【中学受験・夏のメソッド】「夏休みのデメリットは“学校がない”こと」 子どもの“才能タイプ”と“限界”を見極める「勝負の夏」の家庭内戦略とは

 今や首都圏の小学生の5人に1人が中学入試に挑戦する時代だ。中学受験の熱は年々増し、熾烈を極める。そんな小学生たちをこれから待ち受けるのが「受験の天王山」と言われる夏休み。自由に時間を使えるおよそ40日をどのように過ごすべきか頭を悩ます保護者も多いだろう。「勝負の夏」をいかに乗り切るべきか、識者に聞いた。  *** 【写真】開成、麻布、女子学院…中学受験の“人気校” 「夏休みにおいて最大の“デメリット”は学校が休みになることです。普段の学校を中心に流れていた生活リズムが崩れるため、休みに入る前に保護者と子どもの間で時間の使い方を相談しておくことが重要です」  そう指摘するのは“中学受験のプロ”として8000組以上の親子と面談を重ねてきた教育家で「見守る子育て研究所」所長の小川大介氏だ。 「勝負の夏」をどう乗り切るか 「勉強するキッカケを与えることや集中の継続をサポートすることなど、普段であれば学校が担ってくれていたこれらの役割を夏休みの期間は家庭で補わないといけません。しかし、親御さんが家にいる時間は限られますから、安定した勉強習慣を維持するためにも夏休みにお子さんを塾や夏期講習に行かせるのは有益です」  加えて、夏休みを複数の“ブロック”に区切ってメリハリをつけて目標を立てることも大切だという。 「子どもだけでは40日間の夏休みに見通しを立てるのが難しく、ともすればゴールの見えない辛い時間になりかねません。そこで、休みが始まる前に“この日は旅行”“この日は模擬試験”などとイベントを決め、これを区切りに夏休みを4〜5ブロックに分割してあげると良いでしょう。勉強の見通しが立つだけでなく、ストレスのかかる苦手科目の克服などもブロックに割り振ることで勉強が嫌になってしまうことを避ける効果が望めます」 学年ごとの“夏”戦略  大手進学塾では小学4年生から受験対策カリキュラムが組まれており、そのため過程でも4年生から中学受験を本格始動させることが多いという。  夏休みになれば時間がたくさんあるからと、つい子どもに盛りだくさんの課題を与えてしまいがちだが、実は学年によって夏休みに求められるものは違う。 「4年生の夏は学習への拒否反応を和らげ、自信をつけていくことが大事だと思います。夏休み前に子どもの成績が伸び悩むと、親御さんは時間のある夏休みを使って勉強してほしいと塾の学習に期待しがちです。しかし夏期講習は内容理解よりも演習に力を入れる傾向が強く、基礎が理解できていない子どもは、意味が分からない問題ばかりを解かされてただ苦しいだけになりかねません。むしろ長い夏休みの時間を使って、どこが上手く行っていなかったのか家庭で徹底的に洗い出すことが大切です。また、夏のあいだに得意分野への興味を深めて“武器”を育てるのも一つの手でしょう。5、6年生に比べてタスクの少ない4年生のうちに、理科が好きな子なら科学館の展示物をコンプリートする、国語が好きな子ならシリーズものの小説を読破するといった挑戦をさせて自信をつけさせることも重要です」  5年生になると「割合や比」といった多くの小学生が苦手意識を持つ単元が登場する。抽象的な概念の理解には親のサポートが必須で夏休みはこうした苦手科目の克服には最適だ。しかし、取捨選択も必要だと続ける。 「夏休みというとそれまで学んだことの“総ざらい”をするという印象があるかもしれませんが、それが通用したのは20年以上前のことです。中学受験の難化が進み、対策で手いっぱいになったことで今や5年生のひと夏で“総ざらい”するのは不可能。それよりは限られた時間で子どもの苦手分野や得意分野に集中的に取り組んで、手ごたえを感じさせることの方がよほど重要です。例えば、理科などはテーマを絞りやすく点数への反映がしやすい」  子どもたちの間で学力差が開いていくのは5年生の9月頃から。ここで成績が伸び悩む子どもは勉強の手ごたえがなく自信を失ってしまっている状態だと小川氏は言う。 子どもの“限界”と“タイプ”を知る  どこが子どもの“限界”なのか、見極める目も保護者には必要だ。 「6年生の夏は問題を解くスピードや精度を上げて、より実践的な得点力を上げることが求められます。勉強が上手くいっていない場合には理想を追い求め過ぎずに早めに受験校を絞り込んで過去問に取り組み始めることが肝要です」  成績が伸び悩むとさらに勉強量を増やして解決したくなるが、そんな時こそ子どもの“タイプ”と向き合うことが大切だと小川氏は指摘する。  小川氏は学びと行動の傾向ごとに子どもたちを90タイプに分けて診断し、より良い子育てノウハウを広める活動を行っている。子どもたちは才能タイプごとにそれぞれ得意な勉強の進め方が異なるのだとか。 「一口に子どもといっても、目から入ってくる情報に敏感でビジュアルで全体像をつかんでから物事を理解するのが得意な〈視覚タイプ〉や、音や言葉に敏感で順序を立てて話を聴き論理的に整理するのが得意な〈聴覚タイプ〉など様々なタイプの子がいます。〈視覚タイプ〉には図表などで説明してあげる、〈聴覚タイプ〉には先に勉強の手順を示してあげるなどの接し方が必要ですが、子どもがどんなタイプかは親子の密接なコミュニケーションの中で初めて気が付けるものです」  子どもの頃の学びの傾向は親になっても変わらないというが、それゆえに親子のすれ違いに繋がることもある。 「中には〈視覚タイプ〉の親が〈聴覚タイプ〉の子どもに、自分が分かりやすいからとビジュアルを押し出した参考書を解かせるということがあります。タイプの異なる子どもに自分の勉強のやり方を押し付けている形ですね。しかしこれで勉強を分からせようというのは無理な話です。親子の軋轢を避けるためにも、子どものタイプを見極める際には保護者自身のタイプが何なのか理解することも大切なのです」  長く苦しい中学受験を乗り切るには親子の協力が不可欠なのだ。 デイリー新潮編集部

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