黒い邸宅が議題に 世田谷区長に浮上した「書類を偽造して違法建築」疑惑

「偽装した書類を行政に提出」 東京・狛江市の閑静な住宅地の一角のみなし道路の先には4戸の家がある。3戸の家は住宅専用地域で用いられる「建ぺい率40%・容積率80%」で駐車スペースがあり、2階建ての家だ。しかし、ある一戸だけは35坪の敷地内をほぼ使い周囲を威圧するかのような黒い外観の邸宅が建っている。この黒い邸宅がいま世田谷区議会で議題となっている。 「今、はやりの言葉でいえば地面師のような手法で家を建てていないのか」 9月30日、決算特別委員会の総括質疑で大庭正明区議が保坂展人区長(69)にそう問い詰めた。 大庭区議の主張を要約すると、1985年、世田谷区と狛江市の区境にある古い木造家屋の物件を保坂氏が購入した。建築基準法では「幅4m以上の道路に2m以上接していなければ、住宅は建てられない」とある。保坂家は1m10�しか道路に接してないために「再建築不可」物件となる。であるはずが、1992年に再建築している。 このことについて、大庭区議は「隣の土地も自分の土地であると偽装した書類を行政に提出し、認可を得たのではないか」と追及。ただ当時、保坂氏はジャーナリストで私人であった。1996年10月、衆議院議員初当選、’11年4月の世田谷区長選挙で初当選。現在、4期目となる。 9月30日の委員会において、大庭区議は、「公人となり、違法と知っているからこそ’21年に世田谷側の2m以上接道する土地を、違法状況を逃れるために購入したのではないか」と、問い詰めた。保坂区長は大庭区議が尋ねている間、目をつぶり右に首を傾げ、時折天を仰ぐ仕草を見せながら、答弁を考えている様子がうかがえた。 「お借りしました。だました、偽装した、ということはありません」 保坂氏はその言葉を繰り返した。大庭区議が角度を変えて尋ねても、「ですから、お借りしました。だました、偽造したことはございません。お約束した書面、文面は作りませんでした」と腑に落ちない説明となった。 自宅に直結していない駐車場 保坂氏の自宅は、小田急線の最寄駅からゆっくり歩いても15分の住宅地に建つ。本誌記者が現地に行くと、他の3つの家は「建ぺい率40%・容積率80%」を守る中、35坪の敷地いっぱいに建つ黒い家は異色に見える。また「’21年に帳尻合わせに購入した」と指摘される世田谷側の「接道のための土地」は、保坂家の敷地と高低差があり幅もある。現在は駐車場として使用されていたが、直接家に戻れないため数百メートル迂回しなければならないという、なんとも不思議な作りとなっている。 区長隣家の住人は保坂氏の印象を「毎回、とても疲れた表情で帰宅されている」と述べて、こう語った。 「私が’14年12月に引っ越してきたときにすでに黒いお宅は建っていました。以前の話はわかりませんし、区長がうちの前の方とどのような話をしたのかもわかりません。ただ、格安で販売されていたので、理由を尋ねると『再建築不可物件だから』ということで悩みながらも相場より格安なので購入を決めました。この一角は再建築不可物件なのになぜ区長の家はできたのでしょうか……」 区議会でこの問題を追及する大庭区議はこう憤る。 「行政の建築の確認申請は現場に訪れ一軒一軒チェックすることはなく、書類が揃っていれば許可を下ろします。違反が発覚するのは近隣住民などの通報が大半と聞きます。違法でもすでに建ってしまっていれば口頭や書面で違反を指摘し、是正を促しますが、建て替えを強制するまでの指導はまれです。この制度を悪用し、見せかけの書類を提出し、建ててしまえば逃げ切れる、という悪質な手法が後を絶たない」 無論、保坂区長が悪意を持って再建築したとは考え難い。しかし、保坂家の「台帳記載事項証明」には『建築面積は62.41�、敷地面積233.38�』と記されている。保坂家の土地は35坪で、114.94�しかないはずだ。その敷地面積であれば、「建ぺい率40%・容積率80%」を当てはめれば「45.97�」となるはずだが、保坂家の一階は「61.26�」と登記簿に記されている。隣家の土地を合算すると233.38�となる。しかし、隣家の土地登記簿を遡ってみても保坂氏の名前は出てこない。つまり、大庭区議が指摘する「隣家の土地も自宅として申請し、再建築許可を得て、敷地内に目一杯に建設したのではないか」「違反建築ではないか」という疑義は拭えない。 世田谷区の議会事務局に尋ねると広報広聴課がこう応じた。 「区長の私人としての内容ですので区役所としては対応いたしません。区長の事務所で対応します」 保坂のぶと事務所から以下の返答だった。 「’25年9月30日決算特別委員会にて答弁をしたとおりです。なお、自宅建物の建築確認申請に際して、ご指摘の『隣家の土地も自宅と称して申請書類を出した』との事実はなく、提出した書類が偽造に当たる事実はありません。建築確認はおりています」 約92万人が住まう世田谷区。その行政の長が、地面師さながらに書類を偽装して再建築した疑いが持たれ、区議会で追及されている。野党の衆議院議員として数々の追及を行ってきた保坂氏は区議会最終日の14日の決算特別委員会で自分の口でしっかりと説明するのだろうか。

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