「年収103万円の壁」ってナニ? そもそも「103万円の壁」とは年収が103万円を超えると、所得税が発生するというものです。 【写真を見る】「103万円の壁」ってナニ?専門家は『配偶者控除』の周知が不十分と指摘 国民民主の玉木代表が「最重点」とする問題をモデルケースで解説 キャスター「扶養に入っている人が働く時は、所得税が引かれて手取りが減らないよう『働き控え』をするという話も耳にしますね」 この年収の壁が、年末を控えた今、働き手にも雇用側にも立ちはだかっています。 議員が揃って訴える「年収の壁」問題 10月に行われた衆議院議員選挙、熊本1区で当選した自民党の木原稔(きはら みのる)議員が最後に訴えていたのが「年収の壁」の問題です。 自民党 木原稔衆議院議員「年収が106万円とか130万円を超えてしまうと、保険の問題なんですけど、かえって手取りが少なくなる。こんなおかしな制度は変えないといけない」 そして12日、103万円の壁の見直しなどをめぐり自民党、公明党の与党と国民民主党の本格的な協議が始まりました。 国民民主党 玉木雄一郎代表「最も期待の高い103万円の基礎控除等の引き上げには最重点の力点を置いて取り組みたい」 「壁があるからシフトに入りづらい」 アルバイトやパートとして働く人たちは、見直しの動きが進む「年収の壁」について…。 大学3年生 アルバイト「壁があるから(アルバイトの)シフトが制限されるというか入りづらい」 大学3年生 アルバイト「時給も上がってしまったので、超えないように調整をするつもり」 大学2年生 アルバイト「私は超えないんですけど、友達が『103万超える』と周りで話しています。親から超えたら(税金が)高くなるからやめてとは言われます」 30代 パート「年末調整前にシフトが入れないという形になるとか、職場でもパートさんたちで話し合いながらシフトを組まなければいけないから結構大変だなと」 年収の壁があることで、「働きにくさ」を口にする人がいました。 クリスマス迫る繁忙期にシフト調整「申し訳ない」 熊本市東区にある洋菓子店。旬の果物を使ったケーキや焼き菓子を求めて多くの客が来店します。焼き菓子を作っているパート歴5年の高島実季(たかしま みき)さんも働き控えをしなければいけない1人です。 パート歴5年 高島実季さん「夫から103万円は超えないようにと言われているので、時間がきたらすぐ定時で、残業とかはできないので、定時であがるという感じ」 クリスマスが迫る11月から12月にかけては、1年で最も忙しい時期のひとつですが、思うように働けず、もどかしさを感じています。 高島さん「ギリギリで働いている状態です。でも、厨房は忙しいので、休みづらい。ごめんなさいと思いながらやっています」 雇用する側にとっても痛手です。 本来喜ばしい昇給に「不思議な葛藤」 この洋菓子店は、熊本県内3つの店舗で10人以上が、シフトの調整をしなければいけないと言います。 アントルメ菓樹 柴田悠貴代表「調整をしなければいけなくなると、もっと人を雇わなければいけなくなる。でも、採用といってもそんなに人がたくさん来る時代でもないですし、すごく難しい」 また、最低賃金が上がると共に従業員の時給も上がっていて、これまでより早く103万円に達するようになったため、さらにシフト調整が難しくなっています。 柴田代表「(今年)賃金も上げていますし、それ以上の賃金アップは評価として上げていきたい。上げてあげたいけど、もっとシフトを減らさないといけなくなるので、不思議な葛藤」 本来であれば喜ばしい賃金アップが手放しでは歓迎できないのです。 「配偶者控除制度」が広く知られていない 租税法が専門の熊本大学の大藏将史(おおくら まさし)准教授は「配偶者に関してはすでに103万円から150万円まで控除の壁が引き上げられているものの、制度の周知が不十分なため年収103万円までで働くのを控える人が多いのではないか」と指摘します。 熊本大学大学院 大藏将史准教授「やはりこの(103万円という)金額が長年変わっていなかった。それから社会保険料の106万円の壁。とりあえず103万円にしておけば大丈夫というような意識が広がっている点はあるのかなと」 モデルケースで見る「年収103万円の壁」 キャスター「現場の声を聞いてみると、103万円の壁が全く時代に合っていない気がしますね」 (スタジオ解説)所得税に関わる「103万円の壁」を超えると、実際にどうなるのか、モデルケースで見ていきます。 夫婦と20歳の子ども1人の3人家族で、夫の年収が500万円の場合をモデルに大藏准教授が試算したものです。 妻の収入・子の収入が103万円を超えるかどうか、それぞれの場合に分けて「1. 共に103万円を超えない場合」と比較していきます。 ■2. 妻の年収が104万円の場合 妻に対し所得税が課税されるので、住民税の増加分を含め、1の場合と比べ1500円ほど負担が増えます。この時、妻は扶養からは外れません。 ■3. 20歳の子どもが年収104万円の場合 子どもに所得税か課税されるだけでなく、子どもが扶養から外れてしまいます。そのため、夫の収入からの「扶養控除」がなくなり、夫の所得税・住民税が増加。負担増が約8万9200円と、一気に跳ね上がります。 その他のポイントですが、103万円を超えると夫の会社の家族手当の対象外になる可能性があります。 キャスター「103万円の壁と合わせて106万円、130万円の壁も聞きますよね」 働く場所の従業員の数で変わりますが、収入が106万円や130万円を超えた場合に、所得税などとは別に社会保険料がかかってくるため、さらに負担額が増える。その社会保険の負担の壁です。 これらの壁が今後どのように変わっていくのか、注目されます。