拉致から47年...変わらず動く“時計”に母重ね「きっと元気で」拉致被害者・曽我ひとみさん単独インタビュー

■「一向に進展がみられない」初の都内単独講演会での訴え 8月27日(水)、東京・北区で拉致被害者・曽我ひとみさんの講演会が行われ、会場には約600人が集まった。ひとみさんが都内で1人で講演会を行うのは初めてだ。 拉致被害者 曽我ひとみさん(66) 「今年はわたしが帰国して23年目となります。拉致されてから47年。半世紀近い年月がたったことになります。これだけ長い時間が過ぎたにもかかわらず拉致問題は一向に進展が見られていないのです」 曽我ひとみさんは1978年8月、新潟・佐渡市で買い物から自宅に帰る途中、母・ミヨシさんと共に北朝鮮に拉致された。当時19歳。北朝鮮から「母親は日本にいるから心配するな」と説明されたまま、北朝鮮で24年の生活を余儀なくされた。 2002年に日本に帰国してから23年がたった。母・ミヨシさんとは拉致された瞬間から47年間再会できていない。 曽我ひとみさん 「『親世代が元気なうちに解決を』と新しいスローガンを掲げ家族会が活動しようという矢先、有本明弘さんの訃報に大変驚きました。家族会(のメンバー)もそうでしょうが、私も相当のショックを受けました。なぜなら母と同年代の有本さんの元気な姿を拝見するたび、まだまだ私の母も元気でいるはずと希望を持っていたからです」 ひとみさんが力を込めたのは、2025年2月に96歳で亡くなった有本恵子さんの父・明弘さんについての話。ともに「家族の救出」を訴えてきた明弘さんと、現在93歳になる母・ミヨシさんの存在を重ねていたのだ。 曽我ひとみさん 「突きつけられた現実に少しの猶予もないのだと。いますぐにでも救出しなければならないのだと心臓をわしづかみされるような息苦しさを感じました」 ■一緒に北朝鮮に渡った時計・・・“元気に”動き続ける 今回の講演会を取材したnews zeroの藤井貴彦キャスター。講演会終了後、ひとみさんの今の思いを改めて聞いた。 藤井キャスターが注目したのは、ひとみさんの左腕につけられた緑色の時計。 ひとみさんが看護学校に在学していたとき、患者の脈を測るために必要になり、当時は高価なものだった時計を、ミヨシさんが借金をして購入してくれたのだという。拉致されたその時も身につけており、時計と一緒に北朝鮮に渡った。 曽我ひとみさん 「北朝鮮にいる24年間もずっと、母と同じように思って大切にしていました。日本に帰ってきて、きれいにまた全部直してもらって、今こうしてまた動き始めているので、母もきっと元気でいると私は思っています」 news zero 藤井貴彦キャスター 「ミヨシさんにもらった時計がなければ、船の間何時間移動していたのか、今日が何日なのか分からなかった?」 曽我ひとみさん 「そうですね、わかりませんでしたね」 藤井キャスター 「いつもこの左腕にお母様を感じていらっしゃる?」 曽我ひとみさん 「そうです、本当に。この時計にいろんなことを話しかけたりしてます」 北朝鮮で没収されることはなく、当時と変わらず今も動き続けている時計。 時計が元気なのだから、母もきっと“元気でいる”と信じて、毎日どこに行くときも身につけているという。 ■拉致被害者のためにいま私ができることを “本当に時間がないんだと1人でも多くの人に知ってもらいたい”。 ひとみさんは、住まいのある新潟・佐渡市から何度も関東などに足を運び訴える。2024年のインタビューでひとみさんは「まだ帰ってこられない被害者たちのためにいま行動を起こすべきだ」と語った。 曽我ひとみさん 「私たち5人が帰国できたことは拉致問題にとって大きなことだと思うんですけども、他の被害者の方々がまだまだいらっしゃる。少しでも被害者の方が一日でも早く日本に帰ってくるために自分には何ができるんだろうと、拉致問題が全部解決するまではずっと心の中にあります。それをやはり行動に起こさないと。自分が勝手に思うだけではだめだと、いますごく思っています」 拉致被害者として、また母の帰国を求める拉致被害者家族として、ひとみさんにしか伝えられない切実な思いを訴え続けている。 解決への兆しが一向に見えない拉致問題。 特に若い世代は、「拉致問題」を教科書で初めて知る人も多い。