主演作が続く松本若菜、「ここ数年」で起きた心境の変化 初吹替挑戦は女優としても財産に

 近年、主演ドラマが続くなど最も熱い視線を浴びる女優・松本若菜。映画『ジュラシック・ワールド/復活の大地』では、スカーレット・ヨハンソン演じるゾーラ・ベネットの日本語吹き替えを務め、新たな表現を体験した。充実一途の松本が、人気シリーズに参加した思いや、長い葛藤の日々を経て、肩の力が抜けたというメンタルの変化や自身のパーソナルな面について語った。 【写真】美しさにも磨きがかかる松本若菜、撮り下ろしフォト ■「え、私?」——驚きと覚悟で挑んだ『ジュラシック・ワールド』という大舞台  「お声がけいただいた時は、本当に『え、私?』という感じでした」。世界的な超大作『ジュラシック・ワールド』シリーズ最新作で、日本語吹替版の声優に抜擢された時の心境を、少し照れながら、しかし真っ直ぐな言葉で振り返った松本。驚きはあった。だが、それ以上に彼女の心を占めたのは、喜びと身が引き締まるような覚悟だった。  「なかなか頭の処理が追いつかないくらいびっくりしたのですが、心から本当にうれしかったです。もちろん初めてではあったのですが、精一杯務めさせていただきたいなと身が引き締まるような思いになったのを覚えています」。  プレッシャーがなかったわけではない。自身も「小さい頃から観てきた」という、映画史に燦然と輝く金字塔。その世界に、声だけで参加することの重みは誰よりも感じていた。  「プレッシャーはもちろんありました。世界的な超大作ですし、ファンも多い作品。私も小さい頃から観てきたものなので」。  松本がこのシリーズに惹かれるのは、単なるパニック・エンターテインメントとしての側面だけではない。そこには、現代社会にも通じる普遍的なメッセージが込められていると語る。  「恐竜が出てきて『わー!』とドキドキハラハラするだけではない、それ以外にもいろいろな感情を抱けるのが、この作品を見ていての醍醐味なのではないかなと思います。自然の摂理とは真逆なことをしている。人間の愚かさとか、でも生命の尊さとか……。そういうところが、シリーズを通して感じられるのが私には刺さりました」。 ■声だけの芝居は、今後の女優業にも大きな財産に  今回、彼女が声を吹き込むのは、スカーレット・ヨハンソン演じるゾーラ・ベネット。過去に深い心の傷を負いながらも、秘密工作の専門家のリーダーとして仲間を率いる、複雑な背景を持つ女性だ。  「ただめちゃくちゃかっこよくて強いという側面だけだったら、なかなか共感はできなかったかもしれませんが、ベネットは心の傷が癒えないまま、今回のミッションに『どうしよう、参加しようか。でも今の自分にできるだろうか』という思いを背負っているという背景を聞いた時に、弱さのなかにある強さというものを表現できたらなっていうふうに思ったんです」。  その役作りは、まず言葉を介さず、全身でキャラクターを感じ取ることから始まった。  「私は最初に、台本を読まないまま、映画の本編を3回くらい観させていただきました。英語はあまり得意ではないので、全てが分かるわけではないのですが、表情で通じるものって不思議とあって……。言葉を超えた何か通じるものはあるんだなって思うと、私もまだまだ、もっとそっちの世界の方に行きたいなと思いました」。  初めてのアフレコを通して、松本は声だけの芝居が、今後の自身の女優業に大きな財産になると感じたという。  「普段は動作と表情、声でお芝居させてもらっていますが、今回声優業を経験して、いかに表情や動きに頼っていたかというのを実感しました。自分も今後お芝居で、例えば目をつむったまま、声だけで伝えるという表現方法も一つあるのかなと感じました」。  収録は一人で行われたが、画面越しの共演者との間には、確かな絆が生まれていた。特に、ダンカン・キンケイド役の楠大典とのシーンでは、不思議な安らぎを感じたという。  「なかなかあまり心を開かないゾーラが、キンケイドには砕けて話すんですよね。そういう時に楠さんの声が聞こえると、『落ち着くな』って思うんです。あの包容力のある素敵な声。声だけであんな、安心感を抱かせていただけるなんて(笑)。ほんとに驚きました」。 ■“座長”の景色と、肩の力が抜けた今 「この仕事が楽しい」という純粋な気持ち  2024年7月期のTBS系火曜ドラマ『西園寺さんは家事をしない』、同10月期のフジテレビ系木10ドラマ『わたしの宝物』、今年4月期のフジテレビ系水10ドラマ『Dr.アシュラ』と、近年主演を務める機会が増え、彼女が見る景色は大きく変わった。まさに飛躍の時を迎えている印象を受ける。  「主演をさせていただいて、自分が今までやってきた現場での居方みたいなものが本当に変わりました。やはり見られているというか、自分が周りを見なきゃいけない、そういう視野もすごく広がりました。座長が暗いと、(現場が)暗くなっちゃうんじゃないかって思いますし、暗い作品でも常に笑っていたいという思いは強かったです」。  かつては「周りが気になっていた」と正直に打ち明けた松本。オーディションに落ちては、受かった人が出演した作品を映画館に観に行って「悔しい!」と他人と自分を比べる日々。しかし、年齢と経験を重ねる中で、その尖っていた心は少しずつ丸みを帯びていった。  「年齢というのもすごく大きかったと思います。いい意味で諦めがつくというか、変なプライドとかが削ぎ落とされていった部分はあると思うんです。今までちょっと尖っていた部分が、1枚ずつ剥がされていくと、純粋に『この仕事が楽しい』という気持ちしか残らなかったんです」。  その境地に至ったのは「ここ数年だと思う」と彼女はほほえむ。役のことで悩めること自体が、何よりの幸せ。その苦しみの先にあるものこそ、自分だけの表現だと信じている。  「悩んで苦しんで生まれた先は、自分にしか何かできないものだったんじゃないかって、そう思いたいんです」。  その目は、常に未来を見据えている。邦画が大好きだった少女が、いつしかスクリーンの中で生きることを夢見た。その原体験は、山崎まさよし主演の『月とキャベツ』(篠原哲雄監督)。  「『月とキャベツ』を観た時に、『ああ、こういう世界観の中に、自分がいたらどうなんだろう』みたいなのは、漠然と感じたのを覚えています」。  共に作品を作りたい監督や俳優の名前を「言葉に出す」ことを大切にしている。それは、自らを奮い立たせ、不思議な縁を引き寄せる「言霊」の力を信じているからだ。樹木希林さんとの共演(『駆込み女と駆出し男』)も、そうして実現した夢の一つだった。  「ご一緒したいと思っている方々はたくさんいます。白石(和彌)監督ともご一緒したいし、大根(仁)監督や石川(慶)監督とも久しぶりにまた作品を共にしたいです。挙げたらきりがないぐらい……一つ一つ叶えていけたらいいなと思っています」。  長い助走期間を経て、今、大きな花を咲かせた松本。しかし彼女は、決して過去を憂いもせず、未来に驕りもしない。「この仕事が楽しい」という純粋な気持ちだけを胸に、これからも唯一無二の存在として映像界に輝き続けるだろう。(取材・文:磯部正和 写真:松林満美)  映画『ジュラシック・ワールド/復活の大地』は、8月8日より全国公開。

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