絶好調のコメダ珈琲店 「コメダ珈琲店」の勢いがとまらない。 1968年に名古屋で創業した歴史あるカフェでありながら、フランチャイズ展開を始めた90年代から積極的に経営を拡大。中京圏で店舗網を充実させ、2003年に関東、2006年には関西に進出している。 現在展開する1008店の内訳は、中京圏309店、東日本圏350店、西日本圏349店舗と、全国的に釣り合いの取れた店舗網を築くことに成功している。運営元のコメダホールディングスは、2025年2月期で連結売上高470億円、営業利益は過去最高の88億円を計上した。 米国におけるコーヒーの歴史を紐解くと、インスタントコーヒーの流行を第1の波として、スターバックスやタリーズといったシアトル系コーヒーの流行を第2の波としている。そしてブルーボトルに代表される産地重視のコーヒーが第3の波で、これは業界で「サードウェイブ」と呼ばれる。 スターバックスやタリーズが高感度な都市住民に対してこだわりのコーヒーを提供し、ブルーボトルが産地へのこだわりによって人気を博してきたが、いずれも都市型立地の展開をしてきたことは共通だ。 それに対してコメダ珈琲は、郊外立地の路面型カフェを中心とした独自戦略を展開している。 滞在型で客単価を上げる 特徴は、まずメニューにある。コーヒーだけにこだわらず、コーヒーに合わせた各種スイーツを提供。とくにコメダが開発し、70年代から提供されているシロノワールはその代表選手で、今でも看板メニューのひとつとなっている。 食事も充実させ、名古屋出自らしくモーニングを提供するのはもちろん、サンドウィッチやハンバーガー、スパゲティなどとコーヒーを組み合わせるランチのセットメニューを開発。カツパンなどの独自メニューとあわせて、昼間の需要の取り込みに成功してきた。 通常、カフェはコーヒーなどの飲み物を中心とした提供になるため、長居をさせずに回転率を高めることに腐心する。セルフサービスを軸に展開してきたスタバやタリーズに対して、コメダ珈琲は広々とした店内にゆったりとしたソファを設え、一杯ずつ丁寧にハンドドリップしたコーヒーと、豊富な食事メニューを組み合わせることで客単価を上げ、あえて店内に比較的長時間滞在させる戦略をとっている。 いわば、「滞在型カフェ」として打ち出し、時間に余裕のある人たちに照準を絞ったのである。 そしてこの戦略が、実は郊外ニュータウンでヒットしている。 ニュータウンシニアからの支持 ニュータウンとは、1950年代から70年代にかけて、地方から都市部に大量に流入した人々の受け皿となった「団地」を主に指す。 ニュータウンの住民たちのほとんどは、仕事をリタイアして街に滞留している。ところが、入居当時にあった自営の店舗は、住民の減少と高齢化を受けて次々と撤退。古くなった家屋だけが並ぶ街になったところに、コメダ珈琲の戦略が見事にフィットしたのだ。 暇を持て余しているニュータウン内の高齢者にとって、コメダ珈琲は格好の暇つぶしの場所となっている。 寂しさを感じたら、地元のコメダ珈琲店に出かければ近所の高齢者に会うことができる。食事メニューも充実しているから、ランチを兼ねて何時間でもいられる。そのうちに続々と他の住民たちも来店する。 これまでは地元の内科や整形外科医院などに集まって、健康話のついでにおしゃべりしていたところから、美味しいコーヒーと食事が味わえ、飾り気はないけれど品の良い内装の店に「普段着」で出かけることができる場所として、コメダ珈琲の心地よさがうけているのだ。 しかし、ニュータウン住民からの支持は諸刃の剣でもある。 つづく記事〈千葉県内のコメダ珈琲店に迫る危機…専門家が警告「このままだと客が姿を消す」〉では、コメダ珈琲のニュータウン戦略の詳細と課題を解説する。 【つづきを読む】千葉県内のコメダ珈琲店に迫る危機…不動産の専門家が警告「このままだと客が姿を消す」