「外国人に甘過ぎる『免税制度』を廃止すれば1600億円の税収増」 外資による土地買収など外国人問題のリアルに迫る 「有事の際に『敵対勢力の活動拠点』に」

【前後編の後編/前編からの続き】  都議選で躍進した参政党の勢いはやまず、そのスローガン「日本人ファースト」に引っ張られる形で“外国人政策”は、にわかに参院選の主要な争点に浮上した。SNS上でデマも飛び交う中、各党の訴えは千差万別だが、現実にはどんな「問題」が横たわっているのか。  *** 【写真】「トイレで“行為”する10代の男女が…」「掃除すると避妊具が」 クルド人の若者が集まる市内の公園  前編【「高速道路での逆走など外国人の事故が急増…」 参院選の争点・外国人問題のリアル 「国保の納付率は非常に低い」】では、自民も言及している「外免切替」制度や外国人の医療費問題について報じた。  続いて、日本の国土を外国人が取得するリスクを考察してみる。外国人の土地購入を「基本禁止」とする参政党のほか、国民民主も土地取得の規制法制定を掲げている。折からのインバウンド熱に円安も重なり、国内の不動産価格は高騰。その“担い手”となっているのは外国人富裕層で、割を食った日本人の住宅取得が遠のいていく。そうした言説は選挙戦の中で強まっており、また、 「2022年9月には、安全保障上重要な土地、具体的には国境の離島や自衛隊基地、原発などの周囲およそ1キロの土地を対象に、調査・規制する土地利用規制法が施行されました」 外国人観光客  とは、社会部デスク。 「ただし、外国資本による売買自体は禁じられておらず、長らく懸念の声が上がっていたのです」(同) 「徴税が難しい」  外資による土地買収に詳しい平野秀樹・国土資源総研所長によれば、 「外国人に日本の不動産を買われることの問題点は三つあります」  とのことで、 「まずは税金の問題。固定資産税や転売にかかる不動産取得税、所得税などを督促する場合、所有者が海外在住の外国人だとコストをかけても居住不明で、実質的に徴税が難しくなっています。日本人や国内で所在の判明している外国人らがきちんと納税しているのに対し、バランスが取れない状況が生じており、国家としてのガバナンスが問われかねません」 有事の際に「敵対勢力の活動拠点」に  さらに続けて、 「2点目は言うまでもなく安全保障上の問題。有事の際、ドローンの基地になったり、あるいはメガソーラーの通電がいきなり遮断されたりするなど、土地だけでなく建物も敵対勢力の活動拠点として使われる恐れがあります。そして3点目、中長期的に考えれば国家の成長の芽を摘んでしまうことにつながるのです」  というのも、 「例えば災害復旧や道路を新設する際、その地域の土地を使用することになります。公共事業を進めるには必ず地権者の許可が必要ですが、地権者が拒否すれば復旧どころか何も始められない。産業廃棄物が投棄されても手出しができません。外資の中でもとりわけ日本の国益とぶつかり合う中国が、国家として『日本で公共事業をさせないようにしろ』と自国民に命じれば、その指示通りにことが運ぶでしょう」  とはいえ平野所長は、外国人との二項対立だけを前面に押し出して強調し続けるのは得策ではないという。 「耳目を集める戦略としてその主張は正しいですが、武張った政策ばかりを強調していては、反発する相手を量産し、法制化が遅れてしまいます。転売が繰り返された挙げ句に所有者が不明になり、また税金も取れず、何の手出しもできなくなっている事態の防止をまずは徹底させるべきです。国家としての当たり前の管理、ガバナンスの話ですと言い続けることが大切です」 「免税制度」を廃止すれば約1600億円の税収増に  もう一つ、外国人の振る舞いがしばしば世間を騒がせる事案がある。それは日本独特の「免税制度」。これまで、訪日外国人向けの消費税の免税措置を悪用して転売で利益を得る行為が後を絶たず、“実行犯”の外国人が徴収されるだけでなく、百貨店など免税販売業者も“転売が疑われる購入を見過ごした”との理由で追徴課税処分を受けるケースが見られた。 