小泉進次郎氏は「答弁下手」のイメージ回避、林氏は決断力に弱点? 自民党総裁選、メディアに掲載される写真が与える影響を臨床心理士が分析

 政治家も見た目をプロデュースするのが当たり前になってずいぶん経つが、公の場所で撮影された報道写真の写り方も演出できる人はまだ少ない。とくに、報道写真が国民に与える印象までコントロールするのは難しい。臨床心理士の岡村美奈さんが、自民党総裁選を報じるなかでたびたび引用される各候補の「写真うつり」が人々に与える評価について分析する。 【写真】答弁下手のイメージを回避できている?小泉進次郎氏の写真  * * *  いくら次期首相候補と紹介しているとはいえ、この写真はいかがなものか!? ちょっと怖くて、こんな表情をされたら思わず引いてしまうだろう。  そんなインパクトある表情の顔写真を掲載したのは、9月9日付けのBBC NEWS JAPAN「【解説】5人で4人目の首相、日本で選出へ 自民党の総裁選の行方は」とのタイトルの記事だ。石破首相の辞任表明について解説し、次期首相の有力候補として農林水産相の小泉進次郎氏、内閣官房長官の林芳正氏、前経済安全保障担当相の高市早苗氏を紹介している。  向かって右の高市氏の写真は大きく見開いた目がなんとも怖い。何かを凝視しようとしているのか。口元に力が入り、眉を上げ目元も吊り上がり、攻撃的な感じがする。記事には保守強硬派として知られるとあるが、まさに強硬的で威圧的。黒系のダークな服装に渋い色味の真珠のネックレスがその印象を強くする。  この写真の高市氏に好感を持つのは難しい。隣の写真はそれと対照的な林氏。2つの写真が並ぶと、高市氏の表情の奇異さが目立つ。林氏は黒系のダークスーツにモスグリーンのネクタイ。記事でも実務型の政治家と紹介されているだけに、正面を向いた写真は落ち着いた印象だ。だが日に焼けて健康的な顔色とすっきりした輪郭の小泉氏の写真と並ぶと、林氏の白い顔と輪郭の丸さが際立ち、積極性やスピード感は感じられない。  小泉氏の写真は、青のスーツに青のネクタイで爽やかで溌剌とした印象だ。右下に顔を傾け、何かを熱心に聞いているような表情を見せて、記事でも若々しさとメディア対応力に優れているとあった。  写真で3人のイメージを伝えようとしたのだろうか。  自民党では出馬が予想されていた議員らが次々と出馬を表明。様々なメディアが首相候補の分析をする際に使われるのが候補者の顔写真だ。どんな写真を選ぶかはメディアによってまちまち。アングルや表情を統一するメディアもあるが、バラバラのメディアもある。写真一枚で人物の印象が変わるわけではないが、写真の使われ方によっては候補者らが意図しない方向でイメージ付けされることもある。  総裁選をめぐるウェブメディアの記事に掲載された各写真を比べると、写真によって誰のイメージがわかりやすく固定化しているかが見てとれる。12日付けの朝日新聞オンライン版「自民党総裁選、5人の争いとなる見通し 小泉農相が立候補の意向」や、16日付けのテレ朝NEWS「”沈黙の高市氏”何してる?総裁選出馬ラッシュ 候補者の動き本格化」で掲載された写真などはその違いがわかりやすい。  例えば、小泉氏。装いはいつも同じスタイルで視線、表情にぶれがない。メディアに載るほとんどの写真が目を開きしっかりしたまなざしを一点に向け、口を閉じている。真剣さや真面目さのアピールにつながっている。口を開いている写真は過去の下手な答弁を思い起こさせるから、口元を結んでいるほうが彼の印象にはプラスだ。逆にイメージが固まらないのが高市氏。ジャケットの色合いがその時によって変わるため、顔の印象も変わる。華やかで明るい時もあれば、暗い時もある。表情は掲載される写真ごとにかなり異なり、顔の向きも口の開き方もバラバラ。彼女をよく知る支持者にはいいが、どこまで信頼できるのか任せられるのか掴みどころが難しい印象になっている。  林氏はダークスーツの写真以外に、明るいベージュのスーツにクールビズのネクタイなしの写真がよく使われる。猛暑日の夏には涼しげな色だが、顔の色が白く、輪郭がふくよかな林氏にとってベージュはぼんやりした印象になり、決断力やリーダーシップの印象が薄れる。元経済安全保障担当相の小林鷹之氏はダークなスーツにオレンジのネクタイという、出馬会見と同じスタイルで掲載されることが多い。体形も輪郭もすっきりし、目鼻立ちもはっきりしている彼は、実直で理知的な印象を与えている。だが話している時の写真によっては口が微妙に開いているものもあり、あまり印象がよくない。さらに上から目線に見えやすい写真が使われやすい。身長が高いため視線も瞳も下を向いてしまうからだ。下からあおるような撮られ方は候補者という立場には不向きだ。前幹事長の茂木敏充氏も掲載される写真によってスーツやネクタイの色が随分異なる。横向きで目を細めている写真が多いため、強いリーダーのイメージから遠くなる。  たかが写真、されど写真。人が写真を見て、その人の印象を決めるまでの時間はわずか0.04秒といわれる。「奇跡の一枚」といわれた米のトランプ大統領が襲撃された時の写真が示すように、たった一枚が人の命運を決定づけることもあれば、イメージダウンにつながることもある。私のような者が重箱の隅をつつくように分析することもある。  メディアが、恣意的に掲載する写真を選ぶケースも考えられる。どんな写真が掲載されるのか、使われているのか、写真によってイメージを固定したりよくしたりするためにはどうしたらいいのか、今回の総裁選の候補者に限らず政治家は常々注意を払ったほうがいいだろう。

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