「大衆迎合主義」と訳されるポピュリズム。20日投開票の参議院選挙をめぐる一連の動きを通じ、これが日本でも明確に表れたと指摘されています。その背景やポピュリストに共通する主張、懸念されることについて、日本テレビ政治部長と考えます。 ■自分たちは人民側…ポピュリズムとは 忽滑谷こころアナウンサー 「政治家の発言などで聞くこともあるポピュリズムという言葉ですが、どういった意味なのでしょうか」 井上幸昌・日本テレビ政治部長 「日本語では『大衆迎合主義』と訳されることが多いですが、参院選をめぐる一連の動きを通じて、ポピュリズムが日本でもはっきりと表れてきた、と指摘されています」 「研究者らの考えをまとめると、社会を『人民』と既成政党などの『エリート』の対立と捉え、自分たちは人民側に立つ人間だとして社会をあおる活動のことです」 ■単純な解決策、気取らず下品な言葉も 井上部長 「この先頭に立つ人たちをポピュリストと言いますが、共通の主張があるといいます」 「例えば『政治を人民のもとに取り戻す』、『自分は声なき多数派(サイレント・マジョリティ)の代弁者だ!』、『政治・経済エリート、メディアは腐敗している。人民の利益より、自分たちの利益を優先している』といったものです」 「思い浮かぶ人がいるんじゃないかなと思うんですが…」 鈴江奈々アナウンサー 「こういう対立構造で思い浮かぶのは(アメリカの)トランプ大統領ですかね」 井上部長 「やはり現代のポピュリストの代表格として挙げられます」 「ポピュリストには、ほかにも共通点があります。複雑な問題に対して単純な解決策を唱える、気取っていなくて下品な言葉もお構いなしに使う。こうして自分は皆さんと同じ人民側ですよと、入り込んでいくんですよね」 森圭介アナウンサー 「これまでの歴史を振り返ってみると、何人もポピュリストと呼ばれた政治家もいました。その人たちを支えた人民もいたというのは、歴史が証明してますよね」 ■欧州では「移民排斥」の訴えが盛んに 井上部長 「こうしたポピュリズムは、日本を含めて世界中で起きている現象です。特にヨーロッパでは共通して、『我々人民の生活が移民によって脅かされている』と移民排斥を訴える政治勢力の勢いが増しているんです」 忽滑谷アナウンサー 「こう見ると、まさに世界中さまざまなエリアでポピュリズムが起きているということになりますよね」 井上部長 「例えば、『政治を人民のもとに取り戻す』や『生活が移民や外国人によって脅かされている』といった主張は、今回の参院選で同じようなものを皆さんも聞いたことがあるんじゃないかなと思います」 山崎誠アナウンサー 「確かに外国人による日本の不動産の取得が増えていますし、日本に移住してくる方、マーケットとして捉えている外国の方が取り上げられることは、増えてはきていますもんね」 ■世界でも…ポピュリズムなぜ拡大? 井上部長 「ではなぜ、世界中で同じようにポピュリズムが広がっているのでしょうか。共通しているのは、人々の不満の高まりです」 「グローバル化の恩恵を受けられていない人、物価が高すぎて生活が苦しい人らのやり場のない不満が充満。ポピュリストがすくい上げ、例えば反移民や反エリートの矛先を向かわせ、ポピュリストやポピュリズム政党が拍手喝采を浴びることになっています」 「一方で、政治を担ってきた既成政党には『人民の敵だ!』と言い、NOを突きつける。こんな構図が世界中で起きていると言えます」 「日本でも政治とカネの問題がたびたび起きますが、こうしたスキャンダルもポピュリズムを生むきっかけになりやすいと指摘されています」 ■懸念は…対立のエスカレート 森アナウンサー 「ポピュリストも最初からポピュリストであったわけではなく、民意の声なき声を拾い上げたりとか、既存の政党に対して批判したりというところから、スタートしている部分もあると思います」 「それでも行き過ぎる、エスカレートすると、ちょっと危険かなという気はしますよね」 鈴江アナウンサー 「そうですね。政治とカネの問題もそうですし、人民の不満もそうですが、なぜそれが生まれているのかという背景をしっかり分析していくということ、そこに対策するということももちろん大事だと思います」 「また、このポピュリズム自体が悪というわけでもないですよね。より多くの声に応えるというのはやはり政治の役割ですし、より多くの人たちが政治に関心を持つということが、政治自体を健全化させていく力にもなり得るのではないでしょうか」 井上部長 「やはり心配なのは、この対立がエスカレートしすぎるということです」 「減税か給付かという争点もとても大事ですが、そのさらに先、各党がどんな日本の将来を思い描いているのか、もしくは思い描けているのか。そんな視点も忘れずに投票に臨みたいところです」 忽滑谷アナウンサー 「参議院選挙の投開票日は20日の日曜日です。 私たちの未来につながる大切な1票をしっかりと投じていただきたいと思います」 (7月18日『news every.』より)