世界最速の市販車10選 全てが400km/h以上! 性能と技術の限界に挑むチャレンジャーたち

トップの称号をかけた争い 自動車の黎明期である1800年代後半、カール・ベンツ氏の開発したパテント・モートルヴァーゲンの最高速度は約16km/h(10mph)であった。天候に恵まれ、運転手が軽く、追い風があればの話だ。 【画像】スウェーデンが誇る超高出力ハイパーカー【ケーニグセグ・ジェスコを詳しく見る】 全22枚 今日、約140年にわたる技術開発により、最速のクルマは480km/h(300mph)の壁を突破している。 いくつものメーカーが、速度記録を塗り替えようと研鑽を重ねている。 ベンツは毎秒わずか4.4mを走るのが精一杯であった。一方、2019年にアンディ・ウォレス氏が運転するブガッティ・シロンは毎秒136mを記録した。 恐ろしい速度である。このレベルのクルマが最高速度に到達できる場所は、地球上に数か所しかない。それでも、トップの栄誉を争う自動車メーカーは後を絶たない。 ブガッティ、SSC、ヘネシー、ケーニグセグなど、世界各国のメーカーが記録保持者となることを目指している。結果として、これらのクルマの多くは世界トップクラスの加速性能も兼ね備えている。 この記事では、飛行場や専用テストコースで計測された数値やメーカー公称値を基に、最速の市販車トップ10を紹介する。 1. ケーニグセグ・ジェスコ・アブソリュート 最高速度:531km/h(330mph、メーカー公称値) さて、ケーニグセグ・ジェスコ・アブソリュートは現時点で実際に最高速度を達成したわけではないが、メーカーのシミュレーションでは、驚異的な531km/hに達すると自信を持って示されている。 1. ケーニグセグ・ジェスコ・アブソリュート 圧倒的なポテンシャルを誇るツインターボ5.0L V8エンジンを搭載し、最高出力1298psを発生、E85バイオ燃料使用時は1600psに達する。 ジェスコ・アブソリュートの設計は戦闘機から着想を得たと言われているが、それは一目瞭然だ。 これだけのパワーに加え、Cd値0.278という極めて低い空気抵抗係数と9速トランスミッションが組み合わさり、0-100km/h加速は約2.0秒、0-160km/h加速は3.6秒を実現するという。 もし、理論上の最高速度とシミュレーション結果を実際に再現できれば、これまで生産された市販車の中で間違いなく最速となる。 2. ブガッティ・シロン・スーパースポーツ300+ 最高速度:490.484km/h(304.7mph) ブガッティ・シロン・スーパースポーツこそが世界最速の市販車だと主張する人も多い。なぜならこのクルマは、その途方もない最高速度を実際に記録しているからだ。 2. ブガッティ・シロン・スーパースポーツ300+ 標準のブガッティ・シロンをベースにしたスーパースポーツ300+は、ル・マン優勝経験者でありブガッティのテストドライバーでもあるアンディ・ウォレス氏によって、2019年にドイツで490.484km/hを記録した。 最高出力1600ps、最大トルク163kg-mのW16エンジンを搭載し、0-100km/h加速5.8秒、0-300km/h加速12.1秒という信じがたい性能を持つ。 記録達成車には軽量シート、車高ローダウン、ロールケージなどが装備されていた。 生産台数はわずか30台だが、最高速度は440km/hに制限されていた。 3. ヤンワンU9 最高速度:472.41km/h(293.54mph) ハイパーEVが毎週のように登場しているように見えるが、中国のヤンワンU9ほど誇れる記録を持つクルマは少ない。 3. ヤンワンU9 リマック・ネヴェーラと同様に、U9も数々の記録を保持している。中でも最大のトピックは、市販EVとして最速を自称している点だ。ドイツのATPテストコースで472.41km/h(293.54mph)を記録した。 ヤンワンはBYDの高級ブランドで、最近欧州市場に進出した。そのフラッグシップモデルが、このU9だ。モーターの合計出力は3018psに達し、0-100km/h加速は2.36秒。中国での価格は約20万ポンド(約4000万円)相当である。 4. SSCトゥアタラ 最高速度:455.2km/h(282.9mph) 最高出力1774psと8800rpmのレッドラインを誇るSSCトゥアタラ。その5.9L V8エンジンが生み出すパワーはすべて後輪に伝達される。 4. SSCトゥアタラ SSCトゥアタラは当初、最高速度533km/hを「公式」記録として謳い、ちょっとした論争を巻き起こした。やがて、誤解を招く「証拠」映像やデータ記録キットの「精度」に問題があった可能性を遅ればせながら認め、記録は撤回された。 2021年に再挑戦したところ、2回の走行で平均速度455km/hを記録した。当初のメーカー発表には及ばないが、それでも信じられないほど速い。 5. ブガッティ・ミストラル 最高速度:453.91km/h(282mph) ブガッティ・ミストラルは世界最速のオープントップ車であり、2024年に453.91km/hの最高速度記録を叩き出した。 5. ブガッティ・ミストラル 見た目はシロンのルーフを切り取っただけに思われるかもしれないが、ミストラルは専用ボディワークを備えた独自のモンスターだ。 一方で、ヴェイロンから使用されてきた名高いW16エンジンと搭載する最後のモデルとなった。 残念ながら購入は不可能だ。価格は417万ポンド(約8億3000万円)で、わずか99台の限定生産だが、発表時にはすでに完売していた。 6. ブガッティ・トゥールビヨン 最高速度:455km/h(277mph) ブガッティ・トゥールビヨンは、同社最新鋭の超高出力ハイパーカーであり、ヴェイロンから20年を経て登場した。 