時間がたつにつれて“風化”も懸念されている。 ひとみさんは「まだ残された家族が毎日涙を流し続けている。拉致問題を我がごととして考えて欲しい」と訴える。 ■「時間がない」帰国して23年がたっても動かない拉致問題 家族会が「親世代が健在のうちに全拉致被害者の即時一括帰国」と訴え続ける中、2025年に96歳で亡くなった有本明弘さんは、北朝鮮による拉致がまだ“疑惑”とされていた時から、娘の救出のために救出活動を始めた第一人者だった。 帰国を果たせていない政府認定の拉致被害者の家族で存命の親世代は、横田めぐみさんの母・早紀江さんのみ。早紀江さんも2026年には90歳になる。いつ何があってもおかしくない年齢に、家族らの焦りは募っている。 日本で待つ家族も、北朝鮮にいる被害者も高齢になり、再会できずに家族が1人、また1人と亡くなっていく。拉致問題は家族らが訴える通り、本当に時間がない問題で、現在進行系の問題なのである。しかし、北朝鮮との日朝首脳会談は20年以上行われていない。 めぐみさんの弟で、家族会代表の横田拓也さん(57)は、2025年2月に石破首相に面会した際、「もうこれ以上待てません。もうこれ以上私達を苦しめないでください」と強く訴え、早紀江さんは「日朝会談が大事だと思っていて、1日も早く日本の土が踏めるように、子どもたちに早くその喜びを与えていただけますように」と続けた。 家族に対し、石破首相は「あらゆる手段をもって解決に力を尽くす」と答えたが、それも家族らにとっては今まで何度も歴代の首相から言われ続けてきたことだろう。だが家族らは首相が代わるたびに、機会があるたびに直接、被害者の救出を訴え続けている。 さらに家族らは4月〜5月にアメリカを訪問し、政府高官や上下両院の議員らと面会した。また日本でもアメリカのグラス駐日大使、エリサベス・サルモン国連北朝鮮人権状況特別報告者などと相次いで面会し、国際協力を呼びかけている。 ひとみさんの母・ミヨシさんも現在93歳。ひとみさんが日本に帰国して23年という長い年月がたっても、ミヨシさんがどこにいるのか、何をしているのか一切情報がない状態だ。 ひとみさんは講演会で「母を含む拉致被害者の救出のため、この1年がたったの1日がもう待てない」と切実な思いを訴えた。 藤井キャスター 「ミヨシさんからもらった時計は日本に戻ってきて、また動き始めていますけれども、この拉致問題がどうしても時計が止まったままです。今どんな思いでいて日本政府に何をしてもらいたいですか?」 曽我ひとみさん 「私にとっては世界で1人しかいない大好きな大好きな母に、1日も早く会いたいと心から願っています。そして93歳になりますけれども、私も母に会うために頑張りますので、母にも絶対に最後まで諦めずにいてほしいということを本当に心から伝えたい」 その上でひとみさんは日本政府に対し、「トップがしっかりと机を、椅子を並べて交渉して1日も早い帰国のために全力で(北朝鮮と)交渉してほしい。私の願いは母を含む拉致被害者全員の帰国だ」と訴えた。 ■拉致被害者の救出の願いを胸に・・・手作りの「ブルーリボン」 ひとみさんや家族らが胸元につけている「ブルーリボン」。拉致被害者の救出を願う活動のシンボルとしてつけるもので、日本と北朝鮮を隔てる「日本海の青」と、北朝鮮にいる被害者と家族を唯一結ぶ「青い空」をイメージしている。 活動の会によって色や形は多少異なるものの、救出を願い多くの人が胸元にリボンを掲げている。インタビューを行った日も、ひとみさんの左胸には手作りの青いリボンがつけられていた。 ひとみさんは私たち取材班全員に、つけているものと同じブルーリボンを渡してくれた。活動を行った先でリボンに興味を持ってもらうことがよくあり、拉致問題に少しでも関心を持ってもらいたいと、いつでも渡せるように普段から持ち歩いているそうだ。 「拉致被害者全員が日本に帰国し、家族が生きているうちに再会できるように早期に日朝首脳会談を行い、北朝鮮と交渉してほしい」 こう主張する家族らの思いを、日本政府は受け止めて欲しい。 (日本テレビ社会部拉致問題担当記者 露木生純)

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