「SNSで論破する」のが快感になったら「老化の始まり」…医師が教える《ヤバい老害脳》の兆候

意見の異なる人を攻撃し、自分の正義を振りかざす……。著書に『老害脳 最新の脳科学でわかった「老害」になる人ならない人』がある加藤俊徳氏によれば、ネット上でよく見かけるこうした行為は「脳の老化が始まっているサイン」だという。「老害脳」にならないために、どんなことを意識すればよいか、脳内科医の立場からアドバイスをいただいた。 「不毛な議論」は脳が老化しているサイン? 国会中継や政治に関するニュースを見ていて、「不毛な議論」だと感じることはよくあります。 その議論が実際に不毛なのかどうかは別として、われわれが「不毛」だと感じてしまうのは、議論をしている双方が頑固になっていて、もはやまともな議論になっていない、まるで「議論でショウ」になっているからでしょう。 脳が老化すると、思考力も理解力も衰えてしまうため、論争は双方が攻撃を勝手に続けるだけで結論が出ない争いになってしまいがちです。 野蛮な話、身体的な「勝負」で決着でも付けない限り、双方に妥協の余地がないため、何も話が進まず、非常に非生産的になります。 このような不毛な議論を娯楽や見世物として捉えることに、私たちもよくよく気をつけなければならないと思います。 たとえば、国会中継を見ていて、あるいは討論番組を見ていて、自分の意見に近い人が、そうではない相手を「攻撃」しているとしましょう。 「そうだそうだ、もっとやれ!」「今の論破は痛快だった。この人の言うことは実にまともだ。それに引き替え相手のやつはなんなんだ……」 こんな感情を持つようになっていたら、実は脳の老化が始まっているサインなのかもしれません。 「違う立場の人」から新たな学びを得よ 脳がみずみずしさを保っているなら、自分と近い意見であろうとなかろうと、相手の主張を一旦聞き、思考して理解するプロセスを踏むことができます。そして、その上で批判すればいいのです。 また、たとえ政治的立場や考えが近いからといって100%意見が一致するわけでもありません。しかし、なまじ感情移入してしまうと、その人の言うことが正義に聞こえる危険性があります。 反対に自分から遠い立場の人の話も、本来ならときには参考になったり、聞くべき内容が見いだせたりもするはずです。むしろ違う立場の人だからこそ、新たな学びを得ることもあるでしょう。 本当に脳が老化していなければ、この作業を苦痛には感じません。むしろ、異なる意見を無視することは、脳の柔軟性を失わせるため、脳科学者の私には苦痛に感じてしまいます。 SNSが「老害脳」化を加速させている もはや嘆きに近くなってきましたが、近年は意見の異なる人を攻撃すること自体を楽しみ、自分の「正義」の心を満たす人も目立つようになりました。 かつてのようにテレビに向かって文句を言っているだけでなく、今はSNSなどを通じて実際に「論戦」に参加できるようになったのですから、皮肉なことに、若くして「老害」になってしまった人には、テクノロジーの発展で、ある意味それなりに楽しい世の中に変化しているのかもしれません。 しかしこのような状況は、世の中全体の「老害脳」化にとってますます危険です。 特に、同じような「老害」同士が集まる機会が増えると、その「老害脳」はさらに悪化していくと考えられます。なぜなら、似た者同士の集団は「老害」を生み出しやすいからです。 人にはさまざまな属性があります。性別や人種、年齢や出身地、能力や出身の学校、収入や家族構成など、ファクターはさまざまです。 人は、共通の属性を持っていると、お互いに信頼が高まり、意思疎通がしやすくなることは多くの心理学実験で報告されてきました。 その一方で、お互いの違いを受け入れることができると、たとえば夫婦でも、コミュニケーションがより円滑になることがあります。 ところが、似た者同士の集団では、共通点が多いゆえに、かえって些細な違いが目立ちやすく、結果的に対立が生じることがあります。 「同質化」が無意味な対立を生んでいる たとえば、同じ会社内で、全員30代、全員男性、全員関東出身、全員ある一定以上の学歴、全員収入は同じという集団があるとして、その中で業績争いや出世競争をしているとします。 すると、あまり違いが見いだせない中で、ごくわずかな違いを見いだして対立したり、派閥を作ったりし始めます。 ある会社の中で、A大学とB大学を出ている人たちがいるとしましょう。 本来なら、学んだ内容、現在の興味、関心事、あるいは仕事のスタイルなどといった、各人の個性的な要素が大事であるにもかかわらず、出身大学が同じというだけで、彼らはA大学グループ、B大学グループと、別々の派閥を組んでしまうことがあります。 そうすると、本来ならわざわざ敵視しなくてもいい、敵視すべきではない人たちを最初から除外してしまい、結果としてそれぞれが互いに交流や情報交換ができないようになってしまいかねません。 このような状況は、もともと意味があまりなく、むしろ会社としては損している可能性があります。本当はA大学出身のXさんとB大学出身のYさんが組むと素晴らしい仕事ができるのに、それに気づくまでには相当高い、しかも意味の薄いハードルが存在します。 結果としてその会社はリソースを生かし切れず、本来得られた業績を失っていることになります。 違いはある程度見える化されたほうが、自分自身を相対化できます。できるだけいろいろな立場、背景、能力を持っている人との関係を保ったほうが、自分の能力を最大化できる可能性は高まります。同質のものに固執してしまうことで、それを妨げている可能性があるのです。 「50歳無職の男性」が職業訓練校で見せた「最悪の行為」…28年間引きこもった中年男性の「悲しすぎる末路」

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