「今回の選挙戦では維新が免税措置の廃止を唱えています。吉村洋文代表も3日の公示日に、『廃止することで3000億円の財源が生み出せ、全国で高校の授業料無償化ができる』と訴えていました。また立憲民主や国民民主も、制度の見直しを掲げています」(政治部デスク)  ちなみに23年の外国人旅行者の免税購入額はおよそ1兆6000億円にのぼり、制度を廃止すればその1割、約1600億円の税収増が見込めることになる。 「非常に甘い日本特有のシステム」  元金沢国税局長で早稲田大学大学院会計研究科の伏見俊行教授が言う。 「訪日観光客が商品を購入する時点で免税する日本の制度は、観光立国と経済優先の視点に立ち、どんどん買ってくれれば日本の経済に利する、だから買い物をしやすい環境を作ってあげましょうという考えに基づいています。ところが、これは世界の常識とはかけ離れた、非常に甘い日本特有のシステムなのです」  訪日客にとって優しい制度は、それゆえ抜け道だらけでたやすく不正を招いてしまう。いわば“性善説”に立脚しているわけである。対して世界のスタンダードは、販売店でいったん税を納め、空港での出国時に払い戻しを受け取る仕組み。遅ればせながら日本も来年11月から、この「リファンド方式」に変更されるのだが、免税の是非については、 「課税権はその国の特権であり、確かに廃止したとしても訪日客が激減するとは思えません。ただし、主要国の中で免税をしない国は少数派です。国際協調の観点からは、引き続き免税するスタンスが適切な選択だと思われます。何ごとも自分たちだけが良ければよいという考えはいかがなものでしょうか」(同) 「ドイツではゴミの出し方なども教育」  さてインバウンドとは別に、国内の在留外国人数は昨年末時点で約376万人。また外国人労働者は昨年10月時点で約230万人と、いずれも過去最多を更新した。外国人の労働問題に詳しい関西国際大学の毛受(めんじゅ)敏浩客員教授が言う。 「現在、日本には190以上の国と地域から外国人が来ていますが、暮らしについてのオリエンテーションは全くなされていません」  例えばドイツでは、 「行政が100時間という時間を割き、ドイツ語教育も600時間行います。ゴミの出し方から、自身の宗教とドイツの法律が衝突した場合は法律が優先されることまで、あらゆるルールを教える機会を設けているのです。さらに受講を在留資格の更新と結び付けて半義務化している。これとは対照的に、支援がなされず日本語も不自由で職務能力も低いまま定住され、いわゆる“外国人問題”が生じているのが日本の現状なのです」(同)  中途半端な状態がいっそうの悪循環を生んでいるというのだが、 「換言すれば受け入れる仕組み、つまり日本語学習、日本の生活習慣や法律、文化を教える体制づくりを早急に整えないと、社会との摩擦が今後さらに大きくなることは目に見えています」(同)  そう警鐘を鳴らすのだ。 原因も性質も異なるテーマ  選挙戦も終盤に入り、各党の訴えはますます熱を帯びていく。東京大学社会科学研究所の永吉希久子教授(社会学)は、 「メディアでは各党の外国人政策が並列されて論じられています。ですが、例えば土地の取得規制、公的医療保険の問題、非正規滞在者への対応などは、それぞれ原因も性質も異なるテーマであり、個々に精査して議論しないと本質がかすんでしまいます。有権者が適切に判断できるよう、各党は個々の政策意図について、根拠を持って明確に示すべきでしょう」  果たして、どの党の政策が有権者の心に刺さるのだろうか。  前編【「高速道路での逆走など外国人の事故が急増…」 参院選の争点・外国人問題のリアル 「国保の納付率は非常に低い」】では、自民も言及している「外免切替」制度や外国人の医療費問題について報じている。 「週刊新潮」2025年7月24日号 掲載

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