によりますと、横浜市青葉区の強盗殺人事件で、実行役が被害者から奪った現金の一部、数万円を都内の公園のトイレに置き、それを木本容疑者が回収したとみられます。 木本未穂容疑者 「犯罪で得たお金を回収しました。一緒に強盗したことは否定します」 木本容疑者の関係者を取材すると、垣間見えてくるのは強盗事件とはかけ離れた一面です。 木本容疑者を知る人 「普通の優しそうなお母さんだった。いつも朝早く起きて、子どもを連れて幼稚園とか送り迎えしている。子どもの送り迎えはいつも熱心にやっている」 小さな子ども2人を育てる「良い母親だと思っていた」と近隣住民は口をそろえます。 ■実行役の“リクルーター”初逮捕 闇バイトに応募する者がいる一方、闇バイトを募集する者の実態は明らかになっていませんでした。今回、一連の強盗事件で初めて“リクルート役”とみられる男が逮捕されました。 名倉優也容疑者(31)は、闇バイトに応募してきた3人に先月、所沢市で起きた強盗事件をそそのかした疑いが持たれています。SNSで「ホワイト案件」などと募集していました。 逮捕のきっかけは、3人のスマホに残る秘匿性の高いアプリの解析に成功したことでした。しかし、名倉容疑者の逮捕は、これまで起きていた闇バイトを使った“トクリュウ事件”以上に、組織が細分化されている現実を浮き彫りにしました。 “トクリュウ事件”はこれまで、事件の首謀者がトップにいて、末端の実行役との間に人集めから実行役に指示をする指示役がいるという構図が一般的でした。つまり、リクルーターは幹部と呼ばれる指示役が担うことが多かったのです。しかし、名倉容疑者は現時点で、幹部とは思えない供述をしているといいます。警察によりますと、名倉容疑者はSNSを通じて闇バイトに申し込み、リクルート役を担っていたといいます。 名倉優也容疑者 「消費者金融に数百万の借金があった。金に困ってやった」 名倉容疑者は、愛知県知多市で母親と2人で暮らし、県内の食品工場で働いていたといいます。 名倉容疑者の同級生 「真面目な方だと思うし、色んな人に優しい性格だった。(Q.問題行動は)全然全然。そんな目立つようなことはなかった」名倉容疑者の同僚 「100人以上いる会社のリーダーのうちの1人。人柄もよくて仕事ができる印象。生活に困らないほどの給料はもらっていたはず」■勧誘の音声「バットを持って…」 闇バイトにどう誘いこむのか、あるリクルーターの実際の音声があります。闇バイトの実態を調査している会社が入手したものです。 リクルーターA 「単発の仕事だと例えば運転、運び系の仕事。1回5万円ぐらいの仕事。簡単な“運び”なんですけど」応募者B 「運ぶ物はあれですか、グレーな感じ?」リクルーターA 「え〜と正直グレー。現金、個人情報書類、薬物、この3点のどれか。その分、報酬は5万円とわりかし高めになっている」 3日に四街道市の強盗事件で逮捕された金子容疑者は、SNSの闇バイトに応募した際「詐欺師から現金を奪い取る仕事。相手は詐欺師だから警察は呼べない」などと聞かされたと供述しているといいます。リクルーターの音声でもまさに同じ手口を使っていました。 リクルーターA 「あとは一発30万円とかの仕事もある。いわゆる詐欺のお金、詐欺したお金があるじゃないですか。それを持ってトンズラこいちゃったやつがいる。変な話、手を出しちゃっても問題はないような相手なんで。わざと例えばバットとかバール持ってもらうんですよ。もし抵抗してきたとしても、払わないとか、それはそれで別に手を出したりしてもらっても構わない。こちらとしては物を回収してくれれば何でもいい」応募者B 「強盗みたいな感じになっちゃう?」リクルーターA 「いや強盗にはならない。そもそも僕らの物なので」 リクルーターとみられる名倉容疑者を勧誘したのが誰かは分かっていません。しかし、指示役とみられる人物とのメッセージは残されていたといいます。警察は、名倉容疑者の他の事件への関与を調べるとともに、スマホの解析を行い、首謀者や指示役の特定を進めています。 ■“強盗組織”全容解明どこまで? リクルート役の逮捕は、強盗グループの全容解明につながるのでしょうか。 警察は一連の強盗事件について、実行役の他に、首謀者・指示役・リクルート役・金の受け渡し役といった人物がいるとみています。 社会部警視庁担当 金井誠一郎キャップ 「仮にリクルート役が指示役と近い“幹部レベル”ならば、組織の全容解明につながる可能性がある」 ただ、今回逮捕されたリクルート役の名倉容疑者は「自身もSNSの闇バイトに応募した」と話していて、実行役と同じく、指示役の素性を知らない可能性もあります。 社会部警視庁担当 金井誠一郎キャップ 「リクルート役は、組織の“固定メンバー”であることが多く、幹部につながる情報を持っている可能性があり、警察は重要な捜査対象としている」