国内の4都市がアフリカ各国の「ホームタウン」と認定されたことでSNSが炎上。市役所にも問い合わせが殺到していて、職員が対応に追われています。 【写真を見る】何者かが書き換えたか グーグルマップの「木更津警察署」の表記 「大量の移民が」誤情報で混乱 木更津市には1000件以上の問い合わせ 職員 「移住とか移民の受け入れを行うものではございません。ご心配はいただいているところではございますけども…」 千葉県・木更津市の市役所では、朝から電話が鳴り止みませんでした。これまでに1000件以上の問い合わせが市民から寄せられているそうです。 職員 「一日中、鳴り止まない状況で業務にも支障が出ている。全く手についていない」 きっかけは20日、横浜で開催されたTICAD(ティカッド)=アフリカ開発会議にあわせて行われた発表でした。 JICAは木更津市など、日本国内の4つの自治体(山形・長井市、千葉・木更津市、新潟・三条市、愛媛・今治市)を親交のあるアフリカ4か国の「ホームタウン」に認定。国際交流の後押しが目的ですが、そのうちの1つ、ナイジェリア政府からは当初、こんな発表が... ナイジェリア政府の声明(現在は訂正) 「日本政府は木更津への移住を希望する、若くて優秀なナイジェリア人に特別なビザを用意する」 “移民の受け入れ促進”ともとれる内容に、JICAや日本政府は真っ向から否定しました。 林芳正官房長官 「本件事業における取り組みとして、JICA研修事業等を通じたインターン生の受け入れを想定しております。移民の受け入れ促進ではない」 しかし、SNSでは誤解に基づく情報が広がりました。 「大量のアフリカ移民の流入が始まる」 「犯罪が増加し治安が悪くなる。街も安心して歩けない状態に」 翻弄される地元「誤情報は残念」 ナイジェリアの「ホームタウン」に認定された木更津市。グーグルマップで「木更津警察署」と検索すると、記されたのは千葉県警察“ナイジェリア”政府警察署。何者かにより書き換えられたとみられます。 木更津市は、4年前の東京オリンピックでナイジェリアのホストタウンとなり、選手の事前合宿が行われました。 当時、選手が宿泊し、料理も提供した市内のホテルでは... パプリカホテルです 飯塚義典代表 「SNSの誤った情報の拡散で、今回のような大きな話になってしまっているのは、とても残念。正確に情報を集めて判断してもらいたい」 いま、ホテルでは日本で海外旅行体験ができるように、10人いる正社員全員に外国人を採用。館内には、異国をイメージした装飾もほどこされています。代表の飯塚さんは、ネットに広がる外国人への悪いイメージを警戒しています。 パプリカホテルです 飯塚義典代表 「当館で働いてくれている外国人たちも、そういう目で見られてしまう恐れがあることは凄く残念。そうならないように私たちのホテルでは、遊びに来た人たちが楽しい思いをして帰っていただけるようにしているので、ぜひそこはみていただければ」 木更津市長も会見で… 千葉・木更津市 渡辺芳邦市長 「移住移民の受け入れに関すること、また特別就労ビザ等の発給要件の緩和措置などの事実については、私の方から要請したこともなく全く知らない状況」 ネットで拡散する憶測に、アフリカ各国の「ホームタウン」に認定された他の自治体にも苦情が殺到しています。 新潟県三条市の市長は、「あくまで人材交流の一環で、移民受け入れの促進につながるものではない」と強調します。 新潟・三条市 滝沢亮市長 「地域おこし協力隊の学生が来年1年間ガーナで研修するというものに過ぎない。多文化共生していくことがこれからの地域の発展にも資するのでは」 山形県長井市や愛媛県今治市も、SNSで拡散している誤った情報を否定しています。 なぜ誤情報?ナイジェリアも訂正 藤森祥平キャスター: なぜアフリカで誤情報が拡散されたのでしょうか。元外務副大臣の佐藤さんに聞きました。 佐藤正久 元外務副大臣 「『JICA・ホームタウン』と他の国が考える『ホームタウン』は全然違う。『ホームタウン』=ふるさとだが、『JICA・ホームタウン」は“姉妹都市”的に交流を強化するイメージ」 藤森キャスター: ナイジェリア政府は「日本政府は、木更津への移住を希望する若くて優秀なナイジェリア人に特別なビザを用意する」という発表をしていました。 一方でJICAは、「事実と異なる内容および誤解を招く表現等が含まれている。