兵庫県・斎藤元彦知事の2025年7月29日の定例記者会見で、記者から知事に向けられた言葉が話題となっている。 この記者は、これまでの定例記者会見で斎藤知事の姿勢を厳しく追及してきたが、ネット上で記者を誹謗中傷する投稿や会社に抗議が相次ぎ、配置換えが決まったという。 「会社にクレームの電話が鳴りやまず」 「先週もここで質問をして、その後会社にクレームの電話が鳴りやまずに、私は県政の担当を外れることになりました」 記者はこう明かし、続けた。 「記者が会見で質問をして、即日炎上をして、翌日には配置替えが決まると。そういうことが兵庫県では起きます。これをまた成功体験として、またネットの人たちがこぞって兵庫県に集まってくると。兵庫県はそういう遊び場になっていると私は思います」 そして、知事の姿勢に対して次のように質した。 「こうすることで記者が萎縮して、職員や議員が萎縮していくわけですけれども、斎藤知事が推し進めている風通しのいい職場づくりはそれで実現するのでしょうか。まともな県政運営につながるのでしょうか」 「いつも震源地にいるのは知事です。知事しかこの状況を変えられないと私は思っています。なのに、知事はこの状況を問題に思っているようにも、変えようと思っているようにも見えません。いつまでこんなことが続くのか、続けるのかと私は思っています」 記者からは1分20秒にわたって、知事に対する強いメッセージが発せられた。これに対して斎藤知事は、「ご私見の方を述べたというふうに思いますけど」として、週1回の定例会見では、県の発表をした後に、記者からの質疑にできるだけ対応していると説明。記者の発言に応える内容とはならなかった。 記者が所属する報道機関の担当者は、会見に関するご意見はあったのは事実としつつも、「今回の異動は通常の人事異動の一環」とコメントしている。 記者に対する誹謗中傷はこれまでも 兵庫県知事を巡る問題を取材する記者は、誹謗中傷に悩まされてきた。これまでには、新聞社の記者と2025年1月に亡くなった兵庫県の元県議が個人的な関係にあったのではないかとする誹謗中傷が相次いでSNSに投稿されたこともあった。 1月20日、産経新聞社は「ソーシャルメディア上の弊社記者に対する名誉毀損や侮辱等を意図した投稿行為について」と題した文書を公表。その中で、記者個人に対する憶測に基づいた根拠のない誹謗中傷や侮辱が投稿され、拡散されていると指摘した。その上で、「正当な批判や論評を超えた又はこれと無関係な記者個人に対する根拠のない誹謗中傷、侮辱、プライバシーの暴露は、記者の尊厳を傷つける人権侵害行為であり、 到底容認できるものではありません」とコメントした。 また、1月25日の産経新聞の社説では「一連の事案(兵庫県の文書問題)をめぐっては、本紙記者も根拠のない中傷の対象となり、産経新聞社として紙面で強く抗議した」と掲載。日本新聞協会も6月5日、記者への誹謗中傷に対処するとした同様の声明を公表している。 兵庫県知事を巡っては、文書問題を中心に県民の間に分断が生じている状況が続いており、1月に亡くなった竹内英明元県議を知事失職の黒幕と名指しする文書や、百条委員会の委員を務めた丸尾牧県議に殺害予告のメールが届くなど関係者への誹謗中傷が発生している。 「知事自身がなぜ誤った内容を否定しないのか」 2025年4月16日の定例記者会見で斎藤知事では、記者から「兵庫県を巡ってこの1年間、誹謗中傷、攻撃、そして実際の被害ともいえる状況がなぜ収まらないか」を問われた。これに対して知事は「SNSやメール等による心ない誹謗中傷というものは、やはり許されない行為。それをお伝えさせていただくということが大事」と一般論を述べるにとどまっていた。 また、「知事自身がなぜ誤った内容を否定しないのか」を問われると「一つひとつのSNSの状況について、コメントすることはしていないが、SNSで事実ではないことを発信するべきではない」と語っていた。