今年の夏は全国的にすさまじい猛暑となっており、夏の甲子園大会は熱中症対策のために様々な工夫をしている。開会式の開始時刻を16時にし、その日は一試合のみ。さらに「二部制」を導入して、第2試合と第3試合の間にインターバルを設けた。第3試合は16時15分開始にし、一日で最も暑い時間帯を避けたスケジュールを組んだ。【中川淳一郎/ネットニュース編集者】 【熱中症対策】16時スタートの開会式の最中、水分補給を欠かさない高校球児たちの姿 移動の問題はあるけれど それでも暑さの影響か、試合中に足をつる選手も出るなど、もはや屋外の球場では、根本的な危険回避は困難と言わざるを得ない。甲子園球場への球児の憧れや長きにわたる伝統はあるだろうが、そろそろ夏の大会はドーム球場で開催してもいいのではなかろうか。あるいは、夕方から2会場で2試合、というのも手である。興行主である朝日新聞社にとっては甲子園で開催することにうまみを感じているだろうし、やはり高校野球の聖地でもある。であれば、完全に甲子園を去るのではなく、別のあり様を議論してもよかろう。 酷暑の中でやるよりは もちろん、そう簡単に事が進むワケがないことは分かっているが、高校野球を見ていると「なんでこんな一年で一番暑い時期に敢えてやるの?」と思ってしまうのである。元々高校野球の選手は大多数が五分刈りという風習があったが、それも今や変わった。「高校野球は夏の昼間・屋外でやるものだ」という伝統も変わっていいのでは。 まずはドーム球場での開催を検討してはどうか。ドームの利点としてはエアコンが効いていて快適なのが一つ。もう一つは、日程が組みやすい点だ。毎年、開催期間は大雨が降ったり台風が上陸したりすることもあるわけで、そうなると試合数等を調整しなくてはいけなくなる。その日に最高のコンディションを作ろうと準備していた選手だけでなく、遠くから訪れる応援団も足止めを食らったり延泊をせざるを得なくなったりするなど、不利益が発生する。 ドーム球場を利用するとして、候補はどこになるか。立地で言えば、甲子園と同じく日本の中央に位置する京セラドームがもっとも便利だろう。だが、関西圏最大の屋内施設なだけに、オリックスと阪神の試合だけでなく、人気アーティストのライブやその他様々なドル箱イベントが行われる。となれば、移動の問題はありつつも、札幌の大和ハウス プレミストドーム(旧・札幌ドーム)での開催はいかがだろうか。 伝統の維持も可能 Jリーグの北海道コンサドーレ札幌の本拠地ではあるものの、野球ほど使用頻度は高くない。今年の甲子園大会開催期間中の他のイベントを見ると、コンサドーレの試合が2試合ある他は、サッカー教室、七大学(北海道大学含む旧七帝大)の硬式野球、七人制ラグビー、子ども・若者の夢を応援するイベントなどだ。櫻坂46のライブや阪神・オリックスの試合が開催される京セラドームと比べると若干地味である。 当然先に予約した者に権利があるわけだが、数年後の予定はさすがに埋まっていないだろうから、高野連が決断した場合、運営者の株式会社札幌ドームと協議すれば使用が可能になるかもしれない。北海道日本ハムファイターズがエスコンフィールドへ移転したこともあり、同社としては大規模イベントが欲しいところだろう。利用案内を見ると大規模イベントの場合、1日あたりの利用料は税込935万円。さらに「入場者が2万人を超える場合は、1人につき467円(税込)を加算させていただきます。」の記述がある。 高校野球であれば15日間にわたって収入が見込めるわけで、同社としてもありがたい上客になるのでは。ただ、全日程を札幌でやるのではなく、準決勝と決勝のみ、夕方から甲子園で行う。こうすれば伝統の維持はできたといえるのでは。 2つの球場で実施する案だが、16:30〜と19:00〜の2試合を毎日行う。これならば屋外でも大丈夫ということで、球場の選定に入るが、ここはNPB(日本プロ野球機構)とスケジュールを詰める必要があるだろう。 AブロックとBブロックに分かれ、Aブロックは横浜スタジアムか神宮球場で行う。どちらか空いている球場で高校野球を行うのである。Bブロックは甲子園球場とほっともっとフィールド神戸に調整してもらう。決勝はもちろん甲子園で行う。高校野球を全試合見たい、という趣味を持つ人には申し訳ないものの、ライトなファンからすれば、目当ての試合が見られればいいからこれでいい。 なお、春のセンバツ大会は暑くないため、全試合甲子園でやればいいのでは。 ネットニュース編集者・中川淳一郎 デイリー新潮編集部