９月１３日に開幕する陸上の世界選手権（世界陸上）東京大会の日本代表選手が２日に発表され、注目の男子１００メートルは桐生祥秀（日本生命）、守祐陽(もりゆうひ)（大東文化大）、サニブラウン・ハキーム（東レ）の３人が選出された。 　代表に内定するためには昨夏のパリオリンピックで８位以内、あるいは今年７月の日本選手権で上位に入ったうえで、設定された有効期間内に世界選手権の参加標準記録（１０秒００）をクリアする必要があった。主要選考会となった７月初旬の日本選手権を前にした時点では、日本選手権で３位以内なら代表に即時内定するサニブラウンと、今季のレースで好調を持続していた柳田大輝(ひろき)（東洋大）が注目候補に挙がっていた。 　しかし日本選手権は、サニブラウンが故障を抱えての強行出場で予選敗退となり、柳田も予選でスタートの号砲が鳴る直前に姿勢が崩れ、前に手をついてしまう不正スタートでまさかの失格となった。日本選手権終了時点で内定者は出ず、そこから代表争いは混線となった。 　今回の代表選考では日本選手権の成績上位者が優先され、５年ぶりの復活優勝を遂げた桐生が８月６日に参加標準記録を突破する９秒９９を出して選考条件を満たし、まず代表入りを確実にした。さらに、日本選手権７位で、桐生と同じ８月６日の大会で１０秒００を出した守が大きく前進し、そして参加標準記録の有効期間内だった昨年のパリ五輪で９秒９６を出していたサニブラウンが３番手となった。サニブラウンはパリ五輪で決勝に進めず、日本選手権も予選敗退だったが、８月２４日までの参加標準記録有効期間での他の選手の成績や世界ランキング次第で代表に選出される可能性を残していた。 痛恨の「一瞬」に泣いた柳田大輝 　柳田は５月の関東学生対校選手権（関東インカレ）、セイコーゴールデングランプリ、アジア選手権ですべて優勝し、関東インカレでは４・５メートルの追い風参考ながら９秒９５で走り、今季前半は最も勢いがあった。日本選手権で参加標準記録を切って３位以内に入れば内定だっただけに失格はまさに痛恨の「一瞬」だった。８月１６日に１０秒００をマークして参加標準記録をクリアしたが、サニブラウンの９秒９６を上回ることができずに個人代表入りはならず。それでもリレーメンバーとして期待がかかる。 １６歳で１０秒フラット…成長楽しみな清水空跳 　柳田と同じく、個人代表入りはならなかったがリレーメンバー入りした１６歳の清水空跳(そらと)（石川・星稜高）は７月の全国高校総体で１８歳未満の世界記録を塗り替える１０秒００で参加標準記録を突破し、陸上関係者に衝撃を与えた。大会主催者は、原則公表しない１０００分の１秒単位の記録は９秒９９５だったと明かした。高校総体の前に行われた日本選手権でも準決勝まで進んでおり、今後の成長が楽しみな選手だ。 　男子１００メートルで日本選手が９秒台の公認記録を出したことは過去に１０度ある。複数回の９秒台をマークしているのがサニブラウンと桐生。サニブラウンは６度記録しているが、２３年の世界選手権ブダペスト大会準決勝、２４年のパリ五輪準決勝でマークするなど大舞台に強い。ブダペストの決勝では１０秒０４（無風）で６位入賞し、１９３２年ロサンゼルス五輪で「暁の超特急」と呼ばれた吉岡隆徳と並んで五輪、世界選手権を通じての最高順位となった。日本スプリンター陣が地元開催の東京でファイナリスト入りを目指す。（デジタル編集部）