内容の訂正を速やかに行うよう申し入れを進めています」とコメントを出し、ナイジェリア政府が26日になり政府のホームページ上で削除し、日本側の見解を受け入れた形になりました。 小川彩佳キャスター: 既に訂正はされましたが、なぜ政府レベルでの食い違いというのが発生したのでしょうか。ビザについての言及もありましたからね。「ホームタウン」というネーミングの誤解だけで、こうしたことになるのか疑問を感じてしまいます。 小説家 真山仁さん: まずはコミュニケーション不足です。それよりも引っかかるのは、参議院選挙で「外国人を排除する」といったことが一番の公約でもないのに、メディアもたくさん取り上げて、自分の街に外国人がいることを「怖い」「来て欲しくない」と言っていいんだという、潮流が変わってしまったものも影響していると感じます。 今までは、例えばオリンピックの時、選手を受け入れるウェルカムな雰囲気がありました。 ギクシャクして日本も孤立していくのが少し心配なので、もう少しお互いが理解し合って、友好関係を結びながら、また来て欲しいと思ってもらうために何が必要なのかを考えなければ、排斥が始まるという最悪のパターンも起こりうると思います。 藤森キャスター: ナイジェリアのホームタウンとなる木更津市民はどう思っているのか聞いてきました。 ホームタウン認定に木更津市民は?市長「JICAも外務省も準備不足のなか今回を迎えた」 ——木更津がナイジェリアのホームタウンに 20代 「え、ナイジェリアのホームタウンですか。ナイジェリアですか。木更津は観光名所とかいろいろあるので、いろんな外国の人が来たら面白いかなっていうのはある」 50代 「スポーツとか文化とかで、若い人たちが交流を持てるような友好関係を結べれば」 60代 「交流は悪くないと思うが、自分の国が大変な時期なので、他の国の人のことまで考えていられる余裕があるのかな」 40代 「木更津は外国人の方が多いので、その辺がどうなっちゃうのかなって。いろんな地域で外国人の方問題になってるじゃないですか。いままでそういう心配はなかったので、ちょっと不安はありますね」 皆さん、様々な考えをお持ちだと思いますが、木更津市長によると、「朝の始業時間から閉庁時間まで電話が鳴り止まず不安の声が続いている」といいます。 市長は、「いくらJICAや外務省が『間違いだ』と言っても、SNS上では誤情報が拡散される。JICAも外務省も準備不足のなか今回を迎えた」とおっしゃっています。 小川キャスター: 職員の皆さんは大変な思いをされているとは思いますが、地元の皆さんも、突然自分たちの地元がホームタウンという認定がされたことをSNSの情報や報道を通して知ることになったら、当然戸惑いを覚えると思います。木更津市としての説明も十分だったのだろうかと感じます。 真山仁さん: 全体的に順番が間違っていたり、時間をかけていなかったり、ボタンの掛け違いだったらいいですよね。しかし、完全に迷惑だと言わんばかりになってしまっているというのは、日本にとっては全然プラスにならず、あれだけ横浜で大きなイベントをして、最後にアフリカの人は来なくていいとなってしまうのは大変もったいないことだと思います。 最近の日本の政治は丁寧さがなくなった気がします。言葉足らずというか、相手の立場に立てなくなってきているのはすごく心配なので、丁寧にやってほしいです。 藤森キャスター: 関わった自治体なども含めて丁寧な説明と表現、理解を深めていくことが大事ですね。 小川キャスター: こうしたことを通して国際交流の芽が摘まれるということがないように、改めて丁寧に、政府もJICAも説明する必要があるように感じます。 「ホームタウン」認定についてみんなの声は? NEWS DIGアプリでは「ホームタウン」認定について「みんなの声」を募集しました。 Q.「ホームタウン」認定 誤情報の拡散どう思う? 「懸念を感じる」…42.9% 「国際交流の促進自体は良いこと」…7.7% 「認定に関するJICAの説明不足」…38.0% 「問い合わせ殺到に驚いた」…3.8% 「その他・わからない」…7.7% ※8月26日午後11時11分時点 ※統計学的手法に基づく世論調査ではありません ※動画内で紹介したアンケートは27日午前8時で終了しました。 ====== <プロフィール> 真山仁さん 小説家 2004年「ハゲタカ」でデビュー 最新著書に「アラート」