国会議論は行き詰まり、宙に浮く「皇位継承問題」…愛子さまと悠仁さまの未来はどうなるのか?

 皇位継承のあり方について、額賀福志郎衆院議長は先月閉会した国会中に立法府としての合意案を取りまとめる方針を表明していたが、結局は見送られた。各党との非公式協議が重ねられ、女性皇族が結婚後も皇室に残る案については「共通の認識が得られた」が、旧宮家の男系男子を養子に迎える案は「共通の認識が得られなかった」ためだ。額賀議長は「秋の臨時国会に向けて各党と調整する」としているが、悠仁さまや愛子さまなど、次世代の皇族方の未来は依然不透明なままとなった。 【写真7枚】当時8歳「愛子さま」と子猫のふれあい、乳牛に向けられた「雅子さま」の柔らかいまなざし…“動物愛”あふれる天皇ご一家 男児誕生に沸いた国民 「若い世代の皇族(注1)には、秋篠宮家の次女・佳子さまや高円宮家の長女・承子さまもおられますが、皇位継承と密接に関係するのはやはり、皇嗣家の長男で、唯一の男性皇族・悠仁さまと天皇家の長女・愛子さまでしょう」 お二人の未来は  宮内庁の幹部経験がある元キャリア官僚はこう語る。  その悠仁さまは9月の成年式を前に、進学した筑波大で生物学へのアプローチを本格化させたばかり。皇室では生物研究の道を歩んだ先輩に、クラゲの仲間・ヒドロ虫類を研究対象とした昭和天皇。ハゼの分類に励まれた上皇陛下。動物の細胞、特に腫瘍についての学びに取り組まれた常陸宮さまがいる。  戦前は、憲法と同格の法規と位置付けられていた皇室典範で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」としているだけに、まさに待望の皇族男子誕生となった悠仁さま。41年ぶりの男児に国民が沸いたのは当然のことだった。  一方で、周囲には常に身の回りのお世話や、警備を担当する取り巻きがいるとはいえ、皇族も当然、病気や事故による不慮の事態は起こり得る。近現代を例に取っても、北白川宮能久親王は日清戦争終結後の1895(明治28)年4月、すでに中国でマラリヤの症状が出ていたが、独立の動きを見せていた台湾へ向かい、10月に発熱。病状がみるみるうちに悪化して亡くなっている。  また子息の北白川宮成久王は1921年(大正10年)にフランスへ留学。現地滞在中に車の運転を覚え、2年後の23年、ドライブ中にパリ西方約140キロのペリエ・ラ・カンパーニュ村付近でスピード超過によって巨木へ激突し、死亡している。  まだ還暦前で皇位継承順位第1位の秋篠宮さまや、2位の悠仁さまも、ご長寿が保証されているわけでは決してない。あってはならないことであるのは当然だが、不慮の事故や病気も100%防ぐことは、困難であるのは言うまでもない。 SNS時代到来の影響  旧華族関連の団体関係者は、こう指摘する。 「戦後、民間人になることとなった旧宮家が天皇家の『藩屏』、つまり盾のような立場で数多く存在したのは、お子さまが相次いで夭折(早死)したことに皇室存続の危機を感じた明治天皇が、新たな宮家創設を積極的にお認めになっていたからです。この事実からも分かるように、皇室を維持していくためにはセーフティーネットとなる存在が必須なのです。だからこそ、養子を認めた上で旧宮家を復活させる必要があるわけです」  ただ、過去には10代8人の女性天皇がいた事実があり、神功皇后や飯豊女王など根強く女性天皇説のある皇族もいた。女性皇族が結婚後も皇室に留まり、万が一の非常時には即位が出来る余地を残すことも、セーフティーネットの選択肢に加えてもいいはずだとの意見もある。実際、5月の毎日新聞による世論調査では、7割が女性天皇に賛成しているのだ。  他方、旧宮家の養子容認を強力にプッシュする自民党案が5月、具体的に明示された。それによると、養子は15歳以上の男子が対象。養子縁組み規定自体は恒久的な制度として法律で定めた上で、養子となった男系男子は皇位継承の資格を持たないものの、その後に生まれた男児は資格を持つとしている。  