『グラディエーター』から24年…ルッシラ役続投でコニー・ニールセンが込めた思い

 映画『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』で前作から24年ぶりにルッシラを演じたデンマーク人女優のコニー・ニールセン(59)が来日時にインタビューに応じ、自身が同役に取り入れたことを明かした。  ルッシラは、マルクス・アウレリウス帝の娘。前作ではラッセル・クロウ演じるマキシマスと過去に関係があったことがほのめかされていたが、前作から十数年後を描く続編の主人公は、ルッシラとマキシマスの子であるルシアス(ポール・メスカル)だ。ルッシラは「ルシアスは死んだ」と聞かされ、荒廃していくローマ帝国に苦悩する日々を送っていた。  「第1作で素晴らしかったのは、26、27歳という若い女性としてのルッシラを見られる点だった。彼女はとても若くして義理のおじと結婚しなければならなかった。共同皇帝である父と彼の和平のための駒として使われていたから。第1作では彼女にはあまり選択肢がなかったけれど、彼女はローマがどうあるべきかを知っていた。そして、本作で見ることになるのは恐るべき女性よ」  「彼女はとんでもない犠牲を強いられた。息子を生かすために彼を手放したのに、死んだと言われた。そんな癒えることのない傷と共に生きてきたの。でも、彼女はまだ夢を諦めていない。ローマについての夢は価値があるものだと信じている。父はローマに平和と豊かさをもたらした最後の皇帝で、父の死から約20年、彼女はそれらすべてが失われるのを見てきた。自分が信じた価値観の死を目の当たりにした時、人はそれを余計に熱望するようになるのだと思う。わたしは、そういう要素をルッシラに取り入れたの」  「政治家たちは常に部屋で恐怖を与えていて、彼女はデンゼル(デンゼル・ワシントン演じる、力を持った奴隷商人マクリヌス)と2人の残虐な皇帝にも対処しないといけない。そして、子供のために血を流す心臓がある。役づくりでは共和政ローマがどのようにして終焉を迎えたかを説明したトム・ホランドの『ルビコン: 共和政ローマ崩壊への物語』を読んで、その知識を生かした。“内在する破滅への種”を彼女は見ることができると思ったから」  リドリー・スコット監督は通常、演技のリハーサルは行わないため、役について話し合いたいことがあれば撮影前に彼のところに行かなければならない。「だから、わたしがいつも朝一番にやっていたのは、彼のトレーラーのドアの前に立つことだった。ポール(・メスカル)が次に待っていたりしてね(笑)。みんな自分のキャラクターについて話すのに準備万端だった」  「いろいろアイデアを伝えると、彼は『イエス、ノー、ノー、イエス』みたいに答えてくれる。『ノー』と言われるのもまた、いいことなの。だって、わたしたちのアイデアは、いつも良いものであるわけではないから。わたしたちには、ただアイデアがあるというだけ。でもそれが、彼が求めていること。彼は、俳優たちに全てのアイデアを持って来てほしいと思っている。そして、彼は悪いアイデアを取り除く手助けをしてくれるの(笑)」  ビジュアルでの表現に長けているスコット監督の撮影現場では、さまざまな気付きがあったという。「セットにいると、彼が持ち込んだニュアンスや肌触りを感じることができた。例えばコロセウム(円形闘技場)に入るシーンでも、彼が何百ものホームレスの人々を通りに配置している。彼はビジュアルで、この社会は20年前とは違っているということを見せていた。混乱していて、無秩序で、貧困と不正がはびこっている。そのにおいをかぐことができるくらい。火が燃えていて、建物もちょっと汚く下品になっている。彼は言葉でそれを示したりしないけれど、観客はそれを見て、その状況を知る。説明されるのではなく、体感するの」  苦難の日々を送ってきたルッシラだが、愛も見つけた。「彼女が人生で初めて愛されているのを見ることができる。彼女を生かすためなら何でもする男性に愛されている」というそのお相手は、夫である将軍のアカシウス(ペドロ・パスカル)だ。  「わたしの撮影初日は、夫が帰ってくるシーンだった。もともとは、彼女が彼に駆け寄り『おなかすきましたか?』と言うような、主婦と仕事帰りの夫のシーンという感じだったから、リドリーに『ちょっと薄っぺらくないですか?』と言って、デンマークでのボノ(U2)とのちょっとしたパーティーでのことを話したの。彼の妻がちょうど到着したんだけど、二人は数週間会っていなかったにもかかわらず、彼女は向こう側にとどまっている。そうしたら、わたしと一緒に座って話していたボノが『彼女、僕の気を引いている?』って(笑)」  「そのことをリドリーに話すと、彼も『それいいね(笑)』と。だから、ペドロが帰って来た音は聞こえても、わたしは彼のもとに駆け寄ったりしないことにした。夫を誘惑し、戯れる感じね(笑)。ペドロが素晴らしいのは、とても遊び心があって、陽気で楽しいところ。わたしはそれが、わたしたちの間の本当に優しい、数少ない瞬間の一つであることを知っていたから、それを二人の関係の錨にするのが重要だと思って」と明かしていた。  ちなみにコニー出演作の続編といえば、妻役を務めた『Mr.ノーバディ』続編の全米公開も来年に控えている。コニーは「ちょうど撮影を終えたところなの。撮影は本当に素晴らしかった! カナダのウィニペグで2か月撮影をしたんだけど、本当にすてき。ボブ(主演のボブ・オデンカーク)は本当にラブリーな人で、わたしは彼が大好き。そして信じられないほどクールな人々が出演していた。前作から戻ってくる人たちと──誰かは言わないけど(笑)──とても素晴らしい悪役たちもいる」と期待をあおっていた。(編集部・市川遥) 映画『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』は公開中

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