大谷翔平だけではない!オールスターで打撃でも活躍した投手列伝 巨人・水野雄仁は“サヨナラ犠飛”の快挙達成!

「マイナビオールスターゲーム2025」が7月23日と24日に開催される。オールスターで活躍した投打二刀流といえば、日本ハム時代の大谷翔平(現・ドジャース)が知られるが、昨年も第1戦で山崎福也(日本ハム)が投手兼DHの2番打者で初回に安打、床田寛樹(広島)も9回に代打安打を記録するなど、2人の投手が打つほうで結果を出した。そして、大谷以前にも、球宴で野手顔負けのバッティングを披露した投手たちが存在した。【久保田龍雄/ライター】 【写真】美しいピンクのドレスに身を包んだ真美子夫人と“オールスター名物”レッドカーペットを歩く大谷翔平選手の後ろ姿 シゲのバットはバランスが取れている  まず、勝利投手になったばかりでなく、借り物のバットで決勝打まで放ったのが、国鉄時代の金田正一だ。 まもなく始まる球宴(NPBの公式ホームページより)  1960年の第2戦、1点リードの8回、足に打球を受けて降板した鈴木隆(大洋)に代わって無死一塁から全セの6番手として登板した金田は、最初の打者・本屋敷錦吾(阪急)に中前安打を許し、無死二、三塁から内野ゴロの間に同点を許すが、「何くそ!」と気合で後続2人を打ち取ってピンチを切り抜けた。  そして、4対4の9回表、2死三塁の勝ち越し機に金田に打順が回ってきた。「誰か代打が出るものと思って」ベンチで汗を拭いていると、「全然代える気はなかった。後楽園でもあるし、大試合はやはり金田に頼る以外にない」と延長戦を見越した水原茂監督(巨人)から「オイ、行け!」と命じられた。  この日はバットを持ってきていなかったため、長嶋茂雄(巨人)から一番軽いバットを借りて打席へ。「打てなくても当たり前」という気楽さが功を奏し、土橋正幸(東映)から見事右前へ決勝タイムリーを放った。  その裏、野村克也(南海)を遊ゴロ、半田春夫、広瀬叔功(いずれも南海)を連続三振に切って取り、結果的に決勝打、勝利投手と投打にわたる活躍で、殊勲賞(MVP)に選ばれた。  試合後、金田は「久しぶりに殊勲選手になれて、気持ちはいいね。シゲのバットは軽くてバランスが取れている。さすがに大打者の(バット)は違う」と快打を生んだ長嶋のバットに感謝することしきりだった。  投手としてNPB史上最多の通算38本塁打を記録するなど、打撃も良かった金田は、オールスターでも通算3度代打で起用され、1968年の第3戦では代打安打を記録。代走を投手の堀内恒夫(巨人)が務める珍場面も見られた。 僕は当たれば飛ぶんや  投手ながら1963年5月12日の東映戦ダブルヘッダーで、第1試合に3番ピッチャー、第2試合に3番ファーストで出場したことで知られる“元祖二刀流”梶本隆夫(阪急)も、金田と同じ68年の第2戦で9回に代打タイムリーを放っている。  投手として球宴史上初の快挙を達成した試合で、豪快な本塁打を放ったのが、阪神時代の江夏豊だ。  1971年の第1戦、初回に3者連続三振と好スタートを切った全セの先発・江夏は、2回表、武上四郎(ヤクルト)のタイムリーで1点を先制し、なおも2死一、二塁で打順が回ってくると、米田哲也(阪急)の2球目、高め直球をフルスイング。  凡退して「早くマウンドに戻りたい」一心からだったが、ジャストミートされた打球はグングン伸び、右翼席後方の屋根を直撃してポーンと弾むと、なんと、場外に消えていった。  打者も顔負けの特大3ランに、全セ・川上哲治監督(巨人)は「それにしても、あのホームランは凄かった」と目を白黒。江夏も「オープン戦で打ったのと合わせて、今季2本目。僕は当たれば飛ぶんや」と胸を張った。  会心の一発で乗りに乗った江夏は、投げるほうでも3イニング打者9人を全員三振に打ち取る“神ピッチング”を披露。9者連続三振は球宴史上初の快挙だった。 “江夏ショック”に陥った全パの各打者は、江夏降板後もサッパリ打てず、まさかのノーヒットノーラン負け。これまた球宴史上初の珍事に、全パ・濃人渉監督(ロッテ)は「江夏が速くて良かった。それに一発打たれたのも痛かった」と脱帽するばかりだった。 投手がサヨナラ劇の主役に  ちなみに、球宴で本塁打を打った投手は、江夏と1960年第3戦の巽一(国鉄)の2人だけ(2016年第2戦の大谷はDHで出場)。くしくも打たれた投手は、どちらも米田だった。  高校時代の強打を買われて代打に起用された投手が、見事サヨナラ犠飛を打ったのが、1988年の第3戦だ。  3対3で迎えた延長12回、全セは先頭の正田耕三(広島)が右中間に三塁打を放ち、広沢克己(ヤクルト)も四球で、無死一、三塁と一打サヨナラのチャンス。  次打者は投手の中山裕章(大洋)なので、当然代打だが、総力戦ですでに野手を使いはたしていた。  ベンチの王貞治監督(巨人)が「(投手の中から)誰を代打に送ろうか?」と相談すると、落合博満(中日)はじめ全員が「水野(雄仁=巨人)、行け!」と叫んだ。  水野は池田高時代に“やまびこ打線”の4番を打ち、夏の甲子園で満塁本塁打を打った強打者とあって、王監督も「思い切って行け!」と送り出し、チームの先輩・原辰徳も「これを使えよ」と愛用の黒バットを提供した。 「あんなに緊張したのは初めてです」と半ば夢見心地で打席に立った“阿波の金太郎”だったが、そこは昔取った杵柄。カウント1-2から牛島和彦(ロッテ)の4球目、「ストレートが来る」と読み、狙いどおり、直球をフルスイングすると、快音を発した打球はあわやサヨナラ3ランという大飛球になった。惜しくもバックスクリーンの1メートル手前で佐々木誠(南海)に捕球されたものの、殊勲のサヨナラ犠飛に。投手がサヨナラ劇の主役になったのも、サヨナラ犠飛による決着も、球宴史上初の珍事だった。 久保田龍雄(くぼた・たつお) 1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。 デイリー新潮編集部

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