なぜ世界はアフリカに“熱視線”?存在感増す中国に対し日本は「誠実」が勝機 TICAD開催【Nスタ解説】

20日から横浜で、アフリカの開発をテーマにした国際会議「TICAD」が開かれます。 世界が競い合いをするほど熱い視線がそそがれるアフリカ。その注目されるワケを掘り下げます。 【写真で見る】初開催のTICAD(1993年)にて英語で演説 当時の日本の首相は… 「TICAD」日本で9回目の開催 過去最大規模の“サイドイベント” 高柳光希キャスター: TICAD=アフリカ開発会議とは、日本とアフリカ諸国によるアフリカ開発をテーマにした国際会議のことです。1993年に東京で初開催され、2016年までは5年に一度でしたが、2016年以降は3年に一度、日本とアフリカで交互に開催しています。 20日から第9回目となるTICADが、パシフィコ横浜で3日間の日程で開催されます。テーマは、“アフリカと共に、革新的な解決策を共創する”です。約50か国の首脳らがアフリカから日本に来日するということです。 TICADの会議では、具体的に何を話すのでしょうか? TBS報道局政治部 大崎雅基 記者: TICADは今回、3日間の日程で行われますが、日本とアフリカの各国が一堂に集う全体会合が3日間で数回あります。 その合間に、バイ会談(バイラテラル会談)という1対1の2国間会談もあります。その中で、個別の協力や支援について日本と協議していきます。アフリカの首脳陣からは、「全体会合よりも、バイ会談の方を楽しみにして来ている」という声も聞かれます。 今回のTICADの特徴は、同時開催で市民社会や企業が集まる“サイドイベント”というのが多く開かれています。これまでも開かれていましたが、今回は約300のブース展示などがあり、過去最大規模だということです。この中で、日本企業やアフリカ企業のマッチングというものも行われています。 井上貴博キャスター: 政治だけではなく、企業や市民も行けるということなんですね。 TBS報道局政治部 大崎 記者: 政府同士の協力には限界がありますので、企業や市民も積極的に関わってほしいということを政府も考えています。 高柳キャスター: 今回のTICADは、外務省としても大きな位置づけをしていますよね。 TBS報道局政治部 大崎 記者: 外務省としては、“今年一番のビッグイベント”であり、外務省幹部は「一年半前から準備。日本が主導の大型国際会議なので、力が入っている」と話をしています。 世界中で国際会議があり、日本がメンバーとして海外に行って参加するということはよくありますが、日本が始めてから30年以上、主導して現在も定期的に開催をしています。 この規模の国際会議というのは、なかなかありません。そういった意味でも、日本政府は今回のTICADにかなり力を入れていると言えると思います。 世界がアフリカに注目する3つの理由 高柳キャスター: なぜ日本のみならず世界がアフリカに注目をしているのか、ポイントを大きく3つに分けました。 ▼市場が超巨大であること、▼国際社会での存在感、▼資源が豊富にあること。それぞれについてお願いします。 TBS報道局政治部 大崎 記者: ▼超巨大市場 2050年には、アフリカ大陸全体の人口が25億人になると言われており、世界人口の4人に1人がアフリカ出身になると言われています。 また、現在のアフリカの平均年齢は19歳です。日本は約50歳なので、これからどんどん成長して育っていく、超巨大市場。アフリカは「最後のフロンティア」と言われていますが、今後の成長のポテンシャルは高いと思われます。 ▼国際社会での存在感 アフリカは54か国は、国連加盟国数の4分の1を占めています。例えば、国連総会で何かを決めるとき、この4分の1の票を味方につけることができれば、国際社会の意思決定の場で有利になります。“味方作り”の面でも重要だと言えます。 ▼資源が豊富 石油、天然ガス、金、ダイヤモンドなどの多くの資源があります。また、スマートフォンで使用しているレアメタルなども、一部アフリカから輸入しているため、重要な地域と言えます。 日本が存在感を示すには「誠実なビジネスパートナーになるべき」 高柳キャスター: 中国がアフリカに対しても存在感を増しているなか、外務省幹部は「物量とスピードでは中国に太刀打ちできない」と話しています。現地のケニア人記者は、「中国製品の普及で、日本よりも圧倒的に認知されている」とも話していました。 TBS報道局政治部 大崎 記者: 外務省の方がもう1つ言っていたのが、「ノーコンディショナリティ」でした。中国は条件なしで融資をしているので、日本のプレゼンス(存在感)は弱くなってしまうということです。 前の仕事の関係でケニアに駐在していたことがありますが、街を見回すと中国が建設したスタジアムがあったほか、電化製品などもほとんど中国製でした。鉄道や道路などのインフラも中国のものが出回っているなかで、日本のプレゼンスを示すのはかなり難しい状況にあります。 高柳キャスター: では、日本が存在感を示すにはどうすればいいのでしょうか? TBS報道局政治部 大崎 記者: 私が考える一番重要なポイントは、「日本は誠実なビジネスパートナーになるべきだ」というところです。「誠実」というところが日本の強みでもあり、弱みでもあると思います。 日本の交渉は、すごく慎重に行うのでプロジェクトや支援をすぐに実行できません。ただその分、現地に入り、一緒に作って、双方にメリットのあるものを作り上げるといった丁寧な仕事は日本の得意分野です。こういった分野で、存在感を示していけたらなと思っております。 井上キャスター: 中国が力を入れて資金力に物を言わせて行うといった一方で、債務の罠のようなリスクはある。日本は誠実さ、信頼感などを高めてパッケージでどう売り込んでいけるのか。 外交はすぐ芽が出るものではないので、長く見ていかないといけないというのもあるわけですよね。 東京大学 斎藤幸平 准教授: 中国は欧米が自国ファーストになる中で、逆にアフリカに積極的に投資をしています。それが「児童労働」や「自然資源」、「過剰開発」などの問題に繋がっているので、それとは違った形でソフト分野に注力していくというのは、日本がアフリカと対等に築いていくというヒントになるのではないかと思います。 ========== <プロフィール> 大崎雅基 TBS報道局政治部 外務省キャップ 前職はNGO職員 ケニア駐在経験も 斎藤幸平 東京大学准教授 専門は経済思想・社会思想 著書『人新世の「資本論」』50万部突破

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