石破氏、首相就任後に「消費税減税」「衆院解散」「戦後80年検証」で相次ぐ翻意

 石破首相は就任後、発言内容が揺れ動いたり、自らの発言と合致しない行動を取ったりしてきた。  衆院解散のタイミングや消費税減税、戦後80年の戦争検証がそうだ。読売新聞は首相の発言をもとに「退陣方針」を報道したが、発言を翻すかもしれないというマイナス要素を過小評価した面があった。 消費税減税  自民党は先の参院選で食料品を対象にした消費税減税に反対する考えを掲げたが、方針の決定まで首相は揺れていた。  発端は3月28日の参院予算委員会での質疑だ。立憲民主党の川田龍平氏から消費税減税の検討を促されると、「いかなる効果があるのか、検証させていただきたい」と答弁した。この頃、首相は周囲に「食品だけでも税率が下がれば『助かった』と思う国民がいるのではないか」と吐露し、減税の実施も視野に入れていた。  自民党内で森山幹事長らが税率引き下げに慎重姿勢だったこともあり、首相は4月1日の記者会見で「全世代型の社会保障を支える重要な財源だ。税率を引き下げることは適当ではないと考えている」と一転して否定的な考えを示した。しかし、同5日の民放番組では「党との相談だ」と再び含みを持たせた。  首相は5月8日夜に、森山氏と東京都内の日本料理店で会談する。この直後、周囲に「将来につけを残すようなことはしたくない。将来の社会保障を犠牲にしてまで首相の椅子にしがみつきたいと思っていない」と語り、ようやく方針を固めた。  読売新聞は同日夜にこの発言を確認し、9日朝刊で政府・自民党が消費税減税を実施しない方針であることを報じた。ただ、参院選の直前、首相は周囲に消費税減税を掲げなかったことを悔やむ発言もしていた。 衆院解散  首相は昨年10月9日、衆院解散に踏み切った。同1日に政権を発足させたばかりで、就任からわずか8日後の解散は戦後最短。しかし、当初は、早期解散に慎重な発言を繰り返していた。  昨年9月14日の自民党総裁選候補者による日本記者クラブでの討論会で、首相は「世界情勢がどうなるか分からないのに『すぐ解散する』という言い方はしない」と語った。小泉進次郎氏が同じ場で、「国民に信を問うたことを礎として政権運営をしなければ、どんな政策だって前に進まない」などと早期解散に言及したのと対照的だった。同17日のテレビ番組では、首相は「有権者の方々に判断していただく材料をきちんと提供するのは政治の義務だ」と明言し、衆参両院の予算委員会での質疑について「どれくらい時間が取れるかは国会が判断することだ」とも述べた。  実際には、自民党総裁就任に伴う同9月30日の記者会見で「新政権はできる限り早期に国民の審判を受けることが重要だ」として衆院解散・総選挙を速やかに断行する意向を表明した。異例の首相就任前の解散表明で、野党は強く反発した。  首相が翻意したのは、総裁選で国民の関心が自民党に向いている直後の衆院選なら、同党に有利に働くなどと森山幹事長が説得したためとみられている。しかし、こうしたもくろみは外れ、衆院選で自民党は公明党とあわせた与党で過半数を割り込む惨敗を喫した。 戦後80年検証  戦後80年にあわせた戦争検証を巡り、首相は当初、閣議決定を伴う談話の取りまとめを模索していた。  昨年12月26日、「しっかりとしたものを出そうと思っている。構想段階だが、準備をしたい」と周囲に語った。しかし、自民党内の反発が伝わり始め、今年1月15日に「談話は難しそうだ。談話以外の何らかのものをやりたい」と周囲に漏らした。  首相はその後、「(戦後80年の節目に)なんであんなことが起きたのか。検証するいい機会だと思う」と周囲に伝え、同時に、自らが有識者と意見交換する場を設けることも示唆した。  読売新聞は首相のこうした発言をとらえ、3月27日朝刊で閣議決定による談話の取りまとめを見送り、有識者会議を設置して、検証を行う方針を固めたことを報じた。  同29日に太平洋戦争末期の激戦地である硫黄島(東京都小笠原村)を訪問した際には、「どうすれば平和を築くことができるかは過去の検証とともに未来への思いを込めていきたい」と記者団に語り、強い意欲を示した。  しかし、検証を踏まえた首相見解は、8月15日の終戦の日を過ぎた今も表明されていない。 石破氏、安倍首相らに退陣迫る  石破首相は過去、選挙で敗北した歴代首相に対し、その責任を厳しく追及してきた。  2007年7月の参院選で歴史的惨敗を喫した安倍晋三首相が続投を表明すると、石破氏は党総務会で「首相は『私か(民主党代表の)小沢さんかの選択だ』と訴えた。これを私どもはどう説明するのか。挙党一致はこの答えにならない。次の選挙で振り子現象を期待するのは難しい」と訴えた。  09年には麻生内閣の農相でありながら、「麻生降ろし」に加わった。東京都議選で自民党が大敗し、政権への逆風がやまないことへの危機感からで、同年7月15日には与謝野馨財務相とともに首相官邸を訪ね、「このままでは大変なことになりますよ」などと首相に辞任を直談判した。  政権与党の民主党が敗北した10年の参院選を受けて、菅直人首相に辞任を迫ったこともあった。選挙後の衆院予算委員会で、菅氏に直接、「選挙をなめないでください。主権者たる国民の選択だ」と突き付けた。  今年7月28日の自民党両院議員懇談会で、山田宏参院議員はこうした石破氏の過去の発言を読み上げた。その上で、「(自ら)辞任して、大うそつきでないことを証明すべきだ」などと退陣を求めた。

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