参院選での惨敗を受け、自民党内では“総裁リコール”の動きもあるなかで、むしろ支持率が上昇している石破茂・首相。「参院選総括後に幹事長としての責任を明らかにする」と言明している森山裕幹事長を幹事長代理に降格させ、その後任に小泉進次郎・農水相を抜擢するという秘策もあると指摘される。さらに、この局面で“伝家の宝刀”を抜くという驚きの構想が練られているという──。【全3回の第2回。第1回から読む】 【推計】「野党乱立なら自公で過半数回復」 参院選の得票をもとにした次期衆院選の獲得議席 石破首相はむしろ反石破勢力の暴発を狙って挑発しているという指摘がある。旧安倍派のOB議員はこう見ている。 「反対派が総裁リコールの動きを本格化させれば、石破総理はそれを口実に解散・総選挙を仕掛けるつもりではないか。進次郎氏の父である小泉純一郎・元首相が20年前(2005年)にやった郵政解散の手法だ。 党内の内紛を理由に解散を打つのは本来筋が通らないが、純一郎氏は郵政民営化法案が自民党内の造反により参院で否決されると、参院は解散できないから衆院を解散して国民の信を問い、勝利することで自民党内を制圧した。石破総理は小泉内閣で防衛庁長官に抜擢され、大臣を3期務めたから純一郎氏の政治手法を学んでいる」 去る8月24日夜、石破首相は都内のホテルの日本料理店に小泉元首相、山崎拓・元副総裁、武部勤・元幹事長を招いて3時間近く会食した。同席したのは石破側近の赤沢亮正・経済再生担当相だ。 「石破総理は難局にあって小泉元首相に教えを乞うために招いた。会談では総裁選前倒しも話題に上がり、郵政民営化で自民党から造反が出た郵政解散の時の話をしたそうです」(前出・石破側近) 郵政解散(総選挙)の際、小泉元首相は自民党の造反組議員の選挙区に刺客候補を擁立し、反対派の多くを落選させた。食事会で小泉元首相は石破首相に具体的にどんなアドバイスをしたのか。 本誌・週刊ポストは出席した山崎氏に取材した。山崎氏が語る。 「郵政解散については私と武部さんが話した。郵政解散の時は、私自身が郵政民営化法案を審議する特別委員会の筆頭理事を務めていたし、武部さんは幹事長を務めていたから。郵政解散の候補者選びなどで私たちが刺客を立てるなどの仕事をしていたので。まあ、昔話をしました」 ──石破首相はどんな感想を言っていたか。 「石破さんは何も話さなかった。(真剣に)聞いていただけでした。小泉も聞いていただけ」 ──総裁リコールになれば首相は解散・総選挙に踏み切るとの見方がある。 「石破おろしは成功しないでしょう。総裁選はしない。これは全国の県連の世論調査を見ればわかります。総裁選は行なわれず、石破政権はあと2年は続くでしょう」 山崎氏は解散の可能性についてそう煙に巻く言い方をした。 ちなみに、2004年当時に参院選敗北の責任をとって辞任を表明した安倍晋三・幹事長を「幹事長代理」に降格させて執行部に残す人事を行なったのは小泉元首相であり、後任の幹事長に就任したのが、今回の会食に同席した武部氏だった。石破サイドが検討しているとされる「森山幹事長代行、進次郎幹事長」という人事案も純一郎氏の政治手法から学んだものだと言える。 石破政権を支える小泉父子の存在が示唆しているのが、郵政解散の手法で反石破勢力を駆逐する“リコール潰し解散”なのだ。