美しい海と砂浜は、それだけで気分爽快になり開放的な気分にさせてくれる。レジャーとしてビーチを訪れることはけっこうなことだが、開放的になりすぎて、平穏な市民の生活を脅かすような行動をするのは厳に慎むべきだろう。ライターの宮添優氏が、同好の士を見つけやすくなった人たちの一部が暴走することで発生する地域住民の困惑と迷惑についてレポートする。 【写真】ドローンで盗撮しようとする悪趣味な人たちも出現(イメージ) * * * 7月上旬、沖縄南東部のビーチで20代男性が公然わいせつの疑いで逮捕され、相手をした50代男性も書類送検された。現場付近は、ネット掲示板などで同好の者が関係を持つことを目的に出会う「ハッテン場」としても有名だったとも言われている。が、実際に刑事事件に問われたのは珍しいのでは、と似たようなケースで悩まされている関東在住の男性は言う。 「ニュース見たよ、なんでこっちは放置なのよって思っちゃう」 南関東某市の飲食店経営者(60代)は、自宅兼店舗の裏手に位置する小さな砂浜がいつの間にか「ハッテン場」になったと嘆き、そこに集う男性たちの存在に頭を悩ませてきた。 「沖縄の人たちと同じだよ。ネットの掲示板でも有名らしくて、何年か前から、男性同士で雑木林を分け行って、砂浜の方に行くのをよく見るようになった。近くの別の飲食店の客が、偶然そっち(砂浜の方)に入っちゃって、びっくりして警察沙汰になったことが何度もある。本当に困ってんの、こっちは。でも、逮捕されたとか聞かないし、最近だって来てんだから」(飲食店経営者) 実は、似たようなトラブルは全国あちこちで起きていて、筆者もいくつかの「事案」を取材し、「現場」を訪ねたこともあった。冒頭で触れた沖縄の「現場」は、人気ビーチのすぐそばの有名観光地で、地元警察や役所への通報が相次いでいたこともあり、ついに当局も動かざるを得なくなったというのが実情ではないのか。だが、南関東某市の現場は、市街地からかなり遠く、さらに生い茂った雑木林を抜けた場所に位置する。また、全国のどこの”現場”でもそうだが、コトがコトだけに、行政は司法当局もちろんのこと、迷惑をしている地元住人もなかなか声を上げにくく、問題が表沙汰になりにくい傾向がある。 だからこそ、なのだろうか。センシティブなネタを面白がる、悪趣味な人たちが合流し、事態の悪化に拍車がかかり始めているという。飲食店経営者が続ける。 「少し前、珍しくパトカーが何台も来て大騒ぎになったから、ついに誰か逮捕されたか、なんて思って見に行ったら、砂浜にドローンが飛んできたから、砂浜にいた男性が”通報”したっていうのよ。盗撮されたと騒いでいたわけ。もう勘弁してほしいよ」(飲食店経営者) そうした悪趣味な「盗撮映像」がネットへ投稿され、性的少数者を攻撃したり、揶揄する材料になることもあるという。もちろん、差別的な言動は厳に慎まなければならないが、そもそも一部の当事者たちもまた、SNSを使って非常識行為をエスカレートさせている。 例えば、XやInstagramなど、子供でも閲覧できるSNS上に、前出のビーチのような場所で撮影された、いかがわしい写真をアップしているアカウントがいくつも確認できる。もちろん多くのSNSではそういった投稿は禁止事項になっているのだが、運営側の管理の目をかいくぐって投稿しているのだ。中には、場所が容易に特定できるようなわいせつな映像や写真も複数あり、それに対して別のアカウントが絶賛の声を寄せたり、実際に会わないかと交渉までしている始末である。 SNSにより、”交流”が容易になったことで、日常生活を送っている人たちのすぐそばで、遠慮無く見せつけるような結果になっている。前出の飲食店経営者はこう嘆くのだった。 「いかがわしい行為を店の近くでやられたことで、お客さんも減ってしまった。とにかくやめてほしい。ただそれだけなんだよ」 その地で暮らす人たちの生活を無視し、SNS投稿して世界中に拡散させるようなことは許容されない。火気厳禁の河川敷や海岸でBBQをして騒ぐだけでなくゴミを放置して帰る人たちや、映える写真を撮りたいからと立ち入り禁止地域に踏み入り樹木を勝手に切る自称インフルエンサーなどと同様の身勝手なことを地域住民に押しつけているのだと考えれば、歓迎されないことだと容易に分かるだろう。同じことが好きな仲間を見つけやすいSNSは便利な道具だが、何をしてもゆるされる万能な立場を与えてくれるわけではない。スマホの画面から見聞きするものだけが世界のすべてではないと、改めて思い起こしてほしい。