自らのウリを捨て『食品偽装』 来場者数2500万人を突破した大阪・関西万博。閉幕まで2週間を切るなか、熱気に水を差すある疑惑が会場内のレストランで浮上している。 「オーガニック食材の使用を謳(うた)いながら一般の食材を使用し、就労資格がない外国人を働かせている店があるのです。私はそこの従業員でした。万博という世界中からお客さんが来る舞台で不正を働いていることに耐えられず、きちんと内情を話そうと決意しました」 沈痛な面持ちでそう語るのは、大阪・関西万博に出店する韓国料理店「景福宮(キョンボックン)」で従業員として働いていたという男性Aさんだ。家族連れで賑わう人気韓国料理店で、一体何があったのか。 「今年4月に景福宮で働き始め、食材の仕入れなどを担当していました。景福宮はJAS認定の有機野菜や調味料を使ったオーガニック韓国料理がウリ。メニューには有機卵や有機玉ねぎなどの文言が記載されています。実際、私が働き始めた当初はオーガニック食材を使用していました。しかし——6月頃からオーガニック食材の仕入れを止めるようになったんです」(Aさん) なぜ、自らのウリを捨てたのか。 「物流の都合でオーガニック食材の搬入が間に合わなかったことと、コストカットが理由です。運営会社の指示のもと、卵、人参、玉ねぎ、ごま油などがオーガニックではない一般のものにスリ替えられました」(Aさん) Aさんが記者に差し出した’25年6月30日の景福宮の納品書を見ると、「かどやのごま油1650g 18個」など、実際にオーガニックではない食材が仕入れられていた。Aさんが続ける。 「実際の産地までは分かりませんが、店のバックヤードには、『中国産』と書かれた段ボール箱に詰められた玉ねぎが置かれていました。店側は9月頃、オーガニックではなく一般の玉ねぎ、もやし、人参を使用していたと公表していましたが、私が知る限り卵や醤油など他の食材も一般のものを使用していた」 もう一つの疑惑 浮上した疑惑は食品偽装だけではない。 「景福宮では、人件費を抑えるため外国人労働者の手を借りていたのですが、在留資格を持たずに働いているスタッフが10人ほどいました。本来、外国人が日本で飲食業に従事するには、特定技能の在留資格が必要なのですが、通常の就労ビザや観光ビザで働いている人がいたのです。これは不法就労に当たるのではないでしょうか」(Aさん) Aさんの告発は事実なのか。景福宮の運営会社に質問状を送付したところ、代理人の弁護士が以下のように回答した。 「当社の調査によると、『景福宮』で玉ねぎ、にんじん、もやし、ごま油というような食材につき、一時期に限り、万博会場の物流上の制約や、マネージャー交代時の仕入れ先情報の引き継ぎ上の誤り等の当社としてやむを得ない事情により、一般食材を使用しておりましたが、このような一般食材の使用については、これを当社が確認次第、その都度速やかに、店内に張り紙をする等してお客様にお知らせし、万博協会にも報告済みです。 (不法就労について)当社は、社団法人韓国優良製品振興協会から、大阪万博で活動可能な韓国籍人材12名の紹介を受けるとともに、日本の万博での飲食事業の研修目的で上記12名を対象とする研修を実施したいとの申し出を受けました。これを受け入れ、大阪万博開幕から5月のゴールデンウィークの頃まで、上記12名の研修を実施、当社から上記12名への賃金支払いは一切なく、当社は単に振興協会から受託した上記12名の研修を行ったまでですので、ご指摘のような不法就労の事実はございません」 この回答にAさんが溜め息をつく。 「公表しているもの以外も一般の食材を使用していました。景福宮では韓国人以外にネパール人が複数人働いており、『特定技能1号』を持っていないことを在留カードで確認しています。彼らについて言及しないのはなぜなのか。そもそも、研修名目とはいえ観光ビザで入国している外国人を働かせていいのか。苦し紛れの回答としか思えない」 Aさんは飲食店の運営を管理している万博協会の担当者にもこれらの疑惑を告発していた。担当者に電話すると「お答えできない」と言うばかりだった。 閉幕が迫るなか、疑惑の真相が明らかになる日はやってくるのか。 『FRIDAY』2025年10月17日号より