統一教会本部での取材時に「撃たれて埋められる」かと思ったが…”NG記者”鈴木エイトが韓国で経験した”スリリングな取材”

オールドメディアはなぜ信用を失ったのか? 追及・糾弾一辺倒ではなく、ときに相手を思いやり、事件や騒動の当事者たちの胸の内を引き出す鈴木エイト——。取材者でありながら当事者となることへの責任をまっとうし、自らの使命と向き合う覚悟を日々忘れない。そんな鈴木エイトの作品は「私小説」ならぬ「私ノンフィクション」と評される。 さまざまな会見で「NG記者」となりながら真実を追い続ける著者が独自の取材手法をはじめて明かし、この時代の報道の問題点、ジャーナリズムのありかたを模索した『NG記者だから見えるもの』より一部抜粋・再編集して、本当に知るべき日本の深層をお届けする。 『予想外のきっかけで「中居正広・フジテレビ問題」の取材を受けるまでに…“NG記者”鈴木エイトが「コタツ記事」を肯定する意外なワケ』より続く。 撃たれて埋められるのかと思ったが… 2023年5月、統一教会が韓国本部で合同結婚式を含む大規模な式典を開いた際、現地取材を行った。韓国の加平郡清平には、教団が日本から収奪したお金が原資となっている豪華絢爛な施設が地域一帯に建っている。安倍元首相銃撃事件後、最初の大規模な教団イベントということで、日本からの多くのメディアが来ていた。 取材を行う私に、教団の韓国人スタッフ3人が張り付き、常につきまとってくる。公道上から教団の施設の外観を撮影することすら妨害し、どこまでもついてくるといった徹底マークぶりだ。建物にも肖像権があると難癖を付けてくる。 天宛宮という新たな施設を調査するためつきまといを受けながら、人気のない道を歩いていた時だ。教団スタッフがトランシーバーで何やら指示を受けている。聴こえるのは韓国語で答える職員の言葉のみ。 持参した自動翻訳機『ポケトーク』で録音したデータを確認すると「うてばいいんですね」と再生されるではないか。一瞬、ここで撃たれて埋められるのかと思ったが、画面を見ると「打てばいいんですね」と表示。 どうやら韓国語では、「打つ」には「懐柔する」「手なずける」といった意味合いがあるようだ。 相次ぐトラブル 仁川空港でも、合同結婚式に参加する信者への取材中にトラブルとなり、空港警察を呼ばれた。現地で一緒に行動したジャーナリストの横田一氏が空港警察のエリアで撮影したデータを消すよう詰問されている間に、取材データを日本のディレクターへ送信しデータ保存を図った。 教団の施設が立ち並ぶ龍平リゾートでの取材では、広大な敷地内に立ち並ぶ教団のホテルなどを撮影していたところ、教団の屈強な警備員に見付かって追い回された。地域一帯を統一教会が管轄していた上に、日本からの取材者を極端に警戒していたのだ。自治体が運営する循環バスに駆け込んのだが、そこにも「日本のジャーナリストはどこだ!」と追ってくる。バスの座席に身を沈め、息を潜めてやり過ごすといったスリリングさだ。 統一教会リゾート地から、命からがら脱出するという映画のような展開もあった。 悪質な誹謗中傷は数多く受けてきた。行うのは統一教会関係者、教団関係者、シンパ、安倍晋三元首相の狂信的な信奉者などである。 そのなかに、悪質なデマを吹聴する宗教関係者の男性がいる。 この人物からは十数年前に「統一教会のことを教えてください」と懇願され、レクチャーなどをしてきたのだが、歪んだ承認欲求があったのだろう。変節し、統一教会問題に取り組む側を非難して統一教会サイドに付くことでカルト側からの評価を得て悦に入っている。 私への誹謗中傷で動画の再生数を稼ごうとしている様は哀れでしかないが、相手にするだけ馬鹿らしいので放置している。他にも似たような手合いは少なからず存在するが、この手の人物には“無視”が最も応えるからだ。 後を絶たない挑発や誹謗中傷 また、ある新聞社の社会部の記者で保守系雑誌の編集委員を務める人物からも繰り返し挑発を受けている。統一教会側の言い分を信じ込んでシンパと化しており、読解力や洞察力のなさは記者として致命的なのだが、これも無視している。あらゆる意味で“小物”に過ぎるからだ。 私に関する怪文書も複数作られている。安倍元首相銃撃事件後、私がメディアに数多く出演するようになると「ハゲタカジャーナリスト 鈴木エイト」と題した怪文書が複数の国会議員事務所へ投函された。最新のものは、私が夜な夜なサングラスにマスク姿で男児が性的搾取されている秘密クラブへ通っているという“警察情報”が、ある弁護士名で書かれていた。この手の悪質な怪文書が国会議員事務所へ届いている。 執拗に繰り返し絡んでくる人物は複数存在しているのだが、このように粘着質な手合いにはネット上では応対しないようにしている。言葉尻を捉えて訴訟を起こしてくることもこれまでのケースからは想定されるからだ。相手に付け入る隙を与えず、なにより相手と同じレベルに立たないことでリスクは回避される。 私への法的威嚇、SLAPP訴訟を仕掛けてくる相手には、いくら挑発されても取り合わずに静観し、証拠を集めて法的措置を取るという対応が効果的だ。 悪質な誹謗中傷問題 私の人間性自体を貶すパターンのほか、最も多いのは安倍元首相銃撃事件の責任を私へ向けさせようとする「犬笛」である。酷いものでは、私が山上徹也被告へデマを吹き込んで安倍元首相を銃撃させたといった陰謀論まで散見される。 統一教会問題に限らず、勇気ある告発者へ誹謗中傷が向けられるケースが後を絶たない。ジャニー喜多川氏による性加害問題における告発者へのネット上の口撃などはその最たる例だ。 統一教会の元2世として教団を告発した小川さゆりさんも悪質な誹謗中傷を数多く受け、教団への解散命令への経緯とともに、自身へ向けられる悪意がさらに強くなるのではとの懸念から、表立った発信や発言を控えている。 被害者が声を挙げづらくなってしまうと何が起こるのか。誹謗中傷を行う側の声ばかりが大きくなり、歴史が修正されかねない。誤った言説のみが流布することで、デマがあたかも既成事実であるかのように認識されてしまうのだ。 報道やジャーナリズムは、そんな「歴史修正」を目論む勢力にも対峙していかねばならない。 『「号泣」の演出に加え「被害エピソード」まででっちあげ…統一教会が目論んだ「嫌がらせ目的の訴訟」の実態』へ続く。 【つづきを読む】「号泣」の演出に加え「被害エピソード」まででっちあげ…統一教会が目論んだ「嫌がらせ目的の訴訟」の実態

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