多くの方の命が奪われたあの日から6日で80年、被爆体験を話してくださる方は高齢化しています。 そんな中、年々活動が広がっているのが、原爆・被爆の恐ろしさを風化させないために、戦争を体験していない人が被爆者の方から話を聞いて、それを次の世代に語り継いでいく「被爆体験伝承者」です。 現在、239人の方が被爆体験伝承者としての活動を行っています。そのひとり、山口晴希さんにお越しいただきました。 ——なぜ、この80年というタイミングで伝承者になろうと思ったのですか？ 「被爆体験伝承者」について知ってはいましたが、被爆者ではない自分が、被爆者の代わりに話をすることはできないと思っていました。けれども、ある被爆者から「被爆者の見たものをそのまま伝えることはできないかもしれないけれど、あなたの言葉で次の世代に伝えてほしい」と言われたこと、そして、伝承者の先輩から「いましかできないことなんだよ」という言葉を頂き、伝承者になろうと思いました。 ——山口さんは、つい1週間前に伝承者の活動を始められました。いま映っているのが初めての活動の様子ですか？ 2年間の研修を経てやっと先週、活動をスタートしました。私は、石橋紀久子さんという5歳で被爆された方の体験を伝えています。ちょうど夏休みで小学生もいて、緊張感というよりは対話を楽しみながら進めることができました。 ——何年も研修をして、やっと活動が始められるということです。山口さんは石橋さんの話をどういった思いで伝えているんですか？ 十数人の中から石橋さんの話に決めたのですが、その理由は、話を聞いていて一番、その情景が目に浮かんで涙が止まらなかったということがあります。石橋さん本人も、毎回、話を始めると8月6日の記憶がよみがえるということをおっしゃっていました。私が伝えるときも、聞いた人が自分のことのように8月6日のことを感じてほしいなと思っています。 ——6日、広島は被爆80年の原爆の日を迎えますが、いま山口さんが感じることは？ 戦争を体験した方や被爆者の声を聞けるラストのタイミング、ずっと活動されてきた被爆者の方たちからバトンをつないでいくタイミングかなと思っています。一人ひとりがよりよい未来のためになにができるのか、そして、多くの人が、平和を願うだけではなくて平和をつくる人になってほしいと思っています。