「加害少女」は社会復帰、父親は自殺…「佐世保高1女子生徒殺害事件」 同級生を殺害・解体した15歳の“本当の顔”

 2014年7月26日に長崎県佐世保市で発生した、高校1年生の女子生徒(15)による同級生殺害事件。自宅マンションの一室でクラスメートを殺害し、一心不乱にその遺体を解体する——。血も凍るような光景を繰り広げた少女Aの所業は社会に大きな衝撃を与えた。 【前編】では、事件の詳細と、地元の大物弁護士を父に持つ、少女Aの恵まれた環境について記した。【後編】では、そんな彼女が隠し持っていた“裏の顔”と、事件後、彼女の父親を襲った“悲劇”、そして、11年後の現在の元「少女A」の近況について詳述する。 【前後編記事の後編】 (以下は、「週刊新潮」2014年8月7日号記事の再録です。文中の年齢、役職、年代表記等は当時のものです)  *** 【写真】15歳「少女A」と自殺した父親、凄惨な事件現場となったマンション 給食に漂白剤を混入 「Aちゃんが幼稚園に通っていた頃、うちの子は彼女と一緒の絵画教室に行っていました。そこでのAちゃんの評判は良くなかった。彼女は落ち着きがなく、感情の起伏が激しいので、徐々に他の子たちから避けられるようになっていったのです。結局、Aちゃんが来る曜日だけ、教室はガラガラになってしまいました」 事件の捜査を行った長崎県警・佐世保警察署  とは、先の少女Aの一家を知る人物。 「あと、Aちゃんは小学6年生の時、気に入らない子の給食に漂白剤を混入したことがある。大事にならなかったのは、母親が教育委員を務めていたからではないか、と囁かれました」  少女Aが通っていた小学校の関係者によれば、 「給食に異物を入れられたのは男児と女児。女児はその影響で生理が止まってしまった。騒動後、小学校の校長は左遷され、担任の先生は別の学校に転任になった。また、Aちゃんはそれ以来、授業を受けず、保健室に通うようになった」 本人は謝らず  実際に給食に異物を混入された、少女Aの小学校時代の男子同級生は、 「給食の玉子スープに入れられたのです。食べ終わった後、Aが私の席に来て奇妙な笑みを浮かべながら“分かった?”と言う。“何が?”と私が聞くと、彼女は“水酸化ナトリウムば入れた”と言いました」  として、こう話す。 「まさかと思いましたが、気になったので放課後、Aに声をかけたらポケットから封のできるビニール袋に入った透明の液体とスポイトを取り出し、こう言ったのです。“理科の先生に理科室の鍵を借りて持ってきた”と。言葉を失いましたね。私は2日後、そのことを担任の先生に言った。するとしばらくして、校長や両親と一緒に本人が謝りにきた。でも本人はなかなか謝らず、大人に促されてようやく謝っていました」 猫を殺して解体  先の社会部デスクは、 「Aには、小学生の頃から、猫を殺して解剖したり、家出したりといった問題行動があった。Aの母親はそのことに胸を痛めていた」  と話すが、この母親が昨年秋に病死したことは【前編】で記した。先の幼馴染は、 「Aちゃんはお母さんっ子だったのでショックだったと思います。ただ、Aちゃんが辛かったのはお母さんのことだけではなく、実は、お祖母ちゃんのこともあった。お母さんが亡くなる1、2年前、一緒に住んでいたお祖母ちゃんも亡くなり、塞ぎこんでいたことがありました」  と、こう語る。 「そこからようやく立ち直った頃にお母さんが入院し、しばらくして亡くなった。その頃から学校にはほとんど行っていなかったようです。お母さんが亡くなって半年もしないうちにお父さんは再婚した。Aちゃんはそれが本当にショックで、“お母さんのこと、亡くなってから、どうでもいいとがな。すぐ女の人連れてきて、あんまりお母さんのこと、想ってないんじゃなかろが”とこぼし、“(父と継母とは)一緒に住みたくない”と言っていました」  少女Aが一人暮らしを始めたのは今年4月だが、 「15歳の少女に一人暮らしをさせる理由について、父親は“留学生活への準備”と周囲に語っていました。しかし実際は、Aと継母の不和が原因だった。Aが一人暮らしをしていなければ事件は起こらなかったかもしれません」(先の社会部デスク) トップクラスの収入  そんな少女Aの父親が経営するのは、7人の弁護士を抱える県内最大手の法律事務所である。 「父親は大手通販企業や佐世保市医師会の顧問弁護士のほか、倒産案件などを数多く手掛ける弁護士として知られています。若い頃から地元の青年会議所に入って活動し、その人脈から顧客を広げていったのです。また、佐世保は米軍基地があることから、米兵による事件が多いのですが、彼らの弁護も率先して引き受けてきた。儲かる案件をしっかりとこなしてゆく。ひとことで言えば、やり手ですね」(地元のテレビ局関係者)  少し古いが、2004年の長者番付によると、年間で3000万円以上を納税しており、佐世保市でもトップクラスの収入があることが窺える。  その一方で、少女Aの父親は愛妻家という評判だった。 「Aのお母さんは、若い頃、地元のテレビ局に勤務していたことがあり、主婦になっても社会活動に熱心で、スケート団体の会長という立場でもありました」(同) 家族のエピソード  だが、そんな母親を襲ったのが、すい臓がんだった。このがんは進行が早く、生存率が低いことでも知られている。昨夏に病巣が見つかると、少女の母親はわずか3カ月後の10月に亡くなってしまう。今年1月末の地元紙には、母親をしのぶ家族のエピソードが紹介されている。父娘で国体のスピードスケート競技に出場したときのものだ。 〈昨年7月、当時51歳だった妻の××(名前)が、腹部の痛みを訴えた。検査の結果はがん。医者からは「手の施しようがない」と告げられた〉  痛みに耐える妻を前に、夫は何も手につかなくなりそうだったという。 〈そんな生活が続いていたある日、妻が夫に優しく語り掛けた。「頑張っているあなたが好きなんだから」。(中略)「スケートどころではない」とも思ったが、妻のあの言葉が背中を押してくれた。(中略)迎えたこの日、霧降スケートセンター。今年は長女と一緒に、妻との約束のリンクに立った。「娘も無事に滑り終えてくれ、家族にとっての集大成の大会になった。妻がいたら2人の名前を応援してくれたんでしょうね」。胸に熱いものが込み上げてきた〉 金属バットで父を殴る  スケートリンクでも亡き妻のことを忘れない夫。だが、その後にとった行動は、少女Aにとって驚くべきものだったに違いない。 「Aのお父さんは、しばらくすると婚活パーティーに顔を出すようになったのです。そこで射止めたのが21歳も年が離れた有名大学出身の女性でした」(Aの知人)  そして、今年5月、父親は再婚。少女Aは一足先にマンションに引っ越していた。 「Aの父親は、以前、フェイスブックに娘から“バカボンパパ”をデザインしたケーキをもらったと書いています。自分の父親をバカボンパパになぞらえるとは、ずいぶんな扱いですが、今年の春にはもっと酷い事件が起きている。再婚に反発したAが、なんと金属バットで父親の顔をぶん殴って重傷を負わせたのです。そんな父娘の関係だから、Aはスケート競技も好きではありませんでした。練習は福岡市のリンクまで行ってするのですが、彼女は行くのを嫌がっていましたから」(社会部記者)  ***  事件後、少女Aは長崎家庭裁判所に送致され、少年審判を受けた。  審判の最中の2014年10月、少女の父親が自宅で首を吊り、自殺を遂げた。事件後は「このまま生きていていいのか」「どうやって償っていけばいいのか」と周囲にしきりにこぼしていたという。  そして事件から1年後の2015年7月、少女Aの第3種少年院(旧・医療少年院)送致が決定した。その際の家裁の決定文にはこうある。 〈少女は小学5年時、見かけた猫の死体にひきつけられ、猫を殺すようになった。中学では、猫を殺した後に解体するようになり、さらに人を殺したいと思うようになった〉 〈少女は重度の自閉症スペクトラム障害(ASD)であり、併存障害として素行障害を発症している〉 〈猫を殺す自分に苦悩しつつ、その一方で猫を殺すことでは満足できなくなり、解体を始め、さらには殺人欲求を抱くようになった。その後、実母の死を体験したことで殺人空想が増大し、殺人欲求が現実感を帯びていき、本件非行に至った〉 〈少女の特性や非行メカニズムに応じた治療教育の実施が期待できる第3種少年院で処遇することが望ましい〉  少年院は20歳までの収容が原則だが、少女Aは2018年に3年間の収容継続が決定。2021年にも「収容者の精神に著しい障害があり、矯正教育を継続する必要がある」とさらに3年間の収容継続が決まった。しかし、収容の最大の年齢である26歳を迎えた2024年には、彼女が既に出所していたことが明らかになった。  少女Aは更生できたのか。その答えは、事件から11年経った今でも少年法の闇に包まれ、未だはっきりと見えてはこないままである。 【前編】では、自宅マンションの一室でクラスメートを殺害し、一心不乱にその遺体を解体する——血も凍るような事件の詳細と、地元の大物弁護士を父に持つ、少女Aの恵まれた環境について記している。 デイリー新潮編集部

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