今年からＪＬＰＧＡツアーを予選から決勝まで独占配信しているＵ−ＮＥＸＴとデイリースポーツが注目の選手を取り上げる連載「推し活応援宣言」第５回は、昨年４度目の挑戦でプロテストに合格したルーキー・吉田鈴（２１）＝大東建託＝が登場。ＪＬＰＧＡ女子ゴルフツアーを主戦場とする優利の妹という宿命を背負いながら吉田鈴として「理想のプロ像」を追い求める。 　１１日、ソニー日本女子プロ選手権初日。吉田鈴は１７ホール目までに、４バーディー、１ボギーの３アンダーとスコアを伸ばした。日没サスペンデッド時点で、首位と１打差の３位と好発進。「フェアウエーをしっかりキープできて、ピンチも少なくラウンドできた」と久々に明るい表情を見せた。 　名門・大洗ＧＣで女子のツアー戦が開催されるのは史上初めてだったが、吉田鈴にとっては「庭」のようなものだ。２２、２４年の最終プロテスト会場。２４年には通算４度目の挑戦でついに合格できた思い出の地でもある。 　指定練習日のラウンドで、すぐに木の本数が減っている箇所を見抜いた。「打っちゃいけないところに何度も打ち込んで、悔しい思いをしてきましたから」。コースを知り尽くしているアドバンテージを生かして、第２日以降も上位でプレーを続けた。 　７月の大東建託・いい部屋ネットレディース以降、６戦して予選落ち５回。開幕以来、ルーキーながら安定したプレーをみせていたが、ここに来てスランプにはまった。 　「姉（吉田優利）の姿は見ていたので、大変だろうと想像はしていましたが…」 　初めての夏場の連戦で体重は減り、体調と同調するように集中力を保つのもしんどくなった。序盤は２０位台をキープしていたパーオン率ランクも、一気に５０位前後に低下。シード権争いで後退する中で精神的にも苦しくなっていった。 　追い詰められても、必死に現実と向き合った。ＪＬＰＧＡが計測している精緻なプレーデータとにらめっこを繰り返し、信頼できる同行スタッフと「いまやるべきこと」を語り合い続ける。 　「言語化ができないと、ケガをしたりスイングのバランスを崩したりした時に、元の動きに戻すための道筋が見つけられなくなると思うんです」 　苦境だからこそ、今後につながる糧は得られる。日本女子プロでの久々の好プレーもそうだ。苦しかったプロテストを通して「どう大洗を攻略するか」の言語化をはかり続けてきたからこそ、メジャーの大舞台でも攻略の足掛かりを得られた。最終順位は３０位だったが、得られた自信はそれ以上のものだった。 　姉・優利は常に日本のトップを走り続け、アメリカ女子ツアーでも活躍している。プロテスト突破に苦しんだこともあり、周囲から「お姉ちゃんみたいにならないとね」と言われてしまうことが多かったという。 　姉に誰よりも感謝し、尊敬しつつも思う。私は私−。ウエアやクラブの契約先も、師事する指導者もあえて別にしてきた。 　「妹としてみられることは宿命なのかなと。でも『宿命は変えられないけど、運命は変えられる』という言葉を大事に思っています」 　普段は人懐っこいが、試合になると張り詰めた表情をあまり崩さない。選手たちが華やかな笑顔を振りまき、ファンを魅了する昨今の国内女子ツアーにあって、異色にもみえる。 　「もちろん、皆さんから応援される選手ではいたい。その上でプロとして、アスリートにしかつくれない真剣な雰囲気、緊迫感で感動させられるようになりたいんです」 　私なりに現実に向き合い、私なりの「理想のプロ像」を形にする。そう心に強く誓っている。 　◇吉田鈴（よしだ・りん） 　◆ダイヤモンド世代　　　　　 　２００４年２月２１日、千葉県市川市生まれ。姉・吉田優利の影響で６歳からゴルフをはじめる。同学年には竹田麗央、川崎春花、櫻井心那、神谷そらら、そうそうたるメンバーがそろう。 　◆アマ時代の実績　　　　　 　中学時代から今野康晴プロの指導を受ける。日本女子アマ、日本ジュニアの２冠を達成した姉の姿を横目に徐々に台頭。２１年の日本女子アマで４位に入って注目されると、２２年のオーガスタナショナル女子アマでも２０位に。 　◆プロテストでの苦闘　　　 　２１年に初めてプロテストに挑戦。最終まで進んだが、１打及ばず合格できなかった。２２年も２打差で苦杯。２３年は２次で敗退した。２４年は初日「７９」と出遅れながら、合格ライン上の１９位で悲願の突破を果たした。 　◆実家の居酒屋で一日店長　 　父・英隆さんが都内の飲食店「個室　串天　鮮魚　二十四区　末広町店」を経営。オフのたびに一日店長をしてきた姉に続き、プロ入り後の２５年冬に初めて一日店長を務めた。