北米の大地に眠るスクラップ寸前のクラシックカー 20選 戦前の希少モデルも ジャンクヤード探訪記

限られた訪問時間で見つけた興味深い廃車 米国サウスダコタ州ミッチェルにあるジャンクヤード『ダコタ・サルベージ(Dakota Salvage)』は、何十年にもわたってスペアパーツやレストア用車両の素晴らしい供給源となっている。 わたし達編集部も注目し、取材のために訪問することにした。唯一の問題は、土曜日の午前11時45分、閉店15分前に到着してしまったことだ。そのため、大急ぎでヤード内を駆け回ることになった。 サウスダコタ州のジャンクヤードで見つけた、希少なクラシックカーを20台紹介する。 今回の取材では素晴らしい車両をいくつか撮影することができたのだが、この駆け足ツアーでどれだけの「宝物」を逃してしまったか、今でも心残りがある。わたし達が訪問して以来、ジャンクヤードの経営者が変わり、現在はH&Rサルベージ社が所有している。古いクルマたちがまだ残っているかどうか、気になるところだ。 クライスラー・ニューポート・カスタム(1971年) 少し荒れている印象はあるものの、この1971年製のクライスラー・ニューポート・カスタム2ドア・ハードトップは比較的良好なコンディションを保っている。おそら保存状態も良いのだろう。ニューポート・カスタムにはさまざまなエンジンが搭載されていたが、新車当時に最も人気があったのは最高出力335psの7.2L V8エンジンで、0-100km/h加速タイムは7.2秒に達した。 クライスラー・ニューポート・カスタム(1971年) フォード(1949年) このフォードには「48-9」と書かれているが、担当者が1948年製か1949年製か判断できなかったものと思われる。しかし、この2年間に生産されたモデルはまったく異なる外観をしていることを考えると、少し奇妙だ。結局のところ、外観上ほとんど違いのない「49-50」と記載した方が正確だろう。 すでにお気づきかもしれないが、これは超希少な4ドア・コンバーチブルではなく、単にルーフを切り取ってスペアパーツとして販売されたあとの姿だ。1949年モデルのフォードは1948年6月に発表され、戦後初の完全新設計のフルサイズ車として大ヒットを記録した。 フォード(1949年) シボレー・ビスケイン(1960年) この1960年製のシボレーに使用されているクロームパーツの少なさから判断すると、低価格のビスケインモデルだろう。ただし、当時のビスケインはラインナップで最安価のモデルだったわけではない。ゼネラルモーターズは、さらに簡素化された廉価版のフリートマスターも販売していたからだ。ドアのアームレストや助手席のサンバイザーすら備わっていない、非常に質素な仕様だった。クロームメッキではなくボディ同色となった部品も多く、容易に見分けることができる。 シボレー・ビスケイン(1960年) スチュードベーカー・プレジデント(1958年) これは、1958年のスチュードベーカー・プレジデントという珍しいクルマだ。プレジデントは、1926年から1942年まで同社のフラッグシップモデルだった。その後、1955年に再登場し、1958年まで生産された。当時、スチュードベーカーはコンパクトカーのラークに注力していた。印象的なフィンと豊富なクロームメッキにもかかわらず、最終年には5000台も売れないまま生産が終了した。 スチュードベーカー・プレジデント(1958年) プリムス・ベルベディア(1956年) ピンク色があまり似合わないこの1956年製のプリムス・ベルベディアは、1980年代半ばから一度も走行していない。 この個体は、1954年から1961年までプリムスとダッジで使用されていた2速の 『パワーフライト(PowerFlite)』トランスミッションを搭載している。当初はステアリングコラムのレバーで操作するタイプだったが、1955年にダッシュボードに移設された。さらに1年後、今度はプッシュボタン式に変更された。 プリムス・ベルベディア(1956年) メルクールXR4Ti 1985年から1989年にかけて、ドイツ製のフォード車がメルクールという短命なブランドから米国で販売されていた。ラインナップは、フォード・シエラXR4iを若干改良したXR4Tiと、フォード・グラナダMk3をベースにしたスコーピオの2車種のみだった。30年前のエドセルブランド同様、メルクールは失敗に終わり、XR4Tiは2万6000台、スコーピオは2万2000台しか売れなかった。 メルクールXR4Ti ジャガーXJシリーズ2 リアのナンバープレートのランプから判断すると、このジャガーXJ6はシリーズ2だろう。1972年から1977年に生産されたシリーズ2は、フロントエンドのデザインが変更され、高いバンパーと小さなグリルを特徴としていた。これは、最大の輸出市場であった米国における衝突安全基準に準拠するために導入されたものだ。シリーズ2の総販売台数は9万1227台を少し上回る程度。この写真で目立つのは、ユニークな特徴の1つであるツイン燃料タンクだ。 ジャガーXJシリーズ2 ナッシュ(1953年) この1953年製ナッシュでは、凹んでいないパネルはトランクリッドと助手席側の後部ドアの2か所だけだ。 残念ながら、この場所をさらに深く探検する時間はなかった。一日中散策したくなるような場所だったので、本当に残念だ。背景にはいったい、どんな宝物が隠れているのだろうか? ナッシュ(1953年) パッカード・クリッパー(1954年) トランクには「53」と書かれているが、このパッカード・クリッパーは実際にはその1年後のモデルだと思われる。ルーフを見ると、まるで誰かがこのクルマを潰そうとして、最後の最後に気が変わったかのようだ。いずれにせよ、寿命は残りあとわずかだろう。 1954年は、パッカードが自社より規模の大きいライバル企業であるスチュードベーカーを買収し、スチュードベーカー・パッカード社を設立した年だ。 パッカード・クリッパー(1954年) パッカード・クリッパー(1951年) こちらも、ルーフに問題のある珍しいパッカードだ。