相続した実家、放置していませんか? 固定資産税の優遇ナシ、不動産価値下落で負の遺産のおそれ 専門家が提唱する「親世代の家じまい」

 5人に1人が75歳以上の高齢者となった2025年の日本。相続が多くの人にとって他人事ではない中で、税金・修繕費などのコストがかかり“負の遺産”となることもあるのが、実家をはじめとする不動産です。 これから多くの人が直面する”実家じまい”。今から考えておくべきこととは?横浜市立大学・齊藤広子教授に聞きました。 世は「大相続時代」突入  2025年は、1947年〜49年生まれの「団塊の世代」全員が75歳以上になります。国民の5人に1人が後期高齢者となっていて、相続が近づいていく、いわゆる『大相続時代』に突入するということです。  相続する財産の構成比(2023年・国税庁)は以下の通り、相続する財産一番多いのが不動産で、高齢者の約8割がいま持ち家で暮らしているということが要因です。 ■不動産(土地・家屋) 36.5% ■現金・預貯金 31.5% ■有価証券 17.1% ■その他 11.4%  しかし、不動産を相続したとしても実際は、▽実家近くに住んでいない、▽すでに家を持っている、▽もっと便利なところに住みたいなど、さまざまな理由から、相続しても住まないケースが増えているということです。  さらに相続人の間で「残したい」「早く処分したい」と意見が分かれて結論が出ず、放置されてしまうパターンもあります。 「なんとなく空き屋」が増加する  総務省の「空き家の数の推移」を見てみると、高齢化や相続などを背景に右肩上がりに増加していて、2023年は過去最多の900万戸が空き家になっています  このデータには、別荘やいわゆるセカンドハウスと言われるような住宅も含まれていますが、基本的には1年以上誰も住んでいない状態のことを指します。  横浜市立大学の齊藤広子教授は、売らず・貸さず・活用もしない、「何となく空き屋」が増加していると指摘。  例えば、荷物が残ったまま行くのは年に数回、荷物や思い出が処分の障壁になっている。そして、どうするか決まらず管理せずに家だけが劣化していき、最終的には使えなくなってしまう。こういった空き屋を、『なんとなく空き家』と呼んでいて、いま増えてきているということです。 犯罪の温床に?空き屋の「リスク」  空き家には「リスク」があるそうです、例えば■防犯や景観の悪化、■雑草・害虫など発生、■不法投棄・犯罪の拠点化などです。  空き屋を適切に管理しないと、近隣住民は不安になり、不動産価値が下落する可能性もあります。実際にイギリスでは、空き家の近隣の不動産価値が2割減ったケースもあります。 「特定空き屋」指定で税の優遇がなくなる  土地には固定資産税がかかります。上に何も建っていない更地の場合は、固定資産税の優遇などはありません。  ですが、例えばその土地の上に住宅(200平方メートル以下の部分)があれば、固定資産税は6分の1に減額されます  しかしその住宅が「特定空き家(放置すると倒壊等のおそれ)」や、特定空き屋に今後なる可能性がある「管理不全空き屋(窓の破損など管理が不十分)」に指定されてしまうと固定資産税の優遇はありません。 ふるさと納税の返礼品で「空き屋管理サービス」!?  既に空き家を所有してる人はどう対処すれば良いのでしょうか? ■ふるさと納税の返礼品で空き屋の管理サービスをする自治体もあります。例えば大阪・豊中市、大東市、京都・福知山市などで、家の状態の確認と報告や、部屋の換気や清掃などを行います ■自治体や民間の「空き屋バンク」を活用する方法もあります 専門家「“実家じまい”ではなく“家じまい”を」  齊藤教授は「“実家じまい”ではなく“家じまい”を」と話します。高齢期を迎えた親が、自ら自宅を処分・整理し、より便利で快適な環境へ住み替える。子どもが実家じまいするのではなく、親が家じまいをしませんかという提案です。これにより、子どもの負担が減少し、相続後も非常にスムーズに進むということです。  ただ一方で課題もあります。引っ越しや住み替えは情報収集が必要で、高齢者は大変ということと、高齢者向けの物件も確保が難しいということです。  齊藤教授は「今より快適な生活を送れる場所を探すことが大切」としています。 「住まいのエンディングノート」  自治体によっては高齢者の住み替え・リフォームを相談できる支援体制もあります。齊藤教授によると、千葉県の流山市では、相談・見積もり・物件調査・入居までをワンストップで支援しています。  さらに国交省のホームページでは「住まいのエンディングノート」というものをダウンロードできます。  家系図や所有している不動産はどういったものがあるかを整理することができ、将来のわが家の「活かし方」「しまい方」を家族や大切な方に伝えることができます。

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