軍事政権下、夫の死の真相を追及するサバイバー…フェルナンダ・トーレス「とても日本人的とも言える」

 ブラジル初の米アカデミー賞国際長編映画賞に輝いた「アイム・スティル・ヒア」(ウォルター・サレス監督、公開中)は、軍事政権下を生きた実在の弁護士エウニセ・パイヴァの物語だ。  エウニセ役のフェルナンダ・トーレスは「驚くべき偉大な女性で時代のサバイバー。とても日本人的とも言える」と語った。  1970年代、リオデジャネイロで家族とともに暮らす元国会議員のルーベンス・パイヴァが軍に連行される。妻エウニセは夫の消息を追うが、自身も拘束される。  原作は息子で作家のマルセロ・ルーベンス・パイヴァの回想録。母国では64〜85年の軍事独裁政権時代に反体制派の逮捕、拷問などが組織的に行われた。エウニセは釈放されたが、夫は後に拷問死が判明する。  よく知られた悲劇だが、「本を通じて、多くのブラジルの人たちがエウニセの存在を再発見した」。原作には、家庭や社会で彼女が果たした大きな役割について詳細に描かれていた。「いつもほほえんでいる。規律が高く、控えめで、礼儀正しい」。トーレスが「日本的」と表現する気質にも心ひかれたと言う。  夫の強制失踪後、エウニセは弁護士に転身。夫の死の真相を追及するとともに、先住民の権利を守る活動家としても闘った。「私とウォルター(監督)が決めたのは、めそめそと打ちひしがれるようなメロドラマにしないということ。エウニセは悲劇の後、国家の暴力を経験したのは自分だけではないと気づく。正しい闘いを求め、知性で時代を動かしていった」  サレス監督とは95年から仕事をしてきた。その洗練された演出を「印象派の画家」にたとえる。本作も俳優が不安になるほど、シンプルな方法で撮影されたという。「完成作を見て驚いたのは、私たちが演技をしているように見えないこと。彼らしいタッチで、まれなことが実現されている。無駄をそぎ落とし、必要なものだけを選ぶという境地に達した」と評する。  ともに俳優の両親の下に生まれ、10代から俳優として活躍。脚本家、作家としても知られる。国を代表する俳優の実母フェルナンダ・モンテネグロが、老年期のエウニセを演じている。「異文化の人たちと、エウニセの物語を共有できることをうれしく思う。70年代のリオデジャネイロで育った自分自身を投影した感覚があった」と、本作への特別な思い入れを語った。

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