浜松—飯田:いまは選択肢に入らない「三遠南信道」 長野県飯田市と静岡県浜松市を結び、中央道と新東名高速を短絡する「三遠南信道」約100kmの建設が進んでいます。新たな部分開通も目前、難所とされていた山間部のトンネルもほぼ完成と伝えられますが、どのような状況なのか、現地を見てきました。 【壮大すぎるわ…】これが「三遠南信道」とその下道です(地図/写真) 今回は東名の浜松IC付近から飯田を目指しました。三遠南信道ができれば、浜松—飯田間は「2時間」で結ばれるとされています。となれば、部分開通している三遠南信道を利用しつつ、未開通部は現道をトレースするルートも時間短縮しただろうと思いきや、Google mapで調べると意外な結果に。 最速は、東名〜東海環状道〜中央道という「く」の字を描く大幅な迂回ルートで2時間20分強。もう一つは、途中まで三遠南信道を利用し、その後は国道151号を北上するルートで、こちらは2時間40分弱と出ました。前者はほぼ全線有料で、距離にして後者の50km増しですが、それでも軍配が上がるということです。 そして、三遠南信道沿い(主に国道151・152号)をトレースして長野県へ向かうコースは、候補にすら上がってきません。それほど“険しい道”なのです。 新東名(浜松いなさJCT)−鳳来峡IC:“その先”が2025年度開通 新東名の浜松いなさJCTに接続する三遠南信道は、そこから13.4km北の鳳来峡IC(愛知県新城市)までが開通しています。この区間は主にトンネルで山を貫く直線的な線形で、確かに“ワープ”の感があります。 なお、三遠南信道は全線で無料ですが、暫定2車線での整備です。新設区間は路肩もそこまで広いわけではなく、対面通行が続きます。 鳳来峡ICから飯田方面を目指す場合は、国道151号を北上するのがベストです。三遠南信道で次の東栄IC(愛知県東栄町)までの7.1kmは2025年度に開通予定で、国道151号は東栄から分かれるので、鳳来峡IC−東栄IC間ができれば飯田方面の時短にもつながるでしょう。 東栄IC−佐久間川合IC—未開通区間:ここから激ヤバ!水窪までの“酷道” 東栄ICから先、北東へ向かう三遠南信道は、佐久間川合IC(浜松市)までの6.9kmが開通済です。今回は三遠南信道沿いをトレースするためこちらを目指します。 水窪佐久間道路と青崩峠道路のあいだは国道152号を拡幅する現道活用区間。浜松市が事業を進めている(乗りものニュース編集部撮影) 佐久間川合ICを下りてからが、本当の険しい区間です。長野方面を目指すには、佐久間ダム・天竜川沿いに北上する静岡・愛知・長野県道1号、もしくは国道473号で天竜川を下った後に水窪(みさくぼ)川沿いに水窪を目指す国道152号の主に2ルートがありますが、前者はいわゆる“険道”。しかも2024年から崩落のため通行止めとなっています。 後者の国道473号・152号沿いが三遠南信道をトレースするルートでもあるのですが、こちらも「これ国道!?」と同乗者が漏らすほど、狭く曲がりくねった道が続きます。 並行して走るJR飯田線は、佐久間から水窪川沿いの相月までをトンネルで真っすぐ貫いています。この区間は佐久間ダムの建設に伴い、1955(昭和30年)に天竜川沿いから付け替えられた区間ですが、国道152号はは川沿いに大きく迂回するため、70年を経てもなお、飯田線のほうが圧倒的に早い状況です。 その状況も、三遠南信道の整備によって将来変化しそうです。佐久間川合ICから水窪駅の北側(水窪IC)まで、飯田線に並行して「水窪佐久間道路」14.0kmを建設する事業が進んでおり、2022年から用地買収に着手しています。ただし、中央構造線を通過するため難工事が予想されています。 そして国道152号は水窪から北、県境の「青崩峠道路」区間までの7.3kmについては「現道改良区間」として浜松市が拡幅を進めています。三遠南信道が本領を発揮するのは、新東名からここまでつながり、“酷道”を解消してこそ、といえるかもしれません。(つづく)