米殿堂入りのイチロー氏「私は3度目のルーキー」「夢のよう」 19分の英語スピーチ全文

米殿堂入り式典で19分の英語スピーチ【スピーチ全文】  メジャー通算3089安打を放ち、アジア選手として初の米野球殿堂入りを果たしたイチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が27日(日本時間28日)、ニューヨーク州クーパーズタウンで表彰式典に出席し、19分間英語でスピーチした。全文は以下の通り。 〇スピーチ全文(英語) 「ありがとう。もう出会うことはない感情を今日は感じています」 「私は3度目のルーキーです。最初は1992年。高校卒業直後に、オリックスブルーウェーブにドラフトされた時です。その次は2001年。私が27歳の時、またルーキーになりました。シアトル・マリナーズが私と契約した時です」 「そして(後ろにいる)ロッド・カルー、ジョージ・ブレット、トニー・ラルーサ等の方々を見て、私はまたルーキーになってしまったことに今気が付きました」 「皆さんの素晴らしいチームに、私をとても温かく迎え入れていただき、ありがとうございます。私が殿堂入りしても、(米野球殿堂の)価値を維持できることを祈っています。でも私は51歳になりましたので、手加減してくださいね! 私はフーターズのユニホーム(メジャー1年目に仮装イベントで着用)をもう着る必要はありません」 「(オリックスとマリナーズの)最初の2回の方が感情をコントロールすることは容易でした。なぜなら、私の目標は常に明確で、最高峰の舞台でプロフェッショナルなプレーをすることでした。今回は全く違います。なぜなら、日本にいる少年の歩みが野球界にとって神聖な場所にまで繋がっていることは想像もつきませんでした。その少年は、この場所すら知りませんでした」 「162試合目まで、モチベーションを変えないことは私の責任」 「人々は記録を見て、私の評価をします。(MLB通算)3000本安打、10度のゴールドグラブ賞、シーズン200本安打を10シーズン。悪くないでしょ? でも真実を話すと、野球をしていなければ、あなたは『こいつは何てマヌケな奴なんだろう』と言うでしょう! (米解説者の)ボブ・コスタスさん! 私には悪いチームメートがいましたよね!」 「野球は打撃だけで片付けることは出来ません。スローイング、ランニング。野球のおかげで何が(本当に)重要か、価値判断ができるようになりました。人生の価値観、そして世界観が形成されました」 「少年の頃はいつまでも野球が出来ると思っていました。最高峰の舞台で、45歳まで私が愛する野球をプレーし続けるのは、(野球に)全てを注ぐことだと気が付きました。ファンは貴重な時間を使って見に来てくれます。彼らの為に活躍をするという責任があります」 「10点差で勝っていても、10点差で負けていても。開幕戦から(シーズン最終戦の)162試合目まで、モチベーションを変えないことは私の責任だと感じていました。シーズン最後のアウトを奪われるまで、私は帰りの支度を始めたことはありませんでした。毎試合全力を注ぐことはプロとしての責任だと感じていました。ファンが(球場に)来ると決めた時、彼らはいつだって(プレーで)もてなされる権利があります。野球は私にプロフェッショナルとは何か教えてくれました。ここにいる一番の理由は、私の技術が他人より優れていたからではなく、これ(プロフェッショナリズム)だと思います」 「記者の方々に(通算)3000安打、(シーズン)262安打を評価していただきました。皆さん全員に。1人を除いてはね! ところで、(投票してくれなかった)記者に私の家でディナーを一緒に食べることをオファーしていたのですが、もう期限が切れてしまいました! 19シーズン、毎日沢山起きるどんなに小さいことでも常に(私の動向を)注視してくれた彼ら(記者)なしでは、殿堂入りは達成できませんでした」 毎日道具のケアを行っていた理由 「私は毎日、用具のケアをしていました。なぜなら紐が解けていたせいでエラーをしたり、スパイクを磨かなかったせいで滑ったりしたくなかったからです」 「レギュラーシーズンが終わっても、私はオフシーズンに厳守していたルーティンがありました。(そのおかげで)スプリングトレーニングに来た時には、肩の状態は既に準備万端でした。マリナーズの実況を務めるリック・リズに『Holy smoke! Laser beam strike from Ichiro!』と言われるのを待っていましたよ!」 