【クーパーズタウン（米ニューヨーク州）＝帯津智昭】米大リーグのマリナーズなどで活躍し、日本人初の米国野球殿堂入りを果たしたイチローさん（５１）が２６日、ニューヨーク州クーパーズタウンで表彰式典の前日記者会見に臨み、現在の心境や現役時代の思い出などを語った。 　日本人初ということについて、「１人目がいなければ次はない。その１人目が僕だったことを、すごく光栄に思う」とイチローさん。大観衆の前でスピーチを行う２７日の式典に向けて、「スピーチのプレッシャーで押しつぶされそうになっている。もちろん緊張している。スピーチの準備を本当はしなきゃいけないけど、今日の朝も僕は球場に行ってロングトスして、走って、バットを振っていた。そっちの方が大事なんでしょうね、もっと」と語った。 　オリックス時代に登録名を「イチロー」に変えてレギュラーに抜てきしてもらった仰木彬監督については、「もしここに監督がいたら、うれしそうに、そこでにっこりされていると思う」と懐かしんだ。「人生というのは、自分自身もそうだけど、人との出会いで決まっていくところがある。（仰木監督は）最も大きな影響を受けた方。これは、どれだけ感謝してもしきれない」と恩師への思いを口にした。 　会見後は、殿堂入りした元選手らのパレードに妻の弓子さんとともに参加した。移動用のトラックの荷台に座り、「イチロー」コールが沸き起こる中、沿道に集まったファンに笑顔で手を振った。 ◇ 記者会見でのイチローさんの主な一問一答は次の通り。 　——現役時代に野球殿堂博物館に来ていた目的は。 「シーズンを戦っていると、自分の心が濁っていくこともたくさんあった。クーパーズタウンを訪れると、それをすごくきれいにしてくれた。本来、野球選手が持っていなくてはいけない感情を戻してくれた」 　——その感情とは。 「うまくなりたい、今でもうまくなりたいと思っている。僕の中の大きなモチベーション。打撃には（完成という）終わりがない」 　——野球で１番の思い出は。 　「恐らく、この先もこれ以上の地獄はないという経験は（愛知・愛工大名電）高校の２年半。何か困難なことが現れた時は、高校の寮生活を思い出すことが多い」 　——亡くなった長嶋茂雄・読売巨人軍終身名誉監督について。 　「とても偉大な存在だった。人が長嶋さんをどう見ているかをすごく認識されていて、ご自分がどう振る舞うことが正しいのか、それを追い求められた方だと思っている」