石破首相は記者団に対し、辞任するとの報道を否定しました。ただ、自民党内には、石破首相の辞任は避けられないとの見方が急速に広がっています。石破首相は辞めるのか、辞めないのか。最新情報を日本テレビ政治部官邸キャップの平本典昭記者に聞きます。 ◇ ——夜になって最新情報は入ってきていますか? 夜になって「総理は辞めざるをえない」という声が多く入ってきています。まず、首相経験者との会合に参加していた1人に話を聞けました。「進退について話はなかった。辞めると言ってないが続けるとも言ってなかった」と述べています。さらにある現職閣僚の1人は23日夜「石破総理は続投と言っているが続投できると思っている自民党議員はほとんどいない」と語っています。 ——石破首相は「退陣する」という報道に対して「一切ない」と否定する一方、日本テレビでは「辞めざるをえない」と報じています。今、何が起きているのかわかりやすく教えてもらえませんか? この状況を表現するのに実は、私も政治部の中で議論をし、どういった原稿が適切か悩みに悩んで書いています。原稿にない部分のカラクリを説明します。 主に2点、要因があります。 1点目は石破首相の「表」の発言とその「裏」で進む自民党内の客観的な状況に生じているギャップです。 石破首相は「出処進退の話は出ていない」と現時点で続投する考えを示しています。一方で党内を取材すればするほど、水面下では客観的に「辞任は避けられない」との見方が急速に広がっているんです。 なぜか。地方の県連から「辞任すべき」という声が続々とあがっています。さらに身内の自民党の若手議員を中心に公然とトップに対して「辞任すべき」という声が拡大しています。2つとも異例の「辞めろコール」です。 石破首相は「表」では続ける発言をする。その「裏」、党内では辞めろという声が拡大。このギャップがあるため、石破首相は現時点で辞任は否定しているけど、客観的な状況として辞めざるをえないという伝え方をしています。 ——なぜそういったギャップが生まれてしまうか。そこにカラクリはありますか? それを紐解くには、石破首相の進退をめぐる表現があるとみています。 23日、関税協議を受けて進退を判断するのか聞かれ、石破首相はこう答えました。「赤沢大臣から報告を受けてよく精査をしていく」。この言葉をどう理解しますか? ——関税協議を責任持って把握するために、トランプ大統領との会話の中でどんな温度感があったのか知りたかったのではないか? ある閣僚に聞きました。こう解説しています。「辞める気がないなら関税協議のあとも辞めない」とはっきり言えばいい、と。 はっきり言わないんですよね。これはよく言えば石破首相の側近は「ウソはつけない性格なんだ」と表現しています。 石破首相は周辺にも進退について「関税協議で結果が出れば改めて判断する」とも話していたそうなんです。進退について「精査をする」「改めて判断をする」という言い方が、続投をよく思わない多くの議員に「辞めることも選択肢に入れているのだな」と「つけいる隙」を与え、さらに辞任論が加速する結果につながっているといえます。 ——23日、アメリカとの関税協議が合意したことも進退をめぐる判断に影響は与えたのでしょうか? それもあります。 関税の決着で「花道退陣論」が強まりました。ある自民党幹部は「関税協議の決着は辞める大きな理由になる」、閣僚の1人も「総理自身が辞められない理由にあげていた障害が取り除かれた」と指摘しています。 石破首相の思いとは別に党内の石破おろしの加速関税決着で障害がなくなったことで、辞任論が急速に拡大することになったと言えます。 (7月23日放送『news zero』より)