誰かと食事をする際、せっかくなら気持ちのいい雰囲気をつくりたいもの。不快感を与えないよう、相手への配慮として「食事マナー」を知っておいて損はないでしょう。 今回はAll About編集部に寄せられたエピソードの中から、「手皿」にまつわる体験談を紹介しつつ、All About 暮らしのマナーガイドの諏内えみが理想的な振る舞いについて解説します。 【生理的にキツい】夫の食事マナー 「手皿」で恥をかいたり、もやもやしたり All About編集部が実施した「食事マナーに関するアンケート」では、片方の手を器の代わりにして口元に添える「手皿」で恥ずかしい思いをしたり、もやもやしたりしたという声が寄せられました。 「食事をする時に、お箸で口に運ぶ時は手を添えるのが良い作法だと思っていました。しかしTV番組のマナー特集を見て、マナー違反だという事を知りそれ以来気をつけるようになりました」(50代女性/福島県) 「手皿がよくないということ。汁などが垂れるのがマナー違反と思いしていたが逆に手皿そのものがマナー違反だと言われた。落としたり垂らす方が恥ずかしいと思ったが指摘されて恥ずかしかった」(30代女性/熊本県) 「箸で食べ物をつまみ、もう片方の手を下に添えたら一緒にいる人にそれはマナーとしてはダメなんだよと言われました。手を添えるのがダメな理由がよくわかりませんでした」(40代女性/宮城県) 手皿がマナー違反とされる理由 「手皿」がなぜマナー違反とされるのか? 理由は単に「手が汚れるから」ではありません。和食は本来、器を美しく使うものであり、人の手は器の代用品ではないからです。 小皿の場合は、器に手を添えて持ち上げると所作は自然と整い、お料理もきれいにいただけます。これは、世界に誇るべき日本の食文化が大切にしてきた基本の作法なのです。 ただ、テレビやSNSで多くの芸能人やタレントの方々が無意識に手皿をしている姿を目にすると、それを「上品で丁寧なしぐさ」と誤解してしまうことも少なくありません。しかし、手皿は配慮のつもりが、“器をきれいに扱えない人”という印象を与えてしまう所作となり、逆の評価で相手に伝わることもあるのです。 では、大きな器の場合はどうすれば美しくいただけるでしょうか? 答えはシンプルです。小皿を持つ、または、お懐紙を添えること。お懐紙は古くから和の文化に根付いた品ある小物。 手に持ち軽く添えるだけで、安心感と優雅な印象を与えてくれます。その白い1枚が、お料理の余韻をさらに引き立て、同席する人の心にまで穏やかさを運びます。 こうした振る舞いこそが、自然ににじみ出る“育ちがいい人Ⓡ”の所作といえるでしょう。マナーは決して堅苦しい決まり事ではなく、思いやりを形にした優しい知恵です。 器を持ち、お懐紙を添える、その小さな所作が食事の場の空気を心地よくし、共に過ごす人に安心感を与えてくれます。そしてあなた自身もより品格ある存在として映し出されるのです。 <調査概要> 食事マナーに関するアンケート 調査方法:インターネットアンケート 調査期間:2025年5月12日 調査対象:全国20〜60代の250人(男性:84人、女性:163人、その他:3人) ※回答者のコメントは原文のまま記載しています ▼諏内 えみプロフィール 「マナースクール EMI SUNAI」「親子・お受験作法教室 」代表。VIPアテンダント業務を経てスクールを設立。TPOに応じた実践的で好感度の高いマナーや立ち振る舞いをレクチャー。映画やドラマで俳優への所作指導やテレビ出演多数。著書に『「育ちがいい人」だけが知っていること』(ダイヤモンド社)などがある。 (文:諏内 えみ(暮らしのマナーガイド))