恐怖などの感情と結びついた記憶 強い残る仕組みを理化学研究所が発表

 恐怖などの感情と結びついた記憶が強く残る仕組みを明らかにしたと、理化学研究所などの研究チームが発表した。  記憶の主な担い手とされる神経細胞とは異なる細胞が重要な働きをしていた。心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病の治療などに役立つ可能性がある。論文が16日、科学誌「ネイチャー」電子版に掲載された。  理研の長井淳チームディレクター(神経科学)らは今回、脳内の「アストロサイト」という細胞に着目。脳の細胞のうち20〜40%を占める細胞で、神経細胞に栄養を供給しているとされる。電気信号は出さないため以前は“脇役”と思われていたが、近年は記憶との関係の研究が盛んになっている。  実験では、マウスを普段とは別の部屋に移して電気刺激を与え、恐怖の記憶を植え付けた。2回目以降、同じ部屋に移すとマウスは電気刺激がなくても恐怖で動けなくなる「すくみ行動」をとる。  一連の実験で脳細胞の活動を調べると、最初の恐怖の体験でアストロサイトが、感情と関わる脳内の神経伝達物質を受け取りやすい状態になっていた。2回目に部屋に移すとアストロサイトが活性化し、記憶の安定化に関わる遺伝子などが働き出した。一方、この細胞の活性を人為的に抑えると、マウスはすくみ行動をとらなくなる傾向があった。  長井ディレクターは「アストロサイトには、感情と関連した記憶を選択的に定着させる脳内の『しおり』のような機能がある」と話している。  井ノ口馨・富山大卓越教授(神経科学)の話「恐怖や喜びなどと関係した記憶は残りやすいことが経験的に知られており、感情と記憶を結びつける仕組みを明らかにしたことは意義深い。神経細胞以外も記憶に重要であることも示している」

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