「小さなことを常にやり続ければ、不可能なことはありません。私を見てください。(身長)5フィート11インチ(約180センチ)で、170ポンド(約77キロ)ですよ。米国へ渡った時、多くの人に大柄なメジャーリーガーと(対等に)戦うには、痩せすぎだと言われました。初めて(メジャーの)フィールドを走った時、競争の(激しさに)圧倒されました。でも、準備の面で信念を貫けば、私自身ですら感じていた疑いの気持ちを乗り越えられると思いました」 「『チームの為に出来る最善なことは?』と、質問されたら、私は『自分の責任を果たすこと』と、答えます。自分の責任を果たすことは、自分自身に応えるということでもあります。なぜヒットを打てなかった、キャッチできなかったと思いながら、夜自宅へ帰る時、本当の答えは好投手に抑えられたからでも、強い日差しが目に入ったからでもありません。(準備の面で)何かもっといいことができたはずだからです。自分の責任を果たせば、チームメートをサポートし、ファンを裏切らないことにも繋がります」 「少年時代の夢はいつだってプロ野球選手になることでした。6年生の時、(プロ野球選手になりたいと)作文にも書いたことがあります。もし、今持っている知識を使って今日その作文を書き直すことが出来れば、夢ではなく、目標という言葉を使います。夢は現実的とは限りません。でも、道筋を真剣に考えれば目標(を達成すること)は可能です。夢を想像することは楽しいですが、目標は困難でチャレンジングです。もし、貴方があることに対して真剣であれば、やりたいと言うだけでは十分ではありません」 「達成するには何をしなければいけないか、厳しい目を持って考える必要があります。(作文には)プロ野球選手になるには日々の練習や準備が大事だと書きました。私は(その後も)目標を立て続けたのですが、(目標を)達成する基盤となっているものは、継続性だと後に気付きました。私は若い選手に夢を持つこと、そして大きな夢を持つことを勧めます。でも同時に、夢と目標の違いも理解して欲しいと思っています。夢を目標に変えるには、(目標を)達成するには何が大事なのか(自分に)正直でなければいけません」 子どもの頃は「中日でプレーする事が夢」 「作文には、私の故郷である中日ドラゴンズでプレーすることが夢だと書きました。当時は米国野球について無知でした。純粋に野球が好きで、残りの人生は最高峰の舞台であれば、どこ(にチームがあったとしても)プレーしたいと思っていました。最初の目標は、オリックスにドラフトされた時に達成しました。初めて戦ったフルシーズンで打撃タイトルを獲得し、日本でプレーしていた時はその後毎年獲得し続けました」 「外から見れば、全てが順調で、心配なんて一切ないように映ったかもしれません。しかし内心は、何故結果を残せているか理解に苦しんでいました。(当時は)見つからないものを探していました。内心苦しんでいる最中、歴史的な出来事が起こりました。私が生きている間に、ヒデオ・ノモが日本人初のメジャーリーガーになったのです。この成功は私を含め、多くの人を発奮させました。彼のおかげで、日本では常にMLBのニュースが流れました。そして、MLBの試合もテレビで中継されました。ヒデオ・ノモの勇気のおかげで、私は想像すらしていなかった場所で挑戦することが、突然脳裏に浮かび上がってきました。(日本語で)野茂さん、ありがとうございました」 「MLBで挑戦することを容認してくれた、オリックス・ブルーウェーブにも感謝しています。そして、米国野球で日本人初となる野手を信じてくれたシアトル・マリナーズにも感謝しています。それ以降、私はシアトル(の街)、そしてマリナーズを愛しています。Thank you, Seattle」 「大変名誉(な式典)で、私と契約してくれたGMのパット・ギリックと再会できたことに興奮しています。パット、オーナー陣、そして当時の幹部だった皆様、ありがとうございます。(任天堂の筆頭株主だった)ヒロシ・ヤマウチ、ハワード・リンカーン(元会長兼CEO)、チャック・アームストロング(元球団社長)、そしてその他にマリナーズ(に携わっている皆様)、ありがとうございます。現幹部のジョン・スタントン(CEO)、ジェリー・ディポト(GM)、ケビン・マルティネス(マーケティング兼広報副部長)、そしてその他の皆さんにも、私の居場所に再び迎え入れていただいたことによって、シアトルを永住の地にさせていただきありがとうとお伝えしたいです」 「エドガー(マルティネス)、ランディ(ジョンソン)と一緒のチームに加わることが出来て光栄です。