28日に殿堂入りセレモニー開催、引退から6年も「まだプレーできる」と太鼓判 アジア人として初めて米野球殿堂入りしたマリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏が27日(日本時間28日)に、ニューヨーク州クーパーズタウンで殿堂表彰式典に臨む。現在も所属するマリナーズで親交の深い“愛弟子”たち、フリオ・ロドリゲス外野手とJP・クロフォード内野手がイチロー氏の気さくな素顔を明かしながら偉業を称えた。 イチロー氏について「僕にとってのメンターであり、友であり、時には父親のような存在」と全幅の信頼を寄せるロドリゲス。子どもの頃に憧れた選手の1人だったと言い、2019年のスプリングトレーニングで初めて“生イチロー”を目撃した時のことを「本当にスペシャルな瞬間だった」と振り返る。 イチロー氏が今でもマリナーズで試合前の練習に参加しているのは有名な話。「殿堂入りする偉大な人物なのに、今でも毎日現役の頃と同じ準備をして、僕とキャッチボールをしたり、一緒に球拾いをしたり、打撃練習だってする。こんなこと、他の人にはできないよ」とロドリゲス。もちろん、インストラクターという職務の一環ではあるが、現役時代とまったく変わらない同じ真剣さをもって臨む姿は、若手にとって最高の手本となる。 51歳のイチロー氏に対し、ロドリゲスは24歳。親子ほども年が離れているが、互いに信頼を深めるのに長い時間は必要なかった。イチロー氏には野球以外のことも含めて何でも相談できるといい、「僕が必要とする時はいつでも、味方として側にいてくれる」と微笑みながら感謝する。ここまで結びつきが強くなったのは、他でもないイチロー氏が教えてくれた「野球愛の深さ」のおかげだという。 「彼から得た最大の学びは、野球に対して計り知れないほど大きな愛を注ぎ続けること。好きこそものの上手なれ、ではないけれど、野球が大好きでたまらない気持ちが偉大なキャリアを生んだ。そして今もやり残したことがあるのではなく、野球が大好きだから練習しない理由がないんだ。もちろん、僕も野球が大好き。違う点もあるけれど、野球に対して同じ熱量の愛情を注げるからこそ、僕たちはウマが合うんだ」 昨季負傷離脱したクロフォードを全面サポート「そんな義理はないのに」 30歳のクロフォードもイチロー氏に心酔する1人。2018年オフにフィリーズからトレード移籍してきて以来、師と仰いでいる。中でも貴重な時間となったのが、2024年に右脇腹負傷、右手骨折と相次いで負傷者リスト入りした時だ。「一緒にワークアウトをしたり、キャッチボールをしたり、守備練習をしたりしてくれたんだ。彼にしてみれば、そんなことをする義理はないのに、僕だけではない、誰のためにでもやってくれる。感謝しかない」と手を合わせる。 子どもの頃は打席に立つとイチロー氏の仕草を真似していたというクロフォード。憧れの人と同じチームになり、何よりも驚いたのが「その気さくさ」だったという。 「イチローと言えば、誰でも知っている伝説の選手。なのに壁を作ることはなく、ジョークも交えながら話し掛けやすい雰囲気を作ってくれる。『何でも聞いてくれ』という言葉に甘えて、顔を合わせるたびに質問攻勢してしまうけど、嫌な顔ひとつせずに聞く耳を持ってくれる。毎日贅沢すぎる時間を過ごさせてもらっているよ」 イチローイズムを受け継ぎ、主力としてマリナーズを牽引する2人だが、声を揃えるのが「贔屓目なしに、今、イチローが現役復帰しても驚かない」ということだ。「明日の先発ラインナップに名前が入っていても、『あ、今日はイチローね』と何の疑問もなくスルーしてしまうかも」とロドリゲスが笑えば、クロフォードは「ユニホームを着て外野守備についても違和感ないよね。DHであれば確実に毎日プレーできる」と太鼓判。起こることのない奇跡だが、もし現役復帰となった時、誰よりも大喜びするのは、この2人かもしれない。(佐藤直子 / Naoko Sato)