6. ブガッティ・トゥールビヨン プラグインハイブリッドの8.3L自然吸気V16エンジンは1800psを発生し、0-100km/h加速はわずか2.0秒、最高速度は455km/h(顧客向け車両は380km/hに制限)を誇る。 大半の購入者にとっては重要ではない話だろうが、25kWhバッテリーを搭載したPHEVであるため、電気のみで最大60kmの走行も可能だ。 7. ケーニグセグ・アゲーラRS 最高速度:447km/h 2017年、ケーニグセグは顧客所有のアゲーラRSを用いて世界最高速度記録を樹立した際、公道最高速度記録も同時に更新した。 7. ケーニグセグ・アゲーラRS この記録は1938年以来、メルセデス・ベンツが保持していた。大幅に改造されたW125グランプリカーが閉鎖区間のアウトバーンで432km/hを記録していたのだ。 80年の進歩を示すように、アゲーラRSは完全に標準仕様であり、ケーニグセグのオプションである1MWエンジンパッケージにより最高出力1360psを生み出す。 8. ヘネシー・ヴェノムF5 最高速度:437km/h ロータス・エキシージをベースにした先代モデルとは異なり、ヘネシー・ヴェノムF5は一から特注で製作されたモデルだ。 8. ヘネシー・ヴェノムF5 カーボンファイバー製のモノコックボディと、トランスミッションを破壊してしまいそうな最高出力1817ps、最大トルク165kg-mを発生するツインターボ6.6L V8エンジンを搭載。0-402km/h(0-250mph)加速はわずか15.5秒だが、これはブガッティ・シロンの約半分の時間だ。 ヘネシーは最高速度550km/h (341mph)を公言しているが、現時点での実測最高速度は437km/h(271.6mph)に留まっている。 9. ブガッティ・ヴェイロン・スーパースポーツ 最高速度:431.072km/h(267.86mph) それまでの記録を破られたこと、しかも米国の新興メーカーSSCに王座を奪われたことに刺激を受けたブガッティは、最高速度のタイトル奪還を目指し、ヴェイロンを大幅に改良した。 9. ブガッティ・ヴェイロン・スーパースポーツ ヴェイロン・スーパースポーツはわずか30台限定で、最高出力1200psに強化されたほか、400km/h以上の速度域で発生する負荷に対応するためにエアロダイナミクスも全面的に見直された。 2010年7月、ブガッティのテストドライバー、ピエール=アンリ・ラファネル氏がエーラ=レッシエンのオーバルコースで431.072km/hを記録した。 10. リマック・ネヴェーラ 最高速度:415km/h(258mph) 「EVは遅い」という神話を覆したクルマがあるとすれば、それはリマック・ネヴェーラだ。 10. リマック・ネヴェーラ クロアチアのリマックが開発したネヴェーラは最高速度415km/hを記録し、当時世界最速の市販EVとなった。また、1/4マイル(8.582秒)、0-100km/h加速(1.95秒)、0-160km/h加速(4.3秒)も世界最速を誇っている。 なお、顧客に納車される車両の最高速度は350km/hに制限されているが、リマックの公式イベントではこれを解除してマックスパワーを発揮できる。 よくある質問 Q&A 陸上速度記録はどこで樹立されるのか? ここで掲載するようなハイパーカーが真の実力を発揮できる場所は、地球上でもごくわずかだ。イタリアのナルドリングは全長約12.5kmの円形トラックで、バンクによりステアリング操作をあまり必要とせずに240km/hまで到達できることで有名だ。ブガッティは全長約8.7kmの直線コースを有するエーラ・レッシェンを使用し、ヘネシーはケネディ宇宙センターのスペースシャトル用滑走路を好んで使用している。閉鎖区間のアウトバーンや飛行場滑走路も使用例がある。 最初に速度記録を樹立したクルマは? 史上初の市販車であるベンツ・ヴェロが、1894年に世界最速の非公式記録保持車となった。約1200台が生産され、最高速度は約19km/h(12mph)だった。 320km/h(200mph)を初めて突破したクルマは? AUTOCAR英国編集部も、ここで紹介したいくつかのモデルを試乗・評価している。(クルマの性質上、すべて試乗するのは難しい……) 公道走行可能なクルマという広いくくりでは、それより速い記録もあったが、市販車としてはフェラーリF40が初めて200mphの壁を破った。0-100km/h加速4.1秒、最高速度は324km/hとされた。この性能に加え、F40は驚異的なシャシーと先進技術により、今なお史上最高のフェラーリの1つと評されている。 クルマは640km/h(400mph)に到達できるか? 簡潔に言えば、答えは「まだできない」だ。2019年以降、ブガッティ・シロン・スーパースポーツだけが480km/h超を実証しているが、ケーニグセグ・ジェスコやヘネシー・ヴェノムF5がこれを上回る可能性はある。このような速度域では、出力、空力、タイヤの摩耗など、あらゆる面で技術的に厳しい課題が突きつけられる。わずかな速度アップすら、極めて複雑で莫大なコストを要するのだ。それでもメーカーは挑戦を続けるため、640km/h(400mph)を超えるハイパーカー実現の可能性は十分にある。ただ、近い将来に目にすることはないだろう。 史上最速の陸上速度記録は? 現在の陸上速度記録保持車は、ナンバープレートの付いていない特別なクルマだ。スラストSSCは、英国空軍のファントムII戦闘機にも使われたロールス・ロイス・スペイというジェットエンジン2基を搭載し、1997年10月に1227.985km/h(763mph)を記録。自動車として初めて音速の壁を破った。この記録が25年以上も破られていない事実こそが、こうした走行に求められる技術力の高さ、コスト、そして危険性を物語っている。

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