プッチンプリンだけではない…表に出ない「やらかし案件」から学ぶ「コンサルのお仕事」 「元官僚芸人まつもと」がコンサル時代に経験した“地獄”とは

「コンサル」と言えばパリッとスーツを着こなした人がテキパキと働いているイメージがあるが、具体的にどのような仕事をしているかが、いまいち見えてこない。コンサル業界では、大幅な遅延が生じたり問題が発覚したプロジェクトを「炎上案件」と呼ぶ。当事者の“やらかし”事案から浮かび上がる、コンサルという仕事の“リアル”とは……。  *** ※本稿は「週刊新潮」2025年7月31日号掲載【短期集中連載第3回 「炎上プロジェクト」の経験者が証言した“地獄の日々”】の一部を抜粋/編集したものです。 【図解】「戦略系」と「総合系」、そして「シンクタンク系」の三つに大別されるコンサル業界 コンサルの「炎上案件」でプッチンプリンが店頭から姿を消した  コンサルの仕事が分かりにくい理由を、アクセンチュアの50代の元社員はこのように説明する。 「ボストン コンサルティング グループ(BCG)」の入るビル 「守秘義務があること、時代に合わせてコンサルの役割が変わっていること、そしてプロジェクトの種類が多くあるからだと思います。企業の課題は様々で、それに応じてコンサルの仕事も多様になる。だから“これがコンサルの仕事”とひとことでまとめにくく、業界以外の人には分かりにくいわけです」  ただ、コンサルの具体的なプロジェクトの内容が“表”に浮上するケースも稀にある。  コンサル業界では、プロジェクトの進捗に大幅な遅延が生じたり、問題が発覚したものを「炎上案件」と呼ぶ。そして、その「炎上」の度合いが大きいと新聞などで報じられる事態になり、水面下で進められていたプロジェクトの詳細が明るみに出ることがあるのだ。  例えば最近の例で言うと、昨年春、江崎グリコのシステム障害で「プッチンプリン」などの定番商品が店頭から姿を消す、という騒動があった。  このトラブルを引き起こすきっかけとなった“基幹システム切り替えプロジェクト”を主導していたのが、「デロイト トーマツ コンサルティング」であることはメディアの報道で明らかになっている。総投資額約340億円の巨大プロジェクトだ。  ただし、こうして表沙汰になる「炎上案件」はまさしく氷山の一角に過ぎない。コンサルファームにとっては恥以外の何物でもないほとんどの「炎上案件」は、“表”に出てくることなく葬り去られていく。 「元官僚芸人まつもと」として活躍する松本氏の体験談 「以前、ある大手企業の新規事業を構築するというプロジェクトに参加したことがありました。それが自分のコンサル人生の中で最も大変だった“炎上プロジェクト”です」  そう語るのは、2005年に総務省に入省し、13年に退官した後「ボストン コンサルティング グループ(BCG)」や「経営共創基盤(IGPI)」といった複数のコンサルファームを渡り歩き、現在は「元官僚芸人まつもと」として活躍している松本昌平氏である。 「今やっている事業で儲けを維持できなくなったときのために“新しいビジネスの柱を作らなきゃ”と考える。大企業ではよくあるプロジェクトです。本業と親和性がある事業にはどういうものがあるのか。そういうことを検討し、ミーティングを重ねていくわけです。期間は3カ月、マネージャーの下にコンサルタントが3人ついているくらいの規模のプロジェクトでした」  松本氏がプロジェクトにアサイン(参加)した時点で、すでに新規事業の候補は三つに絞られていた。 「三つのうち最も有望株だった一つを深掘りしましょう、という段階で私が入ったわけです。私はコンサルタントとして参加していました。このプロジェクトの際、私たちはお客さんの会社に常駐することなく、基本的に東京の本社で作業や打ち合わせをしていました。戦略系の案件の場合、お客さんの会社に常駐することはあまりありません」(松本氏)  新規事業の有力候補となっていたのは物流系のビジネスだった。 「具体的には、バイオ製品の輸送事業への参入を検討していました。バイオ製品は腐らないよう、クール便のように温度管理したトラックで輸送する必要がある。その上、世界中で流通する物ですから、飛行機で輸送する際のコンテナでも温度管理が求められます」(同)  しかし、不測の事態が起きてしまう。 「『ノックアウトファクター』が出てきてしまったのです。この業界でよく使われる言葉なのですが、要はその企業が事業に参入できない要因が出てきてしまったわけです。儲かる、儲からない、の前に『やれない』ということです。その結果待っていたのは連日のように続く徹夜作業。地獄ですよ」 〈【プッチンプリンだけではないコンサルの「炎上案件」 当事者が証言した“地獄の日々”から浮かび上がる業界の“闇”】では、有名コンサルファーム元社員や、「元官僚芸人まつもと」氏をはじめ、コンサルで働く当事者たちに徹底取材。その証言から分かった数々の「炎上案件」も参考にしながら、コンサルという仕事の“リアル”について約6000字にわたって詳報している〉 デイリー新潮編集部

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