三菱ＵＦＪ銀行の貸金庫から顧客の金品を盗んだとして、窃盗罪に問われた元行員・山崎由香理被告（４６）の公判が２５日、東京地裁（小野裕信裁判官）で開かれた。 山崎被告は被告人質問で、約１００人の貸金庫から計約１７億〜１８億円を盗んだと明かし、「銀行や金融業界全体への不安や不信感を招き、申し訳ない」と謝罪した。 山崎被告は２０２３年３月〜昨年１０月、支店長代理などを務めていた同行練馬支店と玉川支店の貸金庫から、顧客６人が預けた現金約６０００万円と金塊２９個（約３億３０００万円相当）などを盗んだとして起訴された。今年４月の初公判で起訴事実を認めた。 山崎被告はこの日の被告人質問で、２０年４月に江古田支店（現練馬支店）で貸金庫を管理する立場になり、ＦＸ（外国為替証拠金）取引や競馬で出した損失を穴埋めするために盗みを始めたと述べた。支店内で封筒に入れて管理されていた予備鍵を使ったといい、発覚を防ぐため、「のり付けが甘い袋（封筒）を選んだ」と語った。 貸金庫には出入りが記録されない営業時間外に入って盗みを重ね、被害者である顧客が来店すると「故障」とうそをついて中身の確認を断ったこともあったと説明。盗んだ金品は後日戻すつもりだったとし、貸金庫の中身を撮影して顧客の名前や金額をパソコンで管理していたとも述べた。 検察側から犯行動機を問われ、山崎被告は「夫を失いたくなかった」と語った。過去にＦＸ取引と競馬で多額の負債を抱え、夫に「次に同じ行為があれば離婚する」との誓約書を出していたが、「もっと小遣いがほしい」と考えてＦＸ取引などを再開。損失を抱えたものの、「夫や母親には言えず、相談する人がいなくなった」ため盗みに手を染めたと話した。夫とは事件発覚後に離婚している。 検察側の論告と弁護側の最終弁論は来月１８日に行われる。 事件を受け、三菱ＵＦＪ銀行は、予備鍵を本部で管理し、貸金庫室の防犯カメラを増設する再発防止策を公表している。
