武蔵野支局長　石井一秋 　東京都調布市の古(こ)刹(さつ)・深大寺。 　門前には江戸時代から続く名物「深大寺そば」を提供するそば店が並び、休日ともなれば参拝客が列をなす。その一つで、創業５０年以上の「深大寺そば　きよし」ののれんをくぐった。 そば粉産地や調理法に決まりなし 　「深大寺そばには、こうでなくてはならないという決まりはありません」。共通のそば粉の産地や調理法があるのか、店主の和地弘樹さん（３２）に尋ねると、こう答えが返ってきた。寺の近くに小さなそば畑はあるものの、収穫されたそば粉は毎年秋頃に開かれる「深大寺そばまつり」で使われるという。 　各店が独自のそばを提供するなか、「きよし」では北海道産の一番粉を売りにしている。そばの実をひくと最初に出てくる粉で、食感や喉越しの良いそばが作れるという。そばの風味が落ちないよう、そば粉８割、つなぎの小麦粉２割の「二八そば」にこだわる。 　一押しメニューの「特製鴨(かも)せいろ」（１８００円）を注文した。鴨肉はナスやネギなどの野菜と別の皿に盛られ、食感は軟らかい。和地さんは「肉が硬くならないように、丁寧に焼いて蒸してローストビーフのように仕上げている」と語る。 　鴨肉には下味がついており、そのまま食べても、辛めの冷えたつゆにくぐらせてもおいしい。肉が脂っこくないので、そばと一緒に絡めてもするすると食べられる。 こちらもオススメ…黒糖そば団子 　食後の甘味には「黒糖そば団子」（４５０円）を頼んだ。こちらは、そばの香りを十分に楽しんでもらうため、そば粉１０割だという。たっぷりかかったきな粉と黒蜜の甘い香りに負けることなく、絶妙にマッチしている。 　周囲には２０軒ほどのそば店があり、それぞれ売りのそばや甘味を用意している。食べ歩きするのも一興だ。 　※税込み。記事中の値段などは紙面掲載時のものです。 ◇ 　国内外の総支局長が、日頃通っている店のおすすめメニューなど、地域の自慢の味を紹介します。 深大寺そば　きよし 　東京都調布市深大寺元町５の１２の２ 　午前１１時〜午後６時半（ラストオーダー午後６時）。 　月、火曜定休（祝日は営業） 　詳細はウェブサイトで。