菅野美穂×赤楚衛二:映画『近畿地方のある場所について』一番怖いのはやっぱり「人」

 8月8日公開の映画『近畿地方のある場所について』でダブル主演を務めた菅野美穂と赤楚衛二。行方不明になったオカルト雑誌の編集長の行方を探うちに、数々の過去の未解決事件や怪現象から恐るべき事実に気がついていく、オカルトライター・瀬野千紘を菅野が、オカルト雑誌の編集部員・小沢悠生を赤楚が演じている。今回二人そろって撮影を振り返りながら、作品の魅力や舞台裏について語ってくれた。独特の構造で観る者を引き込む本作。彼らの言葉からも、その面白さが浮かび上がってくる。 【動画】劇場で肝だめし、映画『近畿地方のある場所について』最終予告 ——最初にこの作品の話を聞いたとき、どんな印象を持ちましたか? 【菅野】まず原作の背筋さんの原作小説を読ませていただいて、淡々と状況説明が続くのに、それが積み重なることで高揚感を覚えるような、不思議な読書体験でした。静かなのに熱を感じるような、これまでにないタイプの小説で、「今」という時代と呼吸している作家さんだなと。そんな作品が映像化されると聞き楽しみでしたし、オファーをいただけたことはとても光栄でした。 【赤楚】僕はマネージャーさんから聞いて、「何それ、面白そう!」って(笑)。実際に原作を読んでみると、淡々と情報が集まっていくうちに、怖さと気持ちよさがどんどん増していくのがたまらなくて。監督が白石晃士さんで、共演が菅野さんと聞いて「これは絶対やりたい」と思いました。 ——「面白そう!」って……こういうジャンルお好きなんですか? 赤楚:好きです。 ——原作と完成した映像作品で、印象の違いはありましたか? 【菅野】大きな乖離はなかったですね。原作の読後感と、映画を観たあとの感覚がとても近くて。ホラーではあるんですが、ラストまで観ると“現実とは違う世界だな”と感じられて、少し安心できる。途中のほうがむしろ怖いかもしれません(笑)。 【赤楚】CGを使う部分があったので、撮影中は「これどうなるんだろう」と思っていました。でも完成した映像を観たら、陰鬱な始まりからロードムービー的な要素、最後は人間ドラマも入っていて、ホラーだけじゃない幅の広さを感じました。むしろ「もう一回観たい!」と思えるエンタメ作品になっていてうれしかったです。 【菅野】一度観ただけじゃ気づけない仕掛けも多くて、「あれ、分かりました?」って聞かれて、出演者でも「気づかなかった」という細部がたくさんあるんですよ。ミステリーや考察が好きな人にはすごく楽しんでもらえると思います。 —— “近畿地方のある場所”が鍵になる作品ですが、ご自身にとって特別な場所ってありますか? 【赤楚】東京……ですかね。まあ、仕事場でもありますし。あとは茨城県。なぜか撮影が続いてて、フィルムコミッションの方から「またお会いしましたね」と言われるくらい多いです(笑)。 【菅野】私の両親が岩手県出身で親戚も多く住んでいるんです。岩手に「歴史公園えさし藤原の郷」(岩手県奥州市)という平安時代の建築物が再現された歴史テーマパークがあるのですが、そこで撮影をしたときは、「親戚のいる地元で仕事できるというのはうれしいものなんだな」と感じました。 ——本作では、謎を解けた人だけがプレミアイベントやミステリー・バスツアーに参加できるといったユニークなプロモーションを行ってきましたね。 【菅野】作品の雰囲気を壊さず、ここまで振り切ったことをやれる宣伝ってすごいなって。参加していてすごく楽しかったです。 【赤楚】話題作りのために、公開日の8月8日に僕が失踪するしかないのかなと思っていたんですよ(笑)。その心配がないくらい、世界観を壊さずに工夫されていて素晴らしいと思います。謎解きは……難しすぎて2つとも解けませんでした。 【菅野】私もヒントをもらってもわからなかったです(笑)。 ■武田鉄矢直伝の叩いたように見える芝居をしようとしたが… ——ドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(2021年)以来の共演となりましたがお互いの印象は? 【菅野】前に共演した時は1シーンだけだったので、ほぼ初共演のような感覚でした。でも、当時と変わらず誠実な方だな、という印象。以前より仕事も増えて大変なはずなのに、現場ではその疲れを一切見せない姿が立派でした。立派すぎて、生きづらさを感じてはいやしないか、と心配でもありました(笑)。 【赤楚】確かに、そういうときもあるかもしれないですね(笑)。俳優として、公の目にさらされる立場にある以上、清廉潔白をより強く求められる時代なので、ミステリー・バスツアーでもシートベルトをしっかり 締めていました。 【菅野】芸事はもっと荒ぶっていいと思うけど、真面目にやっている人が報われる世の中であってほしいです。 ——作中では菅野さんが赤楚さんをビンタするシーンもありますが、撮影はどうでしたか? 【赤楚】ビンタは怖かったですね(笑)。 【菅野】最初は「叩かないから」と言っていたんです。武田鉄矢さんに直々に教えていただいた、叩いていないのに叩いたように見えるお芝居をしようと思っていたんです。でも、日没が迫ってきて現場がバタつき、つい叩いちゃったんです……ごめんなさい。 【赤楚】叩かれたリアクションをするつもりだったので、素でびっくりしちゃって。そのテイクはNGになってしまい、じゃあ、次はどっちだ?どんなリアクションをすればいいんだ?またNGになったらどうしようという、そういう怖さがありました(笑)。 ——この作品は今後、どんな風に自分の中に残りそうですか? 【菅野】ホラー作品には20年ぶりくらいの出演でしたが、時代とともに“恐怖の質”も変わっていることを感じました。監督が「テーマは愛です」とおっしゃっていて、最初はよくわからなかったけど、今はすごく腑に落ちています。 【赤楚】何でもネットで真偽が明かされる今、幽霊やお化けに“本当にいるかも”と思わせるのは至難の業ですよね。 【菅野】でも、最初に観たホラーって一生忘れないですよね。私は『女優霊』(1996年)でした。 【赤楚】僕は『学校の怪談』(1995年)。この『近畿地方のある場所について』は、全年齢対象だからこそ、“ホラー初体験”の子どもたちにもホラーの面白さに目覚めるきっかけになってくれたらうれしいです。 ——読者にメッセージをお願いします。 【菅野】「怖さの幕の内弁当」と言いたくなるくらい、この映画にはいろんな怖さが詰まってます。幽霊系もスピリチュアルもあって、最後には“人が一番怖い”って思わせてくれる。あと、恐怖って自分の心の中で育っていくものなんですよね。怖すぎて笑っちゃうくらいの臨界点まで連れて行ってくれる、そんな映画です。 【赤楚】最初から「この映画どこに向かうんだろう?」という謎が続いていく。観ている人も一緒に近畿地方の“ある場所”を探しているような感覚になれるんです。アトラクションのように楽しめる映画だと思います。

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