宇宙は全て「たった一つの法則」に従っている…実は、この世界で起こることは全て「計算」で予想できるという「信じがたい事実」

この宇宙にあるあらゆる物質には「質量」が存在しています。ですが、物質を構成する最小単位である素粒子の理論をひもといていくと、「質量があるのはおかしい」という問題に突き当たるのだそうです。 では、質量はなぜ存在し、どのように生まれるのでしょうか? さらに、質量の謎を追っていくと、宇宙の成り立ちの解明にもつながっていくそうなのです。 その謎に迫った新刊『質量はなぜ存在するのか』より、その内容の一部をご紹介します。 *本記事は、『質量はなぜ存在するのか』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。 すべてを分解してみる 太陽が輝き、海には大きな波が立つ。地上では風が吹き、ときには雨が降る。空には雲が流れ、ときに雷が走って闇を裂く。私たち人間はもちろん、あらゆる動物や植物も生まれて育ち、やがて死んで土に返る。身のまわりで起こるあらゆる現象を私たちは自然のものとして受け止めて日々暮らしている。 でもちょっと待てよ。それはなぜ起こるのか? なぜこうなのか? その理由をすべて理解したい。野望に満ちていた若い頃、私もそんなことを考えたことがある。 なぜ人類はこうして生きているのか、そもそもなぜ宇宙はここにあるのか。そんな根本的な疑問に、宗教とか禅問答とかではなく、科学的に納得できる解答を得たい。 そこに近づくための一つのアイデアは、すべての物質をばらばらにしてもっとも基本となる構成要素に分解してみることだろう。機械の動く仕組みを知りたければ部品にばらしてみればいい。最近の電子部品はばらしても何が何だかわからないが、昔の電気製品なら、ばらすとその仕組みがよくわかった。 ばらばらになった個々の部品の仕掛けがわからないなら、もっと分解してみる。そうやってどこまでも分解していけば、いずれもっとも小さい部品にまで分解できるに違いない(図「物質を基本となる構成要素までばらばらにしてみる」)。 こうして得られた部品、つまり物質の構成要素が何かを調べ、その仕組み、つまり物質の小さな要素がしたがう法則を完全に明らかにすることができたら、あとはその法則にしたがって何が起こるかを考えればいい。 法則を数式にあらわして計算してみるわけだ。計算はきっと難しいだろうが気にしない。やる気と能力さえあれば、世界で起こること、いや宇宙で起こることだって何でも計算して理解、いや予想することだってできるはずではないか。 「原子」は「素粒子」と呼べるのか? ここでいう基本になる構成要素のことを素粒子と呼ぶことにしよう。20世紀初め頃まで、素粒子とは元素のことだった。水素や酸素、炭素、鉄、金からウランまで、これらはみな異なる元素である。元素はどれもそれ以上は分割できないという意味で素粒子と呼ぶにふさわしい。 しかも、ある元素は決して他の元素に変わることはない。中世の頃は、錬金術という怪しげなことをやる人たちがいて、いろいろな物質を混ぜて熱したり冷ましたりして金を作ろうとしていたというが、そんなことは決してできっこない。銀の元素は銀のまま、鉄の元素はどうしたって鉄のまま、決して金に変わることはないのだ。 では、元素のしたがう基本法則とは何だろうか。元素にはいろいろな種類があるが、それらをまとめて原子と呼ぶことにしよう。原子のしたがう法則、つまり原子と原子の間に働く力が完全に理解できれば、勝ったも同然。がんばって計算さえすれば、すべては理解できるはずだろう。 ところがどうも、話はそう簡単ではない。原子と原子の間に働く力は、その原子の種類(つまり元素)によっても違うし、ときには電子を余分にもらったり失ったりしてイオンになってもまるで変わってくる。 困ったことに元素には100以上の種類がある。原子と原子の組み合わせは100×100=1万よりも多い。イオンになると性質がまるで変わるし、1個の原子にも内部状態がいろいろあるとか考え始めると、もううんざりしてくる。こんなややこしいものを基本法則と呼ぶわけにはいかない。きっとどこかで間違えたのだ。 こんなにも種類が多い原子は、素粒子と呼ぶべきもっとも基本的な単位ではなく、さらに分割できるものではなかろうか。そう考えるのは自然なことだろう。原子がもっと小さな積み木から作られているなら、積み方によっていろいろな種類があってもいい。原子にはきっと構造があるのだ。 原子の中だって大変なんだ それを考えるうえでヒントになるのが元素の周期表(周期律表)だ。周期表とは、すべての元素をその質量の順に横に並べたものだ。面白いことに、一定の周期で改行して左に戻ると、性質の似た元素が縦に並ぶ(図「元素の周期表」)。 一番右側にはほとんど他の物質と反応しないヘリウム、ネオン、アルゴンなどが並び、ナトリウム、カリウムなど、簡単に陽イオンになる元素は左側に、陰イオンになりやすいフッ素、塩素などは右側に整列する。比較的安定な金属を作る金・銀・銅は仲良く縦に並んでいる。 もちろんこれは偶然ではない。メンデレーエフが19世紀後半に周期表を考案したときにはまだわかっていなかったが、この周期は原子の内部構造を反映している。 現在、私たちが知っている原子の内部構造はこうだ。正の電荷をもつ原子核が真ん中に座り、そのまわりを負の電荷をもつ電子がくるくる回っている。原子核は電子にくらべて1800倍以上も重いので、文字通り真ん中にでんと座って動かないと考えてよい。 電子は「空間を漂う波」である 一方の電子は軽くてふわふわと飛び回る。正の電荷と負の電荷は電磁気力によって引き合うので、原子核と電子は互いに引き合ってまとまり、原子を作る。電子がいくつ回っているかは元素によって異なるが、その違いは原子核が電子いくつ分の正電荷をもっているかで決まることになる。 ふわふわと飛び回る電子の運動を理解するには量子力学が必要になる。量子力学をちゃんと理解するのは大変だ。電子は粒子であり同時に波でもある、あるいは座標と運動量の交換関係などと言われて途方にくれる人も多いだろう。当然だと思う。筆者が大学で量子力学を学んだときもそうだった。 結局わかったような気がし始めたのは、さんざん計算をやって慣れてきてからだと思う。本当はわかったわけではなく慣れただけかもしれない。そんな悠長なことをやっている暇のない読者の方は、とりあえず電子というものは空間を漂う波だと思っておけばよい。遠くから見ると点のような粒子に見えるが、近寄ってみるとある大きさに広がった波に見える。 「電子の波打ち」から「基本法則」がみえてくる 原子の中の波はどうなっているのだろう。 波が原子核のまわりに巻きついている。波というものは周期的に正にふれたり負にふれたりと波打ちをくりかえすわけだが、一定の形に落ち着く、つまり定常波になるためには、原子核のまわりを1周1回ったときにちょうど元に戻らないといけない。だから、原子の中の電子の波は勝手な波ではなく、1周回る間の波打ちが0回、1回、2回、というふうに決まったものだけが許されることになる。 電子がいくつもあるときは、波打ち0回の電子が2個、1回の電子が何個、というように波打ちの回数ごとに決まった数の席があり、波打ちの少ないほうから順に埋まっていく(図「波打ちと電子の指定席」)。 こうすると、波打ち0回の電子だけをもつ原子は周期表の1行目、波打ち0回は満席で波打ち1回の電子ももっているのが周期表の2行目、というように原子の分類が決まっていく。 波打ちが一つもない最前列の指定席が満席になったものはヘリウム、波打ち1回の指定席も満席になったものはネオン、2回目も満席になるとアルゴンになる。これらは他の物質とはほとんどくっついたり離れたりしない。 満席になったところにさらに1個電子をつけたものは、ナトリウム、カリウムなどで、余計な1個の電子を失って陽イオンになりやすい。逆に、満席に1個足りないフッ素、塩素などは電子を1個余分にくっつけて陰イオンになりやすい。こう考えると性質の似た原子が周期表で縦に並んでいるのは、なるほど筋が通っている。 宇宙はすべて、一つの法則にしたがっている ここまでくると話はだいぶ簡単になってきた。元素のしたがう法則は元素の種類が多いせいでいろいろあってやっかいだったが、原子の中のことまでわかってしまえば単に電子の数が違うだけの話だ。 その電子が何を起こすかも量子力学の法則にしたがってすべて計算できる。原子と原子の間に働く力もがんばれば計算可能だ。それらを使えばあらゆる物質の性質も計算して導き出せるに違いない。 もちろん、現実に計算するのは大変で、原子がいっぱい集まってできた物質の性質を調べるのは大仕事だ。それでも、基本的な法則がわかっているという安心感はある。宇宙はすべて、元をただせばすべては一つの法則にしたがっているのだ。 超悲報…もはや、夏の暑さを回避するのは、絶望的…この先何十億年変わらないと、物理学者が唱える「納得のワケ」

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