5本とも低空飛行 フジテレビ系で放送されている7月期の連続ドラマの成績が芳しくない。ラインナップされた5本とも視聴率は低空飛行が続いており、「全滅」という声すら上がっている。常連のベテラン俳優が脇をしっかり固めているものの、主演クラスがやや軽めという指摘もある。 *** 【写真】「すでに楽しみ」の声も…夏から秋に控える、フジテレビ製作の注目映画 この夏のフジのGP帯連ドラと主な出演者は以下の通り。 【月曜午後9時】「明日はもっと、いい日になる」 主演・福原遥(26)、林遣都(34)、生田絵梨花(28)、風間俊介(42)、柳葉敏郎(64) 【月曜午後10時】「僕達はまだその星の校則を知らない」(関西テレビ制作) 主演・磯村勇斗(32)、堀田真由(27)、稲垣吾郎(51) 【火曜午後9時】「スティンガース 警視庁おとり捜査検証室」 主演・森川葵(30)、藤井流星(WEST.=31)、本郷奏多(34)、志田彩良(26)、井内悠陽(21)、杉本哲太(60)、玉山鉄二(45) 【水曜午後10時】「最後の鑑定人」 主演・藤木直人(53)、白石麻衣(32)、松雪泰子(52) 【木曜午後10時】「愛の、がっこう。」 主演・木村文乃(37)、ラウール(Snow Man=22)、田中みな実(38)、沢村一樹(58)、吉瀬美智子(50)、りょう(52) 年間を通して連ドラをウォッチングしている放送ライターがこう話す。 フジテレビ 「月9の『明日はもっと、いい日になる』は、神奈川県警強行犯係から児童相談所へ出向させられた刑事(福原遥)が、児童福祉の現場で子どもたちや親と向き合うハートフルな成長ストーリー。初回の視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区・以下同)は世帯7・1%、個人4・1%でしたが、8月11日放送の第6話は世帯4・6%、個人2・7%まで下がってしまいました。 月10の『僕達はまだその星の校則を知らない』は、不登校の過去を持つ弁護士(磯村勇斗)が、スクールロイヤーとして派遣された高校で世界を広げていくドラマ。こちらも初回は世帯4・6%、個人2・3%という低空発進で、その後も視聴率は伸び悩んでいます」 前回は好調だった月9 月9の場合、前期に放送された小泉今日子(59)&中井貴一(63)主演の「続・続・最後から二番目の恋」の最終回が世帯8・2%、個人4・8%と好調だったため、その跡を継いだ「明日〜」の下落基調が目立つ格好に。 「『二番目の恋』はシーズン1やシーズン2も見ていた往年の視聴者から支持され、小泉と中井という大物キャストの再々タッグが話題性を高めました。一方、『明日は〜』に主演する福原遥は2022年度下期の朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK)のヒロインに抜擢され、現在放送中の『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(同前)で大河ドラマ初出演を果たした有望株。ですが、『明日は〜』の福原は“元刑事に見えない”と離脱者が続出している模様です」(前出の放送ライター) 警察のおとり捜査を描いた「スティンガース」、科学の力で事件を解決する「最後の鑑定人」、Snow Manのラウールが歌舞伎町のホスト役で出演する「愛の、がっこう。」も話題は先行したが、それぞれの初回視聴率は世帯5・0%と個人2・8%、世帯5・0%と個人2・5%、世帯4・7%と個人2・6%で厳しい数字だ。 特に「愛の、がっこう。」はフジの木曜劇場枠史上、最低の視聴率で発進という不名誉な結果に。とはいえ、今夏のフジのドラマについては業界内で意外と評価が高いのだ。 「『明日は〜』は児童虐待や保護者のネグレクトなどを題材にしながらも穏やかな展開ですし、『僕達は〜』も登校拒否や理不尽な校則に対する問題提起がありながら磯村勇斗と堀田真由のバディ感が爽やか。両作とも子どもと大人の関係性を問う社会性にあふれた意欲作で、脚本がよく練られていてじっくり見ることができます。 また、『最後の鑑定人』は謎解きの面白さで引き込まれますし、ホストを主要キャラにするのはいかがなものかと物議を醸した『愛の、がっこう。』も“禁断の愛”が佳境に入り切なくなります。中でも私が注目するのは『スティンガース』で、GP帯の連続ドラマ初主演となった森川葵の弾けっぷりがいいですね」(テレビ誌編集者) 重要視されない「世帯視聴率」 森川といえば、金魚すくい、けん玉、クレーンゲーム、石投げ水切り、ロックバランシング(石積み)、ゴム銃、手書き看板、ダイス・スタッキングなど、さまざまな達人技を短期間で習得する驚異的な能力で知られており、「ワイルドスピード森川」と呼ばれるほど。プラスチック製のカップを決められた型に積み上げたり崩したりしてスピードを競うスポーツ・スタッキングでは日本新記録を樹立し、日本代表としてアジア大会への出場経験もある。「スティンガース」では米国FBI仕込みのおとり捜査で難事件を次々と解決する頭脳明晰な刑事を熱演しており、劇中で見せる七変化の衣装も森川らしいと話題だ。 「『スティンガース』は旧ジャニーズ事務所のアイドルグループ・WEST.の藤井流星の振り切れた怪演もスカッとしますね。事務所の先輩だった 生田斗真(40)の主演映画『土竜の唄』シリーズを彷彿させるほどエネルギッシュで、しかも森川との掛け合いが爆笑モノです。8月5日放送の第3話で描かれた仁井谷グループ 巨額投資詐欺事件は、昨年、Netflixで配信され大ヒットした連続ドラマ『地面師たち』のようなハラハラドキドキが続きました」(前出のテレビ誌編集者) 中居正広氏による性加害問題でどん底に落ちたフジだったが、株主総会を無事に切り抜け、スポンサーも広告出稿を再開し始めている。そんな矢先にドラマの視聴率が盛り上がらないことには悔しさもあるだろう。 「フジに限ったことではありませんが、若者のテレビ離れで視聴者は高齢層というのが現状です。若者層はスマホがあればTVerなど見逃し配信をいつでも見られる。実際、8月12日現在のTVerのドラマランキングを見ると、視聴率で独走状態にある日曜劇場『19番目のカルテ』(TBS系)を押さえて『明日は〜』が2位、『僕達は〜』が5位、『愛の、がっこう。』は9位と健闘しています」(民放キー局関係者) 確かに、昨今のテレビ業界で世帯視聴率は以前ほど重要視されていないのが事実である。 「視聴率はCM収入を得るための最大の指標ですが、昨今は配信にも注力しないとテレビ局に未来はありません。5年後には配信収入が放送収入の半分近くになるという予測もあります。若年視聴者層を意識したドラマ制作を進めるフジの戦略が吉と出るか凶と出るか、注視する必要があります」(同前) ドラマの制作能力に関しては定評のあるフジテレビ。配信シフトで巻き返しとなるのか。 デイリー新潮編集部