【スナック千代子へいらっしゃい #125 中年の夢】 あなたが子どもの頃に抱いた将来の夢、覚えていますか? 年代によっては、子どもの頃にはなかった職業が誕生している人もいるかもしれません。 ちなみに、10年前と最近の子ども(小4〜6)の「将来の夢」を比較した調査(※)によると、以下のような結果に。 2015年 1位:プロスポーツ選手(16.2%) 2位:パティシエ(5.5%) 3位:保育士・幼稚園教員(5.4%) 4位:医師(5.4%) 5位:店員(花屋・パン屋など)(4.7%) 2024年 1位:プロスポーツ選手(13.5%) 2位:店員(花屋・パン屋など)(5.8%) 3位:教員(3.8%) 4位:YouTuber・VTuber(3.6%) 5位:医師(3.5%) 大きくは変わっていないものの、医師に代わってYouTuber・VTuberが4位にランクインしていることに、時代の変化を感じます。 さて、2児の母でイラストーレーターの横峰沙弥香さん(41歳)も先日、「将来の夢」について改めて考える出来事があったそう。40代の横峰さんが我が子から将来の夢について聞かれて、改めて気づいたこととは? 横峰さんが子育ての切なさを、架空のスナック「スナック千代子」のピスタ千代子ママとしてつぶやく 4コマ漫画連載「スナック千代子へいらっしゃい」(毎月第1・3日曜日に配信)。今回は、そのときのエピソードをマンガとともに綴ってもらいました。 ※東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査」2015〜24年より。紹介しているランキングは、「あなたには、将来なりたい職業(やりたい仕事)はありますか」という質問に「ある」と回答した者に、「あなたが一番なりたい職業 (やりたい仕事)を、具体的 に教えてください」とたずねた結果(自由記述)を分類したもの。自由記述に記入したのは、2015年調査2,561名、2024年調査1,798名(いずれも小4〜6)。 大人の「将来の夢」は「終活」? 子どもの頃は飽きるほど聞かれたはずの「将来の夢」、中学時代が最後だったでしょうか。高校に進学すると、その質問は次第に進路の方向性へと姿を変え、夢を語るというよりは自身のスペックで手に入れられる最善の生き方を見つけることが最終目標となりました。 それでも私は、ギリギリまで夢を追ったほうだと思います。大学では芸術系の学部に進み、在学中に職を得て中退。その仕事自体は絵を描くこととは違う方向性のものではありましたが、紆余曲折を経て30を過ぎた頃、ようやく「漫画家」という子どもの頃の夢が叶いました。 息子を出産し、一度はすべてを諦めたことまで含めてどこをショートカットしてもたどり着けなかった今という時間は、過去の自分が欲しくて欲しくてたまらなかったもの。そしてここにきて、息子から「将来の夢」を不意に尋ねられました。 考えてみれば、まだ41歳。医療技術も発達したこの時代、人生後半戦のほうが長いくらいですから、これから先の未来を「将来」と言っても差し支えはないでしょう。 息子に「将来の夢」を問われ、改めて今後の人生でやりたいことを考えてみると、何度考えても「漫画を描きたい」しか出てこないんです。思えば会話でコミュニケーションを取ることが苦手な私にとって、漫画は世界と繋がる手段。どこかの誰かが笑ってくれることを願って、呼吸をするように手を動かし続けているこの生活を死ぬまで続けたい。 「将来の夢は何?」という息子の質問によってたどり着いたのは、「どう生きて、どう終わりたいか」ということでした。 折しもそれは、ある日突然死ぬことになってしまったらどうしようなんていう漠然とした不安に苛まれて、唐突に終活を始めたタイミングでもありした。 この出来事をきっかけに終活ノートを読み返してみると、書かれていたのは事務的な手続きとネガティブな出来事を回避するための指示ばかり。口では誰かが笑ってくれることを望んで死ぬまで漫画を描き続けたいなんて言いながら、残された家族へ向けた最後の記録がこんなにも味気なく冷たいものであったことに、我ながらショックを受けました。 笑いづらいときにこそ、ユーモアを。そんな方向に切り替えるきっかけとなった出来事でした。 【漫画】「おままごとでその家庭がわかる」保育園の先生の言葉に背筋が凍った