お盆明けから猛暑日が急増し、熱中症警戒アラートが広い範囲で発表されています。 8月20日に東京消防庁管内において熱中症の疑いで緊急搬送された人は、14歳から100歳の男女70人に上っています。 いとう王子神谷内科外科クリニックの伊藤博道院長は、 「お盆休み明けから熱中症の患者がぐんと増えた。冷房が効いた部屋に慣れてしまったことで、暑熱順化がリセットされた可能性がある」と指摘しています。 【写真を見る】厳しい残暑『暑熱順化リセット』に注意!“熱中症後遺症”で歩行障害や集中力低下も【ひるおび】 「暑熱順化リセット」とは 「暑熱順化」は、体が暑さに慣れることを指します。 暑熱順化が進むと、体の熱を放出しやすく汗に含まれる塩分も少なくなるので、熱中症になりにくくなります。 伊藤院長によると、暑熱順化は暑いところから離れると3日ぐらいで鈍くなり、1週間ほどでリセットされてしまいます。取り戻すには、4〜5日程度の暑熱順化トレーニングが必要となります。 恵俊彰: お盆に暑さがいったん落ち着きましたよね。暑熱順化ってそんな簡単にリセットされちゃうものなんですか? 伊藤博道院長: 2、3日涼しい中で過ごしただけでもう鈍り始めて、1週間ほとんど涼しい中で過ごした場合には元の状態に戻ると言われています。 お盆が明けて汗をたくさんかいて暑熱順化を取り戻しつつある人もいると思いますが、十分にリカバリーできていない人もいますので、連日、熱中症の患者さんが急増しているという状況です。 「熱中症後遺症」にも注意 伊藤院長のクリニックには、熱中症だけでなく「熱中症後遺症」の患者も訪れています。 ≪熱中症後遺症の主な症状≫ ・集中力の低下・記憶障害・歩行障害・頭痛・吐き気やおう吐・肝臓や腎臓など臓器の障害・体温調節の不調 伊藤博道院長: 熱中症後遺症って教科書に載っているような病名でもないですし昔はあまり言われていなかったんですけど、去年ぐらいから言われるようになって今年は実際に患者さんも増えています。 重症度が�度以上の熱中症だと大体数%から10%ぐらいの高頻度で起こるとされていますが、実際には�度の中等症でもやや症状が重い患者さんや初期治療が遅くなった人に後遺症になる患者さんがいるのを感じています。 〈熱中症重症度の分類〉 【�度】現場での応急処置で対応できる軽症 症状:めまい・失神 筋肉痛・筋肉の硬直 手足のしびれ 気分の不快 【�度】病院への搬送を必要とする中等症 症状:頭痛 吐き気・おう吐 倦怠感・虚脱感 【�度】入院して集中治療の必要性のある重症 症状:�度の症状に加え 意識障害 けいれん・手足の運動障害 高体温 肝機能異常 腎機能異常 血液凝固障害 40代女性のケースではー 8月5日、飲食店の厨房の中での作業後、めまいやふらつき、おう吐、しびれの症状が出て病院で熱中症と診断され点滴を受けました。 しかし翌日以降も症状は改善されず、4日後「熱中症後遺症」と診断されました。 現在も倦怠感や関節痛などの症状に悩まされ、休職し療養を続けています。 特につらいのが、熱はないのに「頭の中が熱い」ことで、保冷剤を常にあてている状態だといいます。 伊藤博道院長: 体温を調節する機能は中枢神経の視床下部の辺りにあると言われていますが、この神経の回復には数週間かかると言われています。異常に暑く感じてしまったり、寒気を感じたり、汗がうまくかけなかったり、必要ないところで異常に汗をかいてしまったりというちぐはぐな体温調節がしばしば起こります。 伊藤院長によると、熱中症後遺症の症状が重い人は3か月〜半年位ずっと歩けないこともあり、高齢だと今までと同じように歩けるところまで戻らない人もいます。治療は簡単ではなく、特効薬もないといいます。 暑熱順化リセット 対策は? まずは熱中症にならないように、暑熱順化をもう一度行うことが大切です。 ▼ウォーキングなど軽い運動をする(30分間・週3〜4回程度) ▼室内でもできる大きい動作を行う(階段を登るなど) ▼ぬるめのお湯に10分程度つかる コメンテーター 眞鍋かをり: ずっと冷房の効いたところにいると汗をかかなくなるので、お風呂に浸かったりはするんですけど。サウナはどうですか? 伊藤博道院長: 暑熱順化のトレーニングとしてはいいと思います。ただ、サウナで時々冷たい水に飛び込む方がいますが、ヒートショックが起こる可能性があるので注意してください。 運動でも入浴でもサウナでも、汗をかくという意味ではいいと思います。 (ひるおび 2025年8月21日放送より)