ある宮内庁OBは、 「旧宮家出身の成人男性が、違法薬物の事件で過去に逮捕された事実があるほか、SNSが大きな影響力を持つようになった現在では、最近の話なのかそれとも大昔の話なのか、刑事事件であるかどうか、さらには時効であるかどうかも一切関係なく、アイドルタレントら著名人のスキャンダルが“さらされる”時代でもあります。いきなり皇室に入る養子自身に皇位継承権を与えないのは合理的な考えです。それは、同様に自民案で皇位継承権を認めないとしている皇室に留まる女性皇族の、夫についても同じことが言えます」  と指摘した上で、こう語る。 「組閣や内閣改造の際には新しい大臣について“身体検査”と隠語で呼ばれる事前の素行調査が行われますが、それでも不適切な『政治とカネ』や不倫問題などが就任後に発覚することは少なくありません。自民案はそういう意味でも的を射ていると思います」 皇統断絶とは背中合わせ  だが別の宮内庁OBは、こう推測する。 「秋篠宮家の長女・小室眞子さんの結婚がなかなか成立しなかった要因は、小室圭さんの母・佳代さんの金銭スキャンダルでした。親の行状は子供の将来にも影響を与えるという最たる例です。旧宮家、それも男系男子となると、極めて限られた狭い選択肢です。表現は適切ではないかもしれませんが、SNSで“狙い撃ち”にされる危険性は高いと言わざるを得ないのではないでしょうか」  佳子さまの誕生から12年の年月を経て、悠仁さまは2006年9月7日、東京都港区にあった愛育病院で誕生された。体重は2558グラム、身長は48.8センチ。皇族では初の帝王切開によるご出産となった。手術は午前8時23分に始まり、同9時7分に終了。同日午後には「賜剣の儀」が行われた。  誕生を控えた7月18日には宮内庁の金沢一郎皇室医務主管(当時)が記者会見し、紀子さまの胎盤がずれており、大量出血の恐れがある「前置胎盤」の状態であると発表。帝王切開する可能性を事前に示唆していた。実は悠仁さまは、前置胎盤の影響で母体内での発育が思わしくなく、出生体重が2500グラム未満の低出生体重児となる可能性があった。  かつては未熟児と呼ばれたため、「未熟」という悪いイメージを持たれかねないとして、金沢氏はオフレコで説明した後に「仮に2500グラムを下回っても、決して未熟児とは呼ばないように」と何度も何度も念を押し、神経を尖らせていたという。  前置胎盤は、母体を中心に生命の危険が当時は0.2パーセント程度に低下していたが、以前は10パーセントに上った。帝王切開に至ったことについて、上皇后美智子さまはこの年の10月、誕生日に当たり公表した文書で、こう語られている。 「私が初めて子供を授かった四十数年前、前置胎盤は非常に恐れられていた状態でした。特に当時まだ20代半ばであった私は、お産は太古も今もそう変わるはずはないという思いから(中略)大層心配いたしました」  ご生誕の際、既に母子で生命に危険が及んでいた悠仁さま。現在の皇室制度では、万が一にも病に倒れたり交通事故に巻き込まれたりした場合、セーフティーネットのシステムがいまだ全く整備されていない現状では、誰も天皇にはなれず、皇統は完全に断絶することとなるのだ。  8人の女性天皇のうち、3人目の持統天皇は一説に次期天皇の最有力候補だった草壁皇子が病気で亡くなったために急遽即位したと言われる。最後に宮内庁関係者はこう語る。 「結論の先延ばしは悠仁さまの将来も愛子さまの行く末も翻弄する結果を生むだけです。皇統のセーフティーネットの具体像を決めねばならないタイムリミットは、もう来ているのです」 【注1】 「若い世代の皇族」の「若い世代」は厚生労働省の規定する「若者」の「15〜39歳」に基づく。そのため彬子さまと瑶子さまは割愛した。 朝霞保人(あさか・やすひと) 皇室ジャーナリスト。主に紙媒体でロイヤルファミリーの記事などを執筆する。 デイリー新潮編集部

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