リアのクロームパーツが欠けていることから、おそらく1951年の200デラックスだと推測される。200シリーズは、1951年と1952年にパッカードのエントリーモデルとして販売され、ラインナップ中で最も小型で、最も出力の低いモデルだった。1953年にクリッパーと改名された。 パッカードは1951年に約10万台を販売し、ヘンリーJ、リンカーン、フレイザー、クロスリーに次ぐ、米国で16番目に売れたブランドとなった。しかし、1956年には販売台数が1万台まで落ち込み、1958年に生産が終了した。 パッカード・クリッパー(1951年) ビュイック(1937年) ボディに書かれている通り、これは確かに1937年製のビュイックだと信じてもいいだろうが、美しいアールデコ調のグリルと特徴的なヘッドライトがないため、確信は持てない。このように古い車両が並ぶエリアをもっと詳しく調査したかったが、ジャンクヤードのオーナーに「時間内に退去しないと週末中閉じ込めるよ」と言われてしまったため、断念した。 ビュイック(1937年) ボルボ・アマゾン ボルボ・アマゾンは1956年から1970年まで生産されたが、米国では1959年に発売された。3種類のボディスタイルのうち、最も希少なのは、特徴的な2分割のテールゲートを備えたステーションワゴンだ。総販売台数66万7791台のうち、ステーションワゴンは7万3220台のみ。アマゾンの約60%は輸出され、その相当数が米国に輸入された。 この個体は非常に良い状態に見え、4本のタイヤすべてに空気が入っている。 ボルボ・アマゾン ジープCJ-5 このジープCJ-5は腐食がひどく、崩れかけているように見える。1970年から1975年の間に生産されたものではないかと推測する。燃料タンクが運転席の下ではなく後部に位置しているため、それより古いモデルではないことは確実だ。 ジープCJ5 ポンティアック・チーフテン(1957年) もし、これが1957年製のシボレーではなくポンティアックだったなら、今頃はもうレストアされているか、少なくとも有用な部品は全て取り外されているだろう。不人気の理由の1つは、これが下位グレードのチーフテンであることだ。この4ドア・セダンは合計3万5671台が販売された。 ポンティアック・チーフテン(1957年) ポンティアック・カタリナ(1959年) 1959年のポンティアックは、この4ドアのカタリナのように特徴的な分割グリルを採用していた。このデザインは好評を博し、ポンティアックのフロントエンドに数十年にわたって採用された。1959年の販売台数は38万3320台に達し、ポンティアックは歴史上初めて、米国第4位のブランド(シボレー、フォード、プリムスに次ぐ)となった。その後、1962年から1969年までは3位の座を獲得した。 ポンティアック・カタリナ(1959年) ビュイック・スポーツワゴン(1968年) オールズモビル・ヴィスタ・クルーザーと同様、1968年製のビュイック400スポーツワゴンも、2列目シートと荷室上部に天窓を備えたハイルーフが特徴だ。今はもう取り外されているが、この個体はかつて、最高出力340psの6.5L V8エンジンを搭載していた。0-97km/h加速は約8秒、最高速度は200km/hに達した。 この個体はフェンダーに「GS」というバッジが付いているが、実際には1968年にスポーツワゴンのGSバージョンは生産されていない。 ビュイック・スポーツワゴン(1968年) キャデラック(1958年) この個体が出荷された1958年当時、キャデラック・セダン・ドゥビルの価格は5000ドル近くした。参考までに、当時の平均世帯収入は5100ドルだった。高価だが、それでも2万3989台が販売された。 ひどく腐食した後部座席から判断すると、リアウィンドウが失われてから相当な時間が経っているようだ。 キャデラック(1958年) フォード・ギャラクシー(1960年) 心無い破壊行為により、この1960年製フォード・ギャラクシー・タウン・ビクトリアのガラスはほとんどすべて破壊されている。唯一被害を免れたのは、襲撃時に開いていた助手席側の窓だけだ。また、ボンネットには弾痕がいくつかあるようだ。 1960年にはギャラクシーのボディスタイルが5種類用意され、この4ドア・ハードトップは4番目に人気があり、3万9215台が販売された。 フォード・ギャラクシー(1960年) ビュイック(1950年) 残念ながら、この1950年製のビュイック・スペシャルのボンネットは複数の弾痕が開いており、個別の部品としての価値はない。特徴的な歯のようなグリルは、おそらく狙いを外れたためか、無傷のようだ。穴といえば、ビュイックのポートホール(飾りの穴、正式名称は『ベンティポート』)は、この1年前に導入されたばかりだった。 ビュイック(1950年) フォード(1941年) フォードの1941年モデルは、ランニングボード(サイドのステップ)をほぼ覆う全く新しいボディデザインを採用した。このデザインは、第二次世界大戦による3年間の生産中断を挟みつつも、1948年まで使用された。経済性を重視する顧客層をターゲットに、この年から6気筒エンジンがラインナップに追加された。フォードにとっては、1906年のモデルK以来の直列6気筒エンジン搭載車となった。 フォード(1941年) 著者について 英国の自動車ジャーナリスト、ウィル・シャイアーズ(Will Shiers)は過去35年にわたり、廃車となった米国の自動車を撮影し続けている。50州すべてを旅して、納屋、野原、砂漠、ゴーストタウン、ジャンクヤードなどを探検し、隠された宝物を探している。自動車雑誌への寄稿も多い。 著書『Roadside Relics - America’s Abandoned Automobiles』は、これまでの彼の作品を集めた写真集(解説付き)で、廃車マニアだけでなくアメ車好きにも興味深い1冊となっている。 原文を執筆したウィル・シャイアーズ(Will Shiers)とその著書

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