君たち、今日は来てくれてありがとう」 ヤンキース、マーリンズ…感謝した存在 「ニューヨーク・ヤンキース、ありがとう。本当は、君たちが今日ここに来ているのはCC(サバシア)の為だと知っていますが、それでも大丈夫ですよ! 貴方たちの愛情を彼は受けるべきです! ピンストライプ(のユニホームを着た)2年半は、楽しかったです。デレク・ジーターの偉大なリーダーシップ、そして貴方の球団が培ってきた誇り高き文化を体験させていただきありがとうございました」 「そして、マイアミ・マーリンズ。今日ここに駆けつけてくれたデビッド・サムソン(元球団社長)、マイク・ヒル(元GM)に感謝を申し上げます。2016年に契約をオファーしてくれた時、正直言うと君たちのチームは今まで聞いたこともありませんでした! でも、南フロリダでの時間は最高でした。40代中盤でしたが、才能豊かな若きチームメートに囲まれて、選手として成長することができました。コロラドで(MLB通算)3000本安打を達成した時、彼らがベンチから飛び出した光景を私は一生忘れることはありません」 「その瞬間を(チームメートと)共有することの出来た喜びは純粋なもので、偽りのないものでした。マーリンズの選手として、そしてあのチームメートと一緒に3000本安打達成のチャンスを与えていただきありがとうございました」 「私の代理人を務めてくれた方々。ビジネスだけの関係でなく、私にとって大事な存在です。悲しいことに、この瞬間を知る前にトニー・アタナシオは逝去されてしまいました。私を米国(球界)に連れて行ってくれたこと、そしてワインの素晴らしさを教えてくれた彼に感謝の気持ちを伝えたいです!」 「そして私が42歳になってもプレーし続けられると信じてくれたジョン・バウツ。それ以降、私のキャリアを真剣に考えてくださいました」 「そして、私の通訳を長らく務めてくれたアレン・ターナー、そして彼のご家族。どこでプレーすることを決断しても、長らく私を支えてくださり、ありがとうございました」 引退後には妻とデートへ「現役時にはできなかったこと」 「ジェン、ジョシュ、チェスター、ウィットニー、そして米野球殿堂(博物館)の皆様全員にありがとうとお伝えしたいです。もちろん、ジェフ・アイドルソン(米野球殿堂博物館元会長)にも。貴方なしでは、この施設の素晴らしさを十分に理解することはできませんでした」 「CC(サバシア)、ビリー(ワグナー)、デーブ・パーカー、ディック・アレン、トム・ハミルトン、そして、トーマス・ボズウェル。(殿堂入り)おめでとうございます」 「皆さん想像できると思いますが、日本人初の野手としてMLBに挑戦した時、多くの(人は)疑念を持っていました。疑念だけではありませんでした。批判だったり、ネガティブ(な雰囲気)もありました。とある人は、私に対して『国民に恥をかかせるな』とまで言いました」 「私を最も支えてくれたのは妻、ユミコです。彼女にも(メジャーで私が成功できるか)疑いの気持ちがあったとしても、それは自然なことです。しかし、彼女はそのような気持ちを私に一切感じさせませんでした。私を支えること、そして励ますことに彼女は全てのエネルギーを注いでくれました。シアトルでの19シーズン、そしてニューヨーク、マイアミで、彼女は、家庭がいつもハッピーでポジティブ(な雰囲気)になるようにしてくれました。私は選手として、コンスタントに活躍することを心がけていました。しかし、彼女が一番コンスタントな(状態を保てた)チームメートでした 「私が引退して間もない頃、ユミコとナイター(の試合)でデートをしに行きました。私たちは現役時にはできなかったことをやりました。一緒にスタンドに座って、マリナーズの試合を観戦したんです。アメリカ式に倣ってホットドッグを食べながら、観戦をしました。この瞬間(殿堂入り)を達成する為に最も頼りにしてきた人は私にとって最もスペシャルな存在で、一緒にホットドッグを食べながら試合を観戦をしました。それも、野球のおかげです」 「米野球殿堂入りすることが目標だったことは、一度もありません。2001年に初めてクーパーズタウンに訪れるまで、その存在すら知りませんでした。しかし、今日ここにいることは、素晴らしい夢のような気持ちです。Thank you」(Full-Count編集部)

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