6月上旬、〈東洋大学卒ってなんだ。中退どころか除籍であったと記憶している〉という“怪文書”が静岡・伊東市議らのもとに届いたことから始まった田久保真紀市長(55)の学歴詐称問題。その後、7月7日に伊東市で建設業を経営する男性が、学歴を偽ったことで公職選挙法違反の疑いがあるとして刑事告発。同日には市議会が百条委員会の設置を決定し、東洋大学の「卒業証書」とされる資料の提出を求めていたが──NEWSポストセブンは田久保市長を取材。本人が騒動について口を開いた。【前後編の後編。前編から読む】 【写真】「両手にいっぱいの花束」”伊東のジャンヌ・ダルク”田久保真紀(51)、当選直後の嬉しそうな笑顔 田久保市長は7月18日、百条委員会から求められていた“証書”の提出を拒否し、回答書を提出していたが、この日、新たな動きがあったという。大手紙政治部記者が話す。 「市議会の中島弘道議長宛てに“告発文”が届いていたことがわかりました。この告発文は田久保市長が最終学歴としていた『平成4年東洋大学法学部卒業』と同じ経歴を名乗る匿名の人物から送られたもので、なかには〈田久保だけ卒業できないのはかわいそうなので、卒業証書をお遊びで作ってあげた〉といった旨の文言が綴られていた。市議会はこれを公文書に指定し、内容を慎重に精査していく方針のようです」 田久保氏は刑事告訴の証拠物になるとして、弁護士管理のもと、証拠保全の一環で金庫に“証書”を保管しているという。また議会が追及する“証書らしきもの”の真贋については「そこを深掘りするつもりはない」としていた。 そもそもの発端である6月上旬の“怪文書騒ぎ”の2日後、伊東市長は中島議長らに“証明書らしきもの”を見せる機会があったという。この時の状況をのちに中島氏は「チラッとしか見せてくれなかった」と取材陣に話しているが、本人は納得のいかない事情もあったようだ。 田久保市長が明かす。 「あの日は市長就任の挨拶に議長と副議長が来られただけで、その話でいらしたわけじゃないんですよ。どうやって知ったのかわかりませんけど、たまたま(証書)持ってきていたところにいらしたので、『じゃあご覧になりますか』ということで。 “チラ見せ”だったと私は思わない。でもなんか雰囲気的におかしい感じだったので、申し訳ないけど録音もあります。Facebookで『私は録音もあるし、議長もだいぶ違うこと言っていますが、訂正するべきじゃないんですか』と投稿したら(現在は削除済み)、ご本人がコメントしてきましたから録音があることは彼も知っているはず。 議長もお怒りになり、結局は“チラ見せ”の報道だけがエスカレートした。あの話がベースみたいになってしまったこともあって、支援者などからは『実のところはどうなんだ』という声もあり……。当初、一部の方には証書も見せていたし、録音も聞かせていたんですよ。その中には地元の記者の方もいらっしゃった」 伊東市といえば、3期連続で務めた前市長の小野達也氏以前から、30年以上も自民党系の政治家が治めてきたエリアだ。その中でことし5月、市長選に打ち勝った非自民党系の田久保氏は伊東の“ジャンヌ・ダルク”とも言われ、支援者も「勝ったのは奇跡」と舌を巻くほどだった。 それだけに、一部では「学歴詐称疑惑の裏に保守政権の“利権”が絡んでいるのでは」と囁く支援者もいるようだ。このことについて田久保氏は「実際に利権自体はあると思います」と主張する。 支援者が囁く“利権の影” 「ハメられたっていうか、わかりやすい構図ですよね(笑)。刑事告訴も一種、前回の選挙のカウンターというか……。詳しくはここでは言いませんが。告発した方は前市長の小野達也さんの後援会『未来をひらく会』の後援会長さんでいらっしゃるし、政治資金パーティーの発起人にもなっている方です。 私のほうは支援者も含めて全くネガティブキャンペーンをする気はないんですけど、小野さんだって叩けば埃が出るのをみんな知っているはず。でもこの町ではあまりに当然になっちゃっていて問題にならないんです。前の政権から、そういうことが綿々と続いているから。町中では『そうだよねー』で終わる話が、外の人が聞くと『えっ?』みたいになるっていうことがたくさんある」 “叩けば埃が出る”と主張する根拠については定かではないが、「敵が多い」ことをほのめかす市長。地元紙で「田久保氏のカフェで本人から卒業していないと聞いた」という証言があったことについて質問すると、このように漏らした。 「それ誰なんでしょうね? ああでも、わかりますよ。1人、言いふらしているんだろうなっていう方は見当がついています。でもやはり、先に出た怪文書で、私の知らないはずの個人情報が知られていたことはショックでしたね……」 本人の気持ちは再選挙にも向いているようだ。取材の最後にはこう語った。 「基本的には一度ちゃんと辞任して、(再出馬)するべきかなというふうにお話しさせてもらっています。『もうやるんじゃねえ』とか怒りの声もあったり、いろんな事情があることは承知していますが、ちゃんと市民の方と今後を考えていかなければと思っています。 マスコミとの信頼関係がなくなっていて、あることないことすべて書かれてしまうのであれば、もう自分自身で発信していくのがいいのかなとも思っています。 やっぱり伊東は小さい町ですから、そういう誤情報が広まるリスクがあるくらいだったら、ちゃんと自分で。私もSNS使わないわけじゃないので、きちんと自分で発信して、足りない部分は直接出向いていって、市民の方とお話しする。そういう姿勢でいこうかなと思います」 あくまでも、自身の主張を貫いている田久保市長。百条委員会への証人として正式に出頭を求められていて、次回は25日午前10時に開かれる予定だ。委員会は卒業証書の提出を拒んだ理由、除籍となった経緯などについて直接、説明を求める方針だという。今後の動向に注目が集まる。 (了。前編を読む) 情報提供募集 「NEWSポストセブン」では、情報・タレコミを募集しています。情報提供フォームまたは、下記の「公式X」のDMまで情報をお寄せください。 ・情報提供フォーム:https://www.news-postseven.com/information XのDMはこちらからお送りください。