取引先接待で女性社員を「生贄」にした40歳課長の大失敗…セクハラ部長を黙認した「最悪の結末」

セクハラがこれだけ問題視されても、接待や懇親会の場で女性社員が不適切な扱いを受けるケースが依然として存在する。上司が「これくらいは大丈夫」と軽く考えていても、当事者にとっては深刻なハラスメントとなる可能性も。こうした認識のズレはいかにして生まれるのか。事例をもとに、社会保険労務士の木村政美氏が解説する。 取引先との飲み会に新入社員の女性を呼んだら… 7月下旬。甲社(都内にある機械メーカーで従業員数400名)の営業課長であるA上さん(40歳)は、部下のB下主任(30歳。乙社の営業担当)から相談を受けた。 「今日乙社を訪ねたら、C山部長(45歳。乙社の担当者)から、『8月上旬社内行事で納涼会を開くので課長と一緒に来ませんか』と誘われました。どうしましょうか」 乙社は今年4月から大口取引先になった会社である。 「C山部長には4月以後会ってないから、そろそろ顔を見せておこう。これをきっかけに更に良い関係になるチャンスだ。先方にはふたりで参加すると伝えてくれ」 「わかりました」 「いや……、待てよ。確か以前、『C山部長は若い女性が好きで、社内の女性社員たちにもアプローチをかけては振られている』という話を君から聞いていたな。彼の機嫌を取るためにD原君(22歳。A上課長の部下で新入社員の女性)も連れていこう」 「しかし、会は18時からですし、万一D原さんがC山部長に気に入られたら心配です。止めた方がいいですよ」 「大丈夫。いくら何でも取引先の社員に手を出すことはないでしょ?3名で参加すると言っといて」 納涼会当日。A上課長ら3人が会場であるホテルのパーティールームで受付をしていた最中にC山部長が現れた。 「今日はお忙しいところありがとうございます。あれ?同行するもう一人の部下は女性だったんですね。お名前は?」 「営業課のD原といいます。よろしくお願いいたします」 C山部長は笑顔で3人を席に案内し、自分の隣にD原さんを座らせた。そして宴会が始まり、D原さんの目前に自分のビールグラスを差し出した。 「可愛い子にお酒を注いでもらうのは最高だ」 とまどうD原さんを見たA上課長が、 「とにかくC山部長にお酌を。君も担当を持つようになったらこういう場に招待されたりセッティングすることもあるだろう。いい経験だと思ってがんばりなさい」 とせかした。D原さんは、慣れない手つきでグラスにビールを注いだ。 「こんな話の相手をさせられるなんてセクハラです」 その後酔いが回り機嫌がよくなったC山部長は、A上課長とB下主任には目もくれずD原さんに 「彼氏はいるの?」 「初体験はいつ?」 などと質問攻めにした。プライベートや性的な話題ばかり聞かれ、恥ずかしそうに下を向くD原さんを見て 「恥ずかしがり屋かあ。じゃあ俺がリードしちゃおうかな」 などとますます調子に乗る始末。 C山部長の相手に困ったD原さんは、何度もA上課長に助けを求める視線を送ったり、C山部長がトイレで席をはずした隙に 「こんな話の相手をさせられるなんてセクハラです」 と訴えたが、 「気にしすぎだよ。とにかく乙社はうちの大切なお客様だ。C山部長を怒らせないように少しぐらい我慢して」 と取り合わなかった。仕方なく席を立ちB下主任を探したが、現場の社員に捕まり話し込んでいる様子で、声をかけられる雰囲気ではない。D原さんはトイレに逃げ込んだ。 10分後。トイレから出てきたD原さんをC山部長が待ち伏せしていた。 「まだ話の途中じゃないか。私に黙って勝手に席を立つなんて悪い子だ」 席まで連れ戻されたD原さんは、その後もC山部長の相手をさせられた。A上課長は2人のやり取りに合いの手を打ちながら、ますます機嫌がよくなるC山部長を見て満足していた。 「これでこの先も乙社との取引は安泰だ。何なら将来的にはD原君を担当につけようかな。彼女のこと気に入っているみたいだし……」 宴会終了後、C山部長はD原さんをしきりに二次会に誘ったが、嫌がる彼女を見かねたB下主任が 「今部長から連絡があって、至急の仕事があるそうなので、これから私とD原は会社に戻ります」 と嘘をつき、その場から解放されたD原さんは泣きながら小走りで家路についた。 翌日。朝礼終了後A上課長はB下主任に 「D原君が会社に来ていない。彼女の携帯に電話しても出ないんだよ。無断欠席なんて社会人として失格だ」 憤慨するA上部長の横で、B下主任は自分の携帯からD原さんに連絡を取ると、本人が出た。 「今日はどうしたの?休む連絡がないから心配したよ」 D原さんは涙声で答えた。 「私、もうセクハラするC山部長と、一緒になって喜んでいたA上課長の顔なんか見たくありません。だから会社辞めます」 *     *     * セクハラは、加害者に自覚がなくても受け手が不快に感じれば成立する。これは、職場において性的な言動が本来不要であるため、どんな性別・関係性であっても不適切とされるからである。従ってパワハラ(パワーハラスメント)のように問題視される言動に至った事情は考慮されにくい。 また、セクハラは今回の事例のような異性間だけではなく、同性間でも起こり得る。例えば男性の先輩社員が後輩の男性社員に対して、嫌がるのに性体験を尋ねたり、執拗な猥談を繰り返すなどが当てはまる。 宴会や飲み会は社外で行われることが多いが、会社(上司)の命令により業務の一環として参加した場合、会場は職場とみなすことができるので、労働者の意に反する性的な言動はセクハラの対象になる。事例のA上課長にその認識がなかったとしたら、あまりに問題だと言えよう。 後編記事〈取引先接待で女性社員「生贄」にした40歳課長の「不適切」すぎる行動とは…企業がセクハラに取るべき対応も〉では、セクハラの種類や今回の事例におけるA上課長の問題点、気になる「その後」などをお伝えする。 【後編を読む】取引先接待で女性社員「生贄」にした40歳課長の「不適切」すぎる行動とは…企業がセクハラに取るべき対応も

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