「いま、ちょっといい女と一緒にいるから遠慮してくれよ」 マイトガイ「小林旭」がファンのサイン攻めを断った「デート相手」とは

 夕刊紙・日刊ゲンダイで数多くのインタビュー記事を執筆・担当し、現在も同紙で記事を手がけているコラムニストの峯田淳さん。これまでの取材データから、俳優、歌手、タレント、芸人……第一線で活躍する有名人たちの“心の支え”になっている言葉、運命を変えた人との出会いを振り返る「人生を変えた『あの人』のひと言」。第34回はカルーセル麻紀さん(82)の続編です。昭和を代表するスターたちの華々しい交友で知られるカルーセルさんですが、先週の裕次郎さんに加えて、今回は小林旭さんとの秘話も紹介します。 【写真を見る】カッコいいのはスクリーンだけじゃない! 「永遠のマイトガイ」小林旭の渋いショット! 昭和スターたちの豪快なエピソード  かつてのスターたちの交遊録は、令和の今とはスケールが違い過ぎる。昭和の話だからと一言で片付けてしまうのは惜しいし、そもそも今を生きる芸能人にも、スターとは夢を売る商売であることを、頭のほんの片隅にでも残しておいてほしいと思う。 大スターとの思い出がたくさん 「涙と笑いの酒人生」というインタビューに小林旭(86)が登場した時は、ものが違うと声を上げたくなったほどだった。  酒場で会うのは石原裕次郎、勝新太郎、萬屋錦之介、菅原文太、松方弘樹……。もちろん結婚していた美空ひばりとのしみじみとした飲み話もあった。  そんな中でも、豪快そのものだったのは裕次郎とのエピソード。  小林は裕次郎のことを「チャンユウ」と呼んでいた。「裕チャン」をひっくり返して「チャンユウ」。2人の関係性はその呼び方でわかろうというもの。  ある時、小林も裕次郎も、取り巻きを連れて銀座で飲んでいた。普段は一緒に飲むことはないが、たまたま遭遇し、同じ店で飲むことに。  裕次郎と小林の親分2人は、鷹揚に構えて飲んでいたが、取り巻きは小競り合いになる。やがて小林の「渡り鳥一家」と「裕次郎一家」があたかも映画のワンシーンのように、互いに張り合い、一触即発になりかけた……。  また、ある時は2人で夜通し車を飛ばして京都の祇園に遊びに行ったこともあった。その情報はまさにいい意味で一瀉千里を走り、瞬く間に京都の夜の世界に広まり、お茶屋には勝や萬屋らが集まって来てバカ騒ぎになった。  そんな昭和の大スターにかわいがられたのがカルーセル麻紀だった。  02年の『私を脱がせて』という著書と、11年に筆者が関わった「せきらら履歴書」という連載で、貴重な思い出をタップリと語っている。 「俺の偽物に振られて、寝込んでいるんだって?」  小林とのエピソードを一言でいうと、「笑い」と、当時の言い方になるが「イカしてる」となるだろうか。  元来、カルーセルはホスト嫌いだったが、クラブ「青江」のママから「小林旭そっくりのホストがいるから行ってみよう」と誘われ、新宿の「ニュー愛」に出かけた。ちょうどその頃、小林の「昔の名前で出ています」が大ヒットしていたこともあって、「ホスト小林」もモテモテだった。  なんと、カルーセルはそんな偽物の小林に入れ込んでしまった。揚げ句、貯金を全部下ろして超のつく高級車、サンダーバードの新型モデルを買ってあげた。  ところが突然、連絡が途絶え、ルンルン気分だったカルーセルはすっかり落ち込んでしまう。そこへ顔を包帯でグルグル巻きにした偽物が現れた。瞬時、カルーセルは「ヤクザにやられたのでは……」と思ったが、真相は他の女から「整形しろ」と言われたのが理由だったらしい。  包帯をとった顔を見た途端に百年の恋も冷め、部屋から追い出した。カルーセルはその夜、ショックのあまり店を休んでしまったという。  だが、世の中、何が起こるかわからない。なんと自宅に「小林です」と電話がかかってきた。カルーセルは、偽物がふざけているのかと思って「コノヤロー」と怒った。ところが、それは本物の小林で、 「俺の偽物に振られて、寝込んでいるんだって?」  と笑っている。そして、「明日、札幌の雪祭りに行くから一緒に行こう」と誘われた。  空港にはロールスロイスで迎えにきて、これ以上ないほどもてなしてくれた。小林は「マイトガイ」としての人気も健在で、歌もヒットしているから、行く先々で「サインして」「握手して」とファンにせがまれる。  そんな時、小林はこう言って断ったという。 「悪いな。今、ちょっといい女と一緒にいるから、遠慮してくれよ」  シビれるような名セリフ! 「重てーなぁ、あんまり飲みすぎんなよ」  前回も紹介したが、裕次郎とのとっておきのエピソードも紹介したい。 「石原裕次郎・芸能生活20周年記念」パーティーがあった夜の出来事。最後は裕次郎と「屯㐂朋亭(ドンキホーテ)」という会員制スナックに2人で行くことになった。2人の他には店のマスターだけ。3人は翌日の昼まで飲み続けた。  酒が強いカルーセルでもベロンベロンでさすがに眠くなった。そうすると裕次郎に「麻紀、寝るな、俺が歌っているだろう」と言っては起こされる。だが、さすがに途中で酔いつぶれてしまい、ぐっすり眠ってしまったという。そして目を覚ました時がお開きの時間。裕次郎はまだ眠そうにしているカルーセルを、真っ昼間にお姫様抱っこして自宅まで送り届けた。  その頃、住んでいたのは東京・千駄ヶ谷のマンションだったのだが、階下は入口が別になっているラブホテルだったという。スナックのマスターが鍵を開けて部屋に運び入れたが、「もしラブホの入口で写真でも撮られていたら、どうなっていたか」と語った。  そして、カルーセルをベッドに寝かしつけた裕次郎の言葉は、小林とは真逆の男っぽさそのもの。 「重てーなぁ、あんまり飲みすぎんなよ」  昭和の2大スターにこんな風にかわいがられた女性はカルーセル麻紀以外にいない。  ちなみに、連載でカルーセルは芸能人だけでも勝&中村珠緒、萬屋&淡路恵子、梅宮辰夫、藤山寛美、田宮二郎、松山千春、大地喜和子、黒柳徹子、松田聖子ら、錚々たるメンバーとの濃厚な交遊録を語ってくれた。 峯田淳/コラムニスト デイリー